家屋伝承

我が子たちに伝えておきたい、伝統構法の我が家のこと。

建材と思い出を再生した工事

 枠が出来た、という事で縦板入れて竹木舞を組む。写真を見ると、やはり格子壁はいいな、と浮気心がムクムクする。グッと堪えてそのまま久々の荒土塗り実施。

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 で、ここからまた寄り道作業発生。保管荒土が微妙に足らずに確保するのだ。これがあるので、当該壁を土壁にする事を躊躇っていたのだわ。 

 材確保の対象は納屋。資材置き場を兼ねた材料取り建物。機械等で部品取りはあっても、建築工事で材料取りをする人間はそうそういないだろうな。これが出来るのがこの家の良い所。と言い切りたいが、その分手間は大いに発生。

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 探検さんから、時間や施工品質等の費用対効果を考えるよう助言を受けた事がある。古民家先輩は貨幣経済に否定的なのにも関わらず、諸々の理由で本職発注されたりは勿論、荒土等は建材業者から貨幣を用いて便宜を得ている。

 一方、一貫して施工品質や効率を求めたり、本施工を通じて貨幣経済の恩恵に有難さを感じるようになったお父さん。だけども、品質に妥協してでも本職発注せず、また手間と時間を惜しまず材を得る。で、なかなかお金を使わず。矛盾しているのはどちらだろう、と常々考える次第。

 

 そうは言っても、本作業は自分でせずにお母さんにお願いする。お父さんは事前準備係。納屋の強度を考えると、取り易そうな所から土を取るのはちと怖い。という事で、新たな箇所となる納屋内の便所壁を目標に周囲を一部破壊しておく。

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 後日、お母さんは土埃まみれ。事前破壊や150kg程の荒土と中塗り土確保作業で凡そ1人工弱。人工代を考えると土を買った方が安い、と考えない貨幣経済主義者。振り切っているお父さんの方が矛盾度は強そうだな。

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 その後日、今度はお父さんが泥にまみれて荒土壁完成。荒土の余剰も出来たし、良かった良かった。

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 本壁を土壁にしたのは、先述通りの吸震性の獲得目的。ただ、実際の所はそこまでの物じゃないと思う。

 腰壁ではない側である西半分壁は貫が二枚だが、三枚にした方が良かった。荒土に押付けられて揺れ動く竹木舞を感じながら後悔。その竹木舞は、相変わらず麻紐で掻いている。新しい柱のホゾも先に述べた通り頼りない。

 また、荒土は解体材100%。あらゆる所で書かれているのだが、古い土と新しい土を混ぜるべき。粘りが強い新しい土を入れる方が、強度も強くなるとの理由っぽい。

 そんな事を考えながら塗っていると、折角回復してきたヤル気が低減してくる。自業自得だけども。

 

 ちなみに余談。一方で、古民家先輩邸の荒土施工を思い出していた。一枚目でも二枚目でも無かったのに、三枚目の本壁で何故か強く思い出された。

 本施主施工着工から今までで、一番楽しかったのは彼の現場でのその施工。悲しいかな、他人様の現場が一番なのだ。お父さんの稼業でも本施工でも常に単独。これに慣れている。お父さんの友人でこの手の事に興味がある人間は皆無だし。

 なのに、無性に彼の現場での楽しさを思い出しながら施工をしていた。探検さんが自身の施主施工現場を置いて他人の現場に赴かれる事が不思議だった。きっと好奇心が強い方なのだろうと思っていたが、もしかしてこういう心情があるのだろうか、と初めて思った。何故だろう、初期施工の荒土塗りをした事で、施工の年月を感じ始めた所為なのか。

 そういう事から、先の長期施工に対する事を書いたんだな。