家屋伝承

我が子たちに伝えておきたい、伝統構法の我が家のこと。

「要観察」

 「要観察」。この言葉が使われるのは、原木の天然乾燥にだけではない。自然素材を主建材として使うだけに、本施工においては他にも幾つかある。その一つが柿渋原液。

 

 柿渋は固まる。空気に触れる事で固まる。乾燥による含水率低下に依るものか、空気中の成分に依る化学反応なのか。お父さんは全く知らないまま柿渋原液を用いている。

 こんなお父さんに対し、古民家先輩より「冬場でも固まる」とのご助言を頂いていた。自分でもそのような文言をどこかで目にしたような気がする。寒くなるにつれ、頭の片隅でその事はあったものの観察していなかった。柿渋原液が入っている蓋付き丈夫過ぎるビニール袋は、さらに段ボール箱に入っている。その段ボール箱は玄関脇の用具棚に置いている。その棚から出して段ボール箱の蓋を開ける。これが何故か億劫。「要観察」なのに。

 

 薪ストーブ炉台と炉床は仕上げ段階手前。これより先に、周囲上部の土壁を仕上げたい。その前に、木埋め作業を終わらせなければいけないので行う。その後は、古色塗りが待っている。なので、柿渋の状態が気になりだしていたが、自分では見たくないような不思議な心理状態になっていた。

 

 そう言えば、古色自体もほったらかしで量もほぼ無い。そこで、お母さんに一度作ってみてよと頼む。暫く後に、お母さんに代わってきょうこが慌てて木埋め作業中のお父さんを呼びに来たその瞬間、もう分かっていたよ。柿渋が固まっているって。

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 柿渋の保管については購入前に悩んでいた。使用量が全く読めない。小口で買うと間違いが少ないが、送料が馬鹿にならない。考えても分からないので、最大容量18ℓを16,200円で購入。もし、保管に失敗したら潔く諦めて教訓にするぞ、とこの時は思っていた。

 しかし、しかしだ。人間、と言うかお父さんは勝手なもので、すこぶる後悔。「要観察」をサボっていたくせにこの有様。寒天のようになった柿渋から少しでも液体を救出出来るか、お母さんに手伝ってもらいながら試