家屋伝承

我が子たちに伝えておきたい、伝統構法の我が家のこと。

きっと夏のせい

 床板加工やキッチン天板漆塗りの同時並行作業。と言っても、そう簡単には並行出来ない。床板加工は主に午前中のみ、漆塗りは硬化待ちの時間がある。よって、その最中に諸作業や雑用を行う。施主施工では振り返っても現場は進捗していない。自分が何かの作業をしていれば、乾燥や硬化を除いてその他の箇所は全く変化していない。砂埃が立ったりする事で時が止まっていないと分かるが、無風時は怪しい。誰かが何かやってくれてはいない。そんな当たり前の事を想ってため息をつく。嫌いな夏では特にそう。

 

 そんな憂鬱さが湿度と共に肌にまとわりつく中、諸作業の一つを行う。解体材の内、虫食いがある太材を集める。丸鋸から放散される木屑が汗じみた肌にこれまたまとわりつく。

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 自分の汗臭さにも参りながら台を製作する。用途は自動カンナの移動及び設置用。

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 本施主施工予算は凡そ千百万円。工事種目が限定されない道具や工具、建材等を諸経費項目とし、全体予算の5%程で賄えるのではないかと見込んでいた。着工後一年程経過した左官工程中にその予算はほぼ到達。ただ、これからはもう大きな道具類は買う事はないだろう、と思っていた。だがしかしここに来て、本施工にて大きさも重量も、そして金額も最大級の機械を購入。結果、予算の枠から大きく突き抜け。夏にだけでなくこの高額出費したこの機械に、ウキウキ感は無くため息が重ね出る。

 

 自動カンナという機械については、二人は使用しないだろう。そもそも二人が大人になった頃にあったとしても、錆び付いて動かないガラクタになっているかもしれない。なので、例によって仔細は省略するが、その名の通り木を平らに削る機械だ。

 

 本職は当然として、アマチュア木工家諸氏にも認知度は高そうな感じ。が、欲しくても持っておられない割合も高そうに思う。

 まずは金額の問題だ。回収しようと思ったら、それなりの数の木工製作をしないといけないはず。材料費だけでなく手間賃まで貰って他人様の家具を作られるようなセミプロの方なら良い。普通のアマチュア諸氏は製作機会が限られているのではないか。そんな他人の分まで作られないような方は、工房スペースも無いかもしれない。となるとこの機械を置く場所も厳しいだろう。木屑や音の問題もある。

 そのような方からするとお父さんは羨ましがられるかもしれない。スペースも木屑も音も問題が無い。製作機会は自宅用大型家具だけでも二桁数になる予定。このような恵まれた状況で憂鬱さが纏っているのは何故か。

 

 大きな理由はやはりお金。と言っても、元が取られる計算の上で購入に決している。

 お父さんにとって、この機械の最大用途は接ぎ板作りの為。以前、薪ストーブ上方の既存梁の欠損部隠しの為、捨て床板を鉋掛けの上で使用を試みた。捨て床再活用、接ぎ板材にする事を目論んでいた為のお試しの意味合いがあった。結果は以前に書いた通り困難。接ぎ板材にする為には、板厚を整えて、反りを直さないといけない。手鉋が困難だったが故、機械購入案が浮上してきたのだ。

 ただ、解体材活用に拘らないとするならば、集成材の購入をする案もある。お父さんはそれでも全く良し。ただ、集成材はそれなりの価格がする。頭の中でざっくり暗算すると、製材所の荒板を購入して接ぎ板を自作する事とあまり変わらない。原木から板を作る事もこの機械があればお父さんは出来るはず。そうすれば尚更安くつく。しないけど。

 さらに、木工家としての接ぎ板材にだけでなく、施主施工家としての購入荒材や解体材の加工にも使える。これで損益分岐点が超えると踏んだ。

 

 なのに、イマイチ盛り上がらないのは何故だろう。高額機械購入なんて男は大抵嬉しいはずだ。「元は取れても手間は増大、元を取る為により頑張らないといかん」という施主施工をも否定しそうな想いが湧き出ているのだろうなぁ。これはきっと、木工家の方と違って木工や施工が特に好きとかではないからではないか。これが最大の理由だと思う。あ、いや、違うな。きっと夏のせい、だな。