家屋伝承

我が子たちに伝えておきたい、伝統構法の我が家のこと。

油紙の贈り物

 書院跡の対処施工と並行して、例の亜麻仁油硬化待ちだった小壁の施工も進める。完全硬化とは言えずだったが待ちきれずでの再開。

 

 竿縁天井撤去後の小壁に関する施工は、先に書いた梁束梁貫板や埋め木等の造作、それらと長押等への古色塗装、繊維壁の表層と下地部の切削撤去作業、そして清掃。ああ、長い、とんでもなく長い。そして工種が多い、元奥の間と仏間のたかだか二室の小壁なのに。これらの合間に行っているけど書いてなかった施工もあるし。

 

 ちなみにその書かなかった施工は、天井懐内で荒壁か大斑直しで終わっていた箇所へ盛り塗。天井より下の壁は厚くて上は薄いから段差が生じて、って説明せんでも分かるわな。それに、記録する必要も無いから省略していた。なのに改めて書いておくのは、その際に使った道具に関する事を書き忘れていたからなのだ。

 

 その道具は、母屋二階左官施工に使っていた本職用の鉄の中塗鏝。久々のお出ましで錆びていないか心配していたが特に問題無く。それは、もしかしたら油紙のお陰かもしれない。 

 油紙って知っているかな。お父さんの子供の頃、ヤクザ映画とかでよく出てきた代物。隠し持っていた拳銃を包んでいる紙なのだ。最近はいきなり脇や腰から出てくる演出ばかりのような気がする程、すっかり見なくなった油紙。

 と言っても実物は知らなかった。拳銃を隠し持っていない家庭だったから、という訳では無い。昔は鉄製品を保管しておく為に使われる身近な包装用紙だったような記述があった。ビニール等の普及とかで、お父さんの子供の頃には既に一般的では無くなっていたのだろうか。

 

 比較的丈夫な紙がある。亜麻仁油もある。という事で作ってみていたのだ。作り方は至って簡単、紙に油を吸わせて放置。油が硬化したら完成。乾性油の存在を知らなかった幼き頃、油紙は油でベタベタする紙であり、その含まれた油が鉄を錆びさせないと思っていた。給油する紙、という認識だな。

 実際は、紙の通気、要は湿気を妨げる為の油らしい。よって、ビニール等の普及で廃れたと思った次第。まぁ、油紙だろうがビニールだろうが、完璧な錆防止では無いと思う。だけども一応、油紙を大量生産してお父さんの道具で使えそうな物は残そうと思っている。五十年後や百年後、錆だらけなっていそうにも思うけど。ガラクタになっていても、気持ちだけは受け取って頂戴。

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 さて、ようやく時系列に沿った事をちょっと書く。梁束梁貫板の取付後の土壁下地調整施工だな。具体的には、凸凹している土壁と板の間には隙間がかなり生じている。土壁自体の歪みによるものもある。これらを無くして極力平面にする次第。

 

 梁束梁貫仕様にした事で手間暇と必要材は増加。ただ、これに踏み切った大きな理由、仕上左官がしやすくなる事への期待を感じる施工となった。と言うのも、大体真っすぐの板に沿って中塗下付を行うと、凸凹だった具合が一目瞭然。やって良かった。きっと。多分。

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