家屋伝承

我が子たちに伝えておきたい、伝統構法の我が家のこと。

糞<怠惰

 法的に、そして個人的に銃器や狩猟に関連した事に結構な時間を費やすのだが、これで罠猟する為の罠にも凝りだしたりする、とかは流石に自制する。

 設計面や施工面でも、お父さんの銃や狩猟は影響する。工房等を設けようと考えているからだ。施主施工に関係の無い話も多く書いたが、回りまわって関係してくるんだな。それはまた後程、かな。

 

 さて、鉄砲等に首ったけというだけで過ごしていたわけではなく、歩みは遅くとも施工は行っている。次のターゲットは南側縁側。古色亜麻仁油の硬化を踏まえた施工の続き。

 施工着手前、お母さんにまたもや掃除を頼んでいた。お母さんは懲りない人とも言うが、へこたれない人とも言う。お父さんに掃除で怒られたりしても、投げ出さずに新たな箇所の掃除を行ってくれた。そんなお母さんの手前、施工を投げ出して鉄砲イジリ等出来ない。

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 そうは言っても、やはり掃除の出来栄えは何故かイマイチ。しかし、呆れてもあまり怒りはしない。免疫が付いたという事もあるが、最終美装手段を掃除か塗装かで迷っていたからだ。特に、無垢の天井板の汚れ対応。

 汚れの正体は不明。何だか虫の糞のような気がしない訳では無い。こんな所に糞をわざわざ付着させるなんて、そんな虫がいるだろうか。でも、立体的な黒い粒が糞だと連想させる。この際正体は無視するとして見た目が問題。普段、きっと天井を見上げないだろう。しかし、見上げた時には気になる。着工前から現在に至る迄、同じ心情。この手の選択は迷うんだなぁ。

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 という事で、以前にお母さんに相談した事がある。古色を塗るべきか否かと。その際、塗るべきと回答。その後、塗装作業はお母さんにお願いする旨を伝えた後日。改めて尋ねると、普段見上げないだろうから塗らなくてもいいんじゃないかと。

 

 出た。出た出た、出た。施主施工者の妥協心理。これよ、これ。

 施主の立場でだと、そりゃ綺麗が良いに決まっている。いざ施工者になったら、しない理由を探し出すのだ。本施主施工を前提にこの家屋を取得するか否かの検討の際、お母さんは建売住宅購入者感覚が強かった。設計施工はお父さんの役目であり、お父さんが出来るのであれば有り、大変だと思うなら無し、だ。

 

 何もお母さんを責めているのではない。度々書いている事だが、多くの施主施工者はこの葛藤を抱えながら施工をしていると思う。それを踏まえ、お父さんは三重人格となって凌いでいるが、お母さんがそれを出来ない事は仕方が無い。

 ただ、この機会にお父さんの日頃の葛藤を吐露した上で、これを踏まえてどうかと再質問。すると塗装実施に傾いた。よって塗装する事に最終決定。まぁ、お父さんもこの時まで迷っていたからこそ、お母さんに再相談したんだけども。

 

鋳造に裁縫

 と、宣言しながら銃砲所持や狩猟は、どうしても施主施工、生活、稼業に影響を及ぼしてしまう。法律やら通達やらで、平日に警察等に赴く必要があったりするんだなぁ。警視庁は土日対応もしてくれている所轄があったと思うが、我らが大阪府警では有り得ない様相。銃砲所管部署は、あくまでお役所時間のようである。

 

 それ以外に個人的に、時間を取られそうな事柄がある。それは、弾の無許可製造。お父さんは銃砲所持を通して初めて知ったのだが、日本でも鉄砲の弾を自分で造っても良いのだ。これは、警察だけでなく今度は経済産業省も絡んで来るがちゃんと法律内で認められている、無許可という名称だけども。

 鉄砲の弾の事を実包とかと言う。お父さんの所持銃の場合、空薬莢に雷管を嵌めて、火薬を入れて、プラスチック製の容器等を差し込んで、その容器に弾頭を挿入し、薬莢の口を加工すると出来上がり。そして、この実包一発の値段が高い物だと600円とかしたりする。平成29年で600円あれば、昼食一食分に缶コーヒー一本を買ってもお釣りが来る。それ程の金額が一瞬にして飛んでいくのだ、文字通り。

 

