家屋伝承

我が子たちに伝えておきたい、伝統構法の我が家のこと。

古色塗料再考

 それにしても、古色等の木部塗装材については意外に手間取られてしまっている。じっくり考えてみた。

 

 古色塗料を弁柄に松煙墨だけでなく柿渋も同時混入して作ったのは、柿渋後塗り方式よりも手を抜く為だ。そうすると、マット感が尋常じゃない。柿渋後塗り方式が正解だったのか、と思いきや、同方式採用の古民家先輩でも同じくだとの事。

 

 どちらにしても、予想外の亜麻仁油後塗りをする破目になっている。

 予想外とは、柿渋も亜麻仁油も両方要す記述を見つけられず、そうとは知らなかったから。一件は見つけた。しかしそれは、匿名質問サイトで答えられていた匿名の方によるもの。

 柿渋屋さんは、柿渋調合による木部塗料の事は書いている。亜麻仁油屋さんは、木部保護材として亜麻仁油の事は書いている。図書館等に行って文献を漁ったり、専門家や研究者を訪ね歩く事はしない。なので、在来法なのか独自塗装法なのかも分からないまま、必要性に迫られてやっている。

  

 では、既存材の艶感は一体何なんだ。

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 どう考えても住まい手に依るものではない。掃除や手油等で艶が出る等は知っている。伝統構法如何を問わず、古い家等で見受けられる。この家の既存縁側縁甲板もそうだし、二人のおばあちゃん家である古い団地の台所床板もそうだ。

 そういう木は、艶と同時に使い古された感が一見して分かる。柱であれば角が取れるぐらいだったり。この家の艶ある柱は、それはそれは綺麗なもんだ。そして、これが3m超の天井までこの状態。仮に天井間際まで雑巾掛けするような住人だったのなら、この家をもっと大事にしていたわ。

 それに煤等でも無い。この家の造り、均一な着色状態、部材に関わらない、擦れば手に付くものが顔料っぽい、という事でこれも無い。

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 やはり建築時に施されたものに依るのだと思うのさ。

 一つの可能性として思い浮かんだのは、木そのものの油。天然乾燥の良さの大きな点は、この油が失われない事により美しい材になるらしい。木油が、弁柄や柿渋を掻い潜ったり、隙間に嵌まったりか何かしてあの艶を出しているのだろうか。そんな事あるのか。

 ちなみに、材を「読む」ような本物の大工さんは、手油が付かないように軍手をしたり、油仕込みをした鉋台を使わない等、材に邪魔な油を付かないようにされるらしい。

 

 意外に、亜麻仁等の油後塗り方式は大正解で必然的在来施工なのかもしれない。が、手抜きをしたいお父さんはここで思考を止めない。