家屋伝承

我が子たちに伝えておきたい、伝統構法の我が家のこと。

古色塗料変更

 柿渋とは、昔は比較的安価な塗料だったらしい。渋柿があれば良いので自宅庭先で造られていたりもする。それら入手の容易さから、昔から高級塗料である漆や油の代替、又は漆の下地塗料として使われてきた。

 

 そう、油は今もだけど昔も高かった。いや、今よりも昔の方が高価だったんではないか。そこでだ、お父さんは柿渋は長きに渡って庶民塗料であるが為に、さもそれが過去の遺物である伝統構法古民家の唯一の木部塗装のように言われているだけではないか、と思うわけなのだ。言い換えると、この家や古民家先輩邸のような大金持ちが建てた邸宅だと、お大尽塗料として漆や油が使われたのではないか、と。

 ほぼ間違いなく先祖由来の庶民のお父さんは、漆が建材塗料として使われていた、それに今も使われている事は最近初めて知った。漆の次にお大尽塗料だろう油にしても、お父さんだけでなく他のネット内の多くの庶民の皆さん方も知らないとしてもおかしくないんじゃないか。

 

 建材としての油が木部表面保護塗料だけでない事は、全く根拠が無いわけでは無い。着色塗料としても、昔から顔料を混ぜて使われていたと油屋さんがちゃんと書いてくれていた。これが元祖的な油性塗料であり、顔料との相性が良いとの事。木部塗料としての柿渋記述は山ほど見ていたが、油記述はあまり見ていなかった上に内容も薄くて忘れていた。やってみようじゃない。

 

 で、やってみた。来た、これ。後塗りとか不要、一発でもうまさにこの感じ。マット感とはおさらばだ。後日、既存材との色調合を行ったがさらに差異が無くなった。色弱のお父さんは見分けが付かない。もう疑いようがないわ、これ。

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 柿渋と亜麻仁油の価格は同じぐらいなのに、塗料としては全然違う。

 油と顔料である弁柄の混ざりが確かにとても良い。水溶性の柿渋とは雲泥の差。

 また、柿渋古色はすぐに顔料が沈むが、油はかなり遅い。都度都度混ぜる事が激減。油と弁柄の比重が柿渋よりは近いのだろう。

 さらに、柿渋古色は全体的にすぐにドロッとしてしまう。柿渋が他の古色材料の何かと反応しているのだろうか。油では無い。作り置き保管に期待してしまう。

 そして何より、まさに元祖というような感じで現代油性ペンキと同じ感じで塗り易い。木部塗装への浸透が良さそうな気がする。顕著なのが荒材への塗布。竿縁天井だった箇所の半荒材仕上のキッチンやリビング一部天井の古色塗布の際、柿渋は複数回の塗布が必要だった。凹んだ所へ入っていきにくく、それが乾いてから分かるので手間暇を喰った。油は一発で塗布が完了する。

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 一方で、柿渋古色の方が鉋仕上げのような鏡面的な所には乗りが良い。こういう箇所の乗りの悪さは現代油性ペンキでもだが、サラサラしている分か亜麻仁油古色の方がより悪いかな。これは今後の課題。

  乾燥速度についても柿渋古色の方が断然優る。しかし、どうせ亜麻仁油後塗りが必要になるんだから関係無い。寧ろ手間が増える分、工期は延びる。煮亜麻仁油を作っても良いし。柿渋の効用として防腐が挙げられるが、亜麻仁油にはこれが無いらしい。水が掛からない屋内ならこれも関係無い。屋外部だけ今まで通りの塗装施工をしても良い。

 

 他者の意見に従う事が絶対なら、やはり「柿渋古色の上に亜麻仁油後塗り方式」だろう。しかし、お父さんはこのように「土壁に川砂」懐疑論に続いて「古色に柿渋」絶対視否定論を脳内展開。結果、亜麻仁油を古色ペンキとして大いに使っていこうと思う。

 使用箇所は、ほぼ時系列にこれを書いているので、今後の施工では特記無き限り亜麻仁油古色使用と解釈して欲しい。この塗料の正否は、これを読む頃の二人が目の当たりにしていると思う。

 少なくとも今の所、良い、良い、良い、総合的にあぁ良いわ。これで諸々手間が掛かったり悩まされていた古色問題は解決しそうで一気に気が楽になった。