 お金の為に家でさえも造るお父さんが、弾を造らないわけがない。

 という事で、まずは弾頭鋳造から始める。そう、お父さんはとうとう鋳造までするようになりました。まぁ、融点が低い鉛や錫なので、蒸気と火傷に注意さえすれば然程困難ではない。と思いきや意外に難航。精度ある弾頭を造るには、経験やらコツが要りそうだ。まだまだだ。

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 それよりも、お父さんが嵌りそうだと危惧しているのは、射撃精度を得る為の研究。弾頭鋳造だけでなく、火薬量や種類の探求、プラスチック容器の選定やら薬莢の加工やら。既製品がやはり優秀というのが通説なのだが、そこに探求心がそそられている自分がいる。自身で造った弾が思い通りに飛んでお肉を獲るなんて、素敵やん。そして何より劇的に節約が出来る。

 

 他、銃器関連品や猟具の自作にも時間を要している。

 先に、アメリカから物品を輸入する旨を書いた。実際、既に多くの品物を購入し、今現在も学校英語と翻訳ソフトを駆使したメールでやり取り中。だが、言葉だけでなく法律が違う異国から全ての物が思い通りに揃うわけではないっぽい。数年前までは可能だった銃器等の危険物輸入不可は仕方なしとしても、日本国内で普通に売られている類の物でも輸出してくれない場合がある。

 

 そして、日本では必要なのに、アメリカではあまり造られていないっぽい物がある。それは銃袋。

 日本では原則、銃器や刃物を露出させて持ち歩いてはいけない。車の運転席に自身が居て外部から見えない助手席等にでも、裸で銃器や刃物や火薬類を露出させて置いたりしていると問題。俄かに信じられない話だが、大工さん等が現場に行く際の車内に刃物を入れていても場合によっては要注意らしい。だが、作業服を着た作業車に乗る職人に刃物工具について詰問する警察官が本当にいたら、給料泥棒と呼んでも良いんじゃなかろうか。

 狩猟中も同様。山やら池やら田畑やらの可猟区で事が済めば、そそくさと覆わないといけない。もし公道等で露出しながら歩いてしまい、巡回警察官にでも見つかるようなものなら即連行らしい。銃器は猥褻物と同じ不快物のようだ。それで実際に検挙される事案は度々起こっているらしい。どうも釈然とせん。シートベルト着用は見つかるか否か関係なくする物だが、銃器への覆い着用は安全無事故運用に何ら関係ないと思うんだけど。

 

 で、アメリカはどうか。完全承知していないが州か自治体に依るらしい。完全に隠せという所もあれば、隠し持っている方が却って危険だから出せという所もあったと思うし、何ら規制されてない所もあったと思う。何れにせよ猟銃を猟場の林道とかでさえも隠せよ、という法律は無いのではないか。と言うのも、銃を入れるハードケースは豊富なものの、袋という物は数少ない。寧ろ、日本国内の方が袋については豊富に見える。需要差ではないか。

 

 そして、お父さんは考えました。自身が明らかに危険行為を行っていたら粛々と処罰を受けるべし。しかし、こんな意義不明な法律にて現場でいちゃもん付けられたら気が悪いったらありゃしない。袋だろうが箱だろうが、林道や公道脇に停車した車からの銃器出し入れが必要だと、そのような面倒が生じないだろうか。ならば、袋に入れたまま山等に持って行って、やはり入れたまま装填や照準や発射が出来る物は無いだろうか。銃器保護にもなるし。

 お父さんは探しました。そして、見つけました。お父さん程度が考える事だけに日本国内では売られていた。しかし、それは許可が要る空気銃用。何で装薬銃用は無いんだ。需要が無いのだろうか。

 

 さすれば、無いなら造るのお決まりパターン。

 色々調べた結果、布は丈夫な米軍仕様か何かの品で尚且つ防水処理されている物で決定。しかし、国内小売では欲する量と妥当価格にて発見出来ない。という事で輸入。壊れていたのでこの機会にミシン新調。裁縫店の会員に入会、定員さんに色々教えて貰いながら、丈夫なミシン針と糸、その他諸々調達。

 で、一応完成。転居して以来、鋳造を含めて様々な工種を行ったが、とうとう裁縫までしてしまった。

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 小学校低学年の時だったかと思うが、玩具の拳銃を携帯する為のホルスターを造った事がある。普通の布に強度を得る為に厚紙を入れて縫い合わせた、年齢の割にはそれなりの物。

 だが、大人になっても同様の事をするとは思いもしなかった。慣れない作業の所為か、完成品は美しさが無いどころか所々下手さが出ている。それに、材料費は普通の安い銃袋既製品の三倍弱を費やし、製作工数は買物含めて3人工程も要してしまった。夜なべは勿論、時には施工を切り上げたりして行ったりと、影響を及ぼしているしなぁ。この手記も書いている暇がなかったわ。目下の不安は、一度も猟場に出た事が無い人間が造った事による実用性の有無だ。

 

「変人」は自身を「変人」と思っていないから「変人」なのか?

 嬉しくないが、お父さんは変人だと思われている自覚がある。

 施主施工だけに留まらず、銃砲所持をする。今までの施主施工等については、好きだから、趣味だろう、等の比較的好意あるレッテルを貼られる事はあった。しかし、鉄砲が好き、射撃が趣味でスゴイね、との判断は貰えないだろう。この歳にして初めて趣味と言える物を手にしたのに、おいそれと人様に言えない。

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 警察以上に厳しそうなのは、そんな大多数の非所持者の方々。合法的に鉄砲を所持して歩いていても、「通報するぞ」とか「あっち行け」とか言われる事があるらしい。

 こんなご時世で、数少ない理解者は農家の方。と思っていたが一概にそうではないらしい。農作物への鳥獣被害が有る無し関わらず、毛嫌いされる方はされるらしい。何なら、猟師に有害駆除を頼んでおきながら、被害が収まって用が済んだら「あっち行け」態度を取る理不尽者もいる文章を目にした事がある。

 

 そのような時代に、何故銃砲を所持したりするのか。

 お父さんが生まれた頃にはもう所持者、という大ベテランの方に伺った事がある。お父さんの実技試験の指導員の方で、銃砲の危険性等についてご教授頂いた際の事。何故、未だ現役で所持や猟をお続けになっているのでしょうか。大変さの向こうに得られる何かがあるのですよね、と。非所持者でも言える、目にも耳にも危険云々の言葉に食傷気味、本物の狩猟家を目の前にして違う言葉を欲したんだな。

 すると、言葉に窮されてしまい、無粋な事を尋ねたのかと即座に後悔した。お父さん如きに一言で語れる物事じゃなかったのかと思う。

 

 お父さん如きの駆け出し者にとっては簡単。まず射撃をしたい、そして、どうせなら狩りもしたいという軽薄さ。

 ある方が狩猟を始める動機を三分類されていた。山歩きやアウトドア等から発展した「自然派」。肉が欲しいとか農作物を守る為とか、何なら動物が好きだからという「動物派」。そして、銃器が好きとか射撃がしたいとかの「鉄砲派」だ。お父さんは勿論「鉄砲派」。

 変人自覚はあるが、本人は至って普通の事だと思っている。お金が無いけど望む家に住みたいから施主施工。勿体無いし生活品質向上の為にチェンソーを所持して木こり。鉄砲好きだった男の子が大人になり当時の夢を叶えて銃砲所持。どうせなら、やはり資源が勿体ないから狩猟。何か変だろうか。

 

 銃砲行政の横暴やら世間の白い目の結果、問題が出てきた。鳥獣による農作物や森林被害、そして生態系の変化だ。ここで動いたのが、農作物所管の農林水産省と、森林等の生態系と狩猟行政所管の環境省。また、所持者を減らして来た警察の違法紛いの法運用が国会でも問題視。

 という事でそれはそれは色々あって、狩猟免許所持者は増加、銃砲所持する女性も増加、銃刀法運用も幾分か緩和。お父さんが変人ではないという時代がやって来るかもしれない。

 

 とは残念ながら思えない。

 かの狩猟と銃器大国のアメリカでさえ、狩猟家や銃砲所持者は減少しているらしい。州や地域によっては結構厳しいようで、銃砲店が政治的に閉店に追い込まれたりもするらしい。

 過疎化や高齢化により、山との境界線である里山の後退がより一層進み、奇しくも有害駆除の必要性が減るかもしれない。ひいては、狩猟の存在意義が低下するのかもしれん。山と街との境界線が直に接していて猪が街を闊歩する、という神戸みたいな地域が増えていくのかもしれん。だって、デジタル世界で食材は買えば済む生活下で、わざわざカネと時間を使って鉛弾を飛ばす事に意義を見出す人はもっと減って行くだろうしな。

 

 行政が本気で狩猟家、何なら職業としての猟師を増やそうと思っているのなら、お役人の人員投入と税金投入をドバッとすれば実現性は高まるんじゃないか。

 初心者期間は高額な狩猟税と猟友会会費は大幅減免、警察での手数料無し、射撃場使用無料券配布。初心者期間終了後は現行レベル、ベテラン期は高額設定。ベテランでも役員なり指導員なり駆除員は減免。で、有害駆除捕獲の報奨金に国費大幅投入。門戸をまず広げ、安全に腕を磨いた人や公益貢献をする方の経済的負担が減りつつ、そうでない人は淘汰されていく。人が増えれば物品類の価格も下がりより維持しやすい。

 とまぁ、こう簡単には行かんのは承知ながら、現行は何だか逐次投入感があるんだよなぁ。鳥獣による農作物被害が200億円弱。被害者個人の事よりもその金額とのバランスによる現状であり、これが10倍なり100倍なりだと国も本気になるかな。

 はたまた、生活圏集約方針があったりとか、小規模零細自給自足的農家の減少狙いとかあったりして。例えば、平成の現代は少子化云々言われているのだけども、国がなりふり構わず本気で対策しようと思っているのなら出来る類だと思うんだな。景気浮揚とかより余程人為的に出来ると。お父さんは賛成だけどそれをしないのは、国土に応じた人口にする目論見があるのかと勘繰ってしまう。

 鳥獣被害についても何か意図があるのかな。或いは単に調整、又は保身政治の為なのか分からんが中途半端感が否めない。逐次投入の結果、多大な人命と軍備等を失って国家存亡の危機に陥った事、忘れてんのか。

 

 あぁ、ついつい熱くなってしまって話がどんどん逸れていく。ま、兎にも角にも逆風環境でもお父さんは、銃砲所持等に何ら反対するどころか獲らぬ獲物の肉算用をしているお母さんとの生活の下、人生初の変人趣味に高じたいと思います。施主施工には、出来るだけ影響を及ぼさない様に努めます。よって、設置時毎日見回りが必要になる罠猟は、もっと施工が落ち着いてからにします。

 

警察コワイコワイ病

 ここでかなり派生した長話をさせてもらう。日頃の生活でなかなか感じないかもしれない話を。

 

 銃砲の学科合格と言っても、運転免許証等のような類では無い。何が大きく違うのかと言うとお父さんの感覚では、前者は後者と違って厳格に粛々と運用されている制度ではない。銃砲の法律である銃刀法の運用は、日本は法治国家では無く人治国家、はたまた警察国家なのか、と思わされる状況。きっと大袈裟ではない。

 

 日本の治安が比較的良いのは、豊臣秀吉の刀狩等によって、武器所持を厳しく制限してきたお蔭である。これ、本気で警察や多くの国民は思っているように見受けられるが、大間違いだとお父さんは思う。どちらかと言うとお父さんは少数派になる事が多く寂しいが、それでもそう思わざるを得ない。

 

  豊臣時代の刀狩以降で戦乱の世が完全に終わった江戸時代なのに、農民による鉄砲所持数は戦国時代より多かったという事が、九州の藩による第一次資料にて明白だそうだ。

 要因の一つは、農村においての自警の為の道具。これは武器としてだな。但し、支配層に向けないという暗黙の約束が、特に江戸中期頃までは守られていたそうだ。中世の警察力では農村の治安までは守れず、盗賊等の外敵に対抗する物が必要だったんだろうな。そしてもう一つは害獣対策。説明不要、これは武器ではなく農具の一種だ。

 これらの目的の為の銃砲を取り上げて困るのは、農民だけでなく支配層の武士もである。学校の歴史の教科書を信じて何となく思っている事柄だが、実際は柔軟な運用がされていた生々しい現実があるとの事。江戸時代ほど遡らなくともつい数十年前の昭和時代でも、都市部の富裕層とかだけでなく山村等の人達は結構所持されていたそうだ。タンパク源や収入を得る為、それに農作物を守る為にだな。余暇の意味合いもあったかもしれんし。パチンコするより余程経済的で健康的だな。

 

 が、警察官僚は何をとち狂ったのか、銃砲所持者が問題を起こすとその他善良な所持者にも、法の範囲内外関わらず厳しく対処していく。もう十把一絡げだ。都市部に人が流れて、銃砲を目にする事もなければ頼る事もなくなり、ただの武器にしか映らない銃やその所持者が危険視されるようになる。その風潮を受けてか、はたまたその風潮を造るマスメディアは、銃砲事件が起きると銃砲自体を悪とし警察叩きもする。世論を受けて警察はさらに厳しくする、そんな悪循環。そして、世論と警察権力を前にして沈黙するしかない所持者達、みたいな。

 「銃が人を殺すのではない。人が人を殺すのだ。」とは、全米ライフル協会の常套句らしい。しかし、まさにそうだと思う。人を殺傷したい輩は、目の前に銃砲があるからするのではない。トラックで歩行者天国に突っ込む奴もいた。無差別殺傷目的ならトラックは効果的かつ効率的だ。こういう事件だと犯人個人の異常性は論じても、マスコミも一般市民も運転免許を交付した警察を批判しないし、トラック自体を規制しようとは考えない。

 

 兎も角、警察の銃刀法運用には違和感満載。全国適用である法律なのに、条例かの如く都道府県によって運用の違いもある。所轄や担当官によっても運用が違うらしい。だから、人治国家かと思わされるのだ。学校では日本は法治国家と習ったが、刀狩同様、事実では無い面がある。あぁ、萎える。

 このような運用下で、特に全国的にも厳しいと名高い大阪府警察管轄内居住者のお父さんが、もう一度学科試験を受けようとは思えない。勉強し直す労力を惜しんでではなく、満点を取っても資格マニア等と見なされたりして今度は落とされる可能性を考えたからだ。現に、合格後すぐに所持に動かなかった事を突つかれた。合格の勢いのまま所持に動く人よりも、数年間温めても気が変わらないお父さんの方がヤル気満々、とは捉えない。

 

 本当は期限まで1年程余裕があり、施工の事があるのでまだ後回しに出来ないかとも考えた。だが、大阪府警の法運用方針に不安が事前にあった為、中塗仕上げ左官中には動き出していた。また、これを契機にナイフ購入にも踏み切ったのだ。

  実際、所持許可までに半年弱を要した。行政手続法の定めた標準処理期間によると最短2ヶ月程で許可を得ていたはずだ。しかし、大阪府警は言う、それはあくまで標準であり目安の法律だと。申請した銃種は合法だけど特殊。よって、大阪府警の見解は脱法的銃種だと言う。ならば、行政手続法への認識も脱法的でんがな。

 それ以外にも、お父さんにでも分かる違法性、違法ではないがそこまで言うか、といった言動は複数。だが、真向反論はとてもしづらい。相手は完全無敵の許可権者。さらに、本気を出せばでっち上げた罪で逮捕権行使をした実例がある組織。冤罪なのに虚偽自白をさせられる方の気持ちが少し分かった気がした。少なくとも銃刀法下では警察国家かと思わされたのだ。あぁ、コワイ。

 

 誤解をしないで欲しいが、銃砲所持や運用に対して警察が厳しい事自体は悪いとは思わない。それに、違法や違法紛いや、人権等無視紛いの言動等を所轄担当官の方が発する事は、彼ら許可権者の立場を鑑みると理解は出来る。職務とは言え何ら得にもならんのに許可を出し、問題があると責任を問われるのだし。それに、お父さんの現在の所轄担当官は、強権的で無く社会人として真っ当で、所持への理解は当初からあり、また無理難題を押付けない方だと感じるし。

 まぁ、やはり言っても鉄砲だ。危険だ。自動車や包丁やチェンソーと同様に、便利だけど気を付けないといけない危険な道具。寧ろ、警察や市民の目が厳しい分、他の道具よりも安全使用への意識が高まって良い。

 

 但しだ。第三者が道端で喧嘩をしていても仲裁には入らないと思う。目の前で子供が泣き喚きながら車に乗せられた状況を不審に思っても、通報するだけかもしれない。鉄砲携帯中に猟師でも身内でも無い人が熊に襲われているのを目撃しても、助けずに声援だけ贈るかもしれない。

 それは、何を理由に許可取消になったり自身が検挙されたりするか分からないから。江戸時代の無罪放免をするかもしれない代官や奉行と違い、平成時代は人助けをしたお父さんを逮捕する恐れを強く感じさせる警察が法の番人をしている。だからきっと躊躇する。

 

 それ程に銃刀法が未整備、若しくは非現実的と感じ、またそれを恣意的運用の実績が多い警察を信じ難い心況。刀狩の文句からしてそもそも警察が、武器を持たせたら危ない民衆だとして国民を信じていない、と言っているようなもんだ。治安が良いのは、銃規制ではない他の要素が大きく寄与しているし、自分達の力にも依るのに何言ってんだか。

 海外派遣された自衛隊の司令官の方が、部下や警護対象者、それに目の前で一般現地民に危険が及べば、辞職や逮捕覚悟で戦闘を行う心積もりをしていた旨の内容を目にした事がある。自衛隊法と銃刀法、自衛官幹部と駆け出し狩猟家。一緒にする事は無茶苦茶で申し訳ないが、法律と政治に振り回されても現実的責務を全うしようとするその現場司令官を尊敬して止まない。

 

物品から得る精神的豊かさ

 刃物全般に無知。年間数百匹の蚊を狩るモスキートハンターながら、まだ生きた狩猟鳥獣と接した事は無い。そんなお父さんが何故にこのような高価なナイフを二本も得たのか。

 一見するとこの手の人間は、格好から入るタイプと思われるようだ。全くそんな自覚は無い。勿体ないからと見すぼらしいボロボロの格好をして、安物品を補修したり手直ししたり、時には自作したりした道具類を大いに使っているからだ。このように節約に励んでいるのに、格好から云々言われるととても心外。と、お母さんに文句を言った事が度々ある。

                                 

 ナイフ探しを迫られて来た頃。種類や使用感等の情報は求めるより少ない。と言って多かったとしても全く無知なお父さんにとって悩むだけかもしれない。そこで、狩猟家としてベテランな上、ナイフコレクターでもある方の動画を大いに参考、とも言うし、単に真似をしたとも言うが、紹介されていたナイフの中から選定したのだ。

 だとしても、無知で未経験者が高価な道具を得るとは如何なものか。このような考え方がある。お父さんにもとても理解が出来る。いや、寧ろその考え方が占めていた。お金を使う経験値が低いお父さんにとって、高額品を買う事は精神的に難しい。しかし、その考え方とは違う見方をさせた事例が、赤いスポーツカー取得と伝統工法家屋での施主施工である。

 

 家探しの指針に大きく影響した赤いスポーツカーについては以前に触れた。これと同様ながら、施主施工においては道具の面からだ。鉋や鑿や鋸、漆刷毛やら鏝やら、何なら定規や雑巾でさえ、高い物と安い物に違いがある。

 例えば雑巾一つとっても、ホームセンターに売っている安物を選ぶと、大した事が無い使用回数や酷使具合にも関わらずすぐにボロボロになる。漂白剤等の薬品が影響して繊維が弱いのか、そもそも品質が高くない繊維を使っているのか。小学校の廊下の拭き掃除等の際に使ったような、着古した衣服から作った雑巾では有り得なかった寿命。現代であっても、古タオル等をミシン縫いして作った雑巾の方が保ったりする。雑巾でさえこうなのだ。大袈裟で誇張気味に書くと、このような道具と出会う度に焦燥感を抱いたり、精神的貧しさを感じる。

 

 そうは言っても本来貧乏性のお父さんにとって、安物工具や自作工具が活躍すると嬉しい事には何ら変わらない。ただ、高価な道具が自分の不足分を補ってくれたり、他では得られない物を提供してくれる事を、お父さんはこの歳頃にして知る事になった。高い物に触れられるようになった事で、ようやく安い物との違いを知るようになったのだ。

 

 そして、いざ猟具を選定する必要に迫られ始めた時。施主施工が長引いている事も含めて、狩猟家になるのが早くなかったお父さんにとって、その分の時間を得る為に数々失敗も経てきた方の経験を踏まえたご意見を頂いたのだ。使いこなせるか等の後の事はお父さん自身次第。

 ちなみに、少なくとも今現在、ナイフコレクターの方の気持ちを少しは理解出来たかもしれない。二本のナイフから、赤いスポーツカーの時のような高揚感や満足感等を得ている。

 

 ところでそもそも、施主施工で頭が一杯の中、何故選定に迫られたのか。家族としては、狩猟よりも施工に集中して欲しいと思うだろうな。

 だけども、狩猟免許と、講習修了証という名の銃砲所持学科試験合格証の有効期限が迫って来たからなのだ。ただ、狩猟免許は特段問題無い。施主施工にまだまだ時間が取られる事もあり、更新手続きを取って講習を受ければ問題無いのだ。だが、銃砲の方は問題があるのだ。