家屋伝承

我が子たちに伝えておきたい、伝統構法の我が家のこと。

物品から得る精神的豊かさ

 刃物全般に無知。年間数百匹の蚊を狩るモスキートハンターながら、まだ生きた狩猟鳥獣と接した事は無い。そんなお父さんが何故にこのような高価なナイフを二本も得たのか。

 一見するとこの手の人間は、格好から入るタイプと思われるようだ。全くそんな自覚は無い。勿体ないからと見すぼらしいボロボロの格好をして、安物品を補修したり手直ししたり、時には自作したりした道具類を大いに使っているからだ。このように節約に励んでいるのに、格好から云々言われるととても心外。と、お母さんに文句を言った事が度々ある。

                                 

 ナイフ探しを迫られて来た頃。種類や使用感等の情報は求めるより少ない。と言って多かったとしても全く無知なお父さんにとって悩むだけかもしれない。そこで、狩猟家としてベテランな上、ナイフコレクターでもある方の動画を大いに参考、とも言うし、単に真似をしたとも言うが、紹介されていたナイフの中から選定したのだ。

 だとしても、無知で未経験者が高価な道具を得るとは如何なものか。このような考え方がある。お父さんにもとても理解が出来る。いや、寧ろその考え方が占めていた。お金を使う経験値が低いお父さんにとって、高額品を買う事は精神的に難しい。しかし、その考え方とは違う見方をさせた事例が、赤いスポーツカー取得と伝統工法家屋での施主施工である。

 

 家探しの指針に大きく影響した赤いスポーツカーについては以前に触れた。これと同様ながら、施主施工においては道具の面からだ。鉋や鑿や鋸、漆刷毛やら鏝やら、何なら定規や雑巾でさえ、高い物と安い物に違いがある。

 例えば雑巾一つとっても、ホームセンターに売っている安物を選ぶと、大した事が無い使用回数や酷使具合にも関わらずすぐにボロボロになる。漂白剤等の薬品が影響して繊維が弱いのか、そもそも品質が高くない繊維を使っているのか。小学校の廊下の拭き掃除等の際に使ったような、着古した衣服から作った雑巾では有り得なかった寿命。現代であっても、古タオル等をミシン縫いして作った雑巾の方が保ったりする。雑巾でさえこうなのだ。大袈裟で誇張気味に書くと、このような道具と出会う度に焦燥感を抱いたり、精神的貧しさを感じる。

 

 そうは言っても本来貧乏性のお父さんにとって、安物工具や自作工具が活躍すると嬉しい事には何ら変わらない。ただ、高価な道具が自分の不足分を補ってくれたり、他では得られない物を提供してくれる事を、お父さんはこの歳頃にして知る事になった。高い物に触れられるようになった事で、ようやく安い物との違いを知るようになったのだ。

 

 そして、いざ猟具を選定する必要に迫られ始めた時。施主施工が長引いている事も含めて、狩猟家になるのが早くなかったお父さんにとって、その分の時間を得る為に数々失敗も経てきた方の経験を踏まえたご意見を頂いたのだ。使いこなせるか等の後の事はお父さん自身次第。

 ちなみに、少なくとも今現在、ナイフコレクターの方の気持ちを少しは理解出来たかもしれない。二本のナイフから、赤いスポーツカーの時のような高揚感や満足感等を得ている。

 

 ところでそもそも、施主施工で頭が一杯の中、何故選定に迫られたのか。家族としては、狩猟よりも施工に集中して欲しいと思うだろうな。

 だけども、狩猟免許と、講習修了証という名の銃砲所持学科試験合格証の有効期限が迫って来たからなのだ。ただ、狩猟免許は特段問題無い。施主施工にまだまだ時間が取られる事もあり、更新手続きを取って講習を受ければ問題無いのだ。だが、銃砲の方は問題があるのだ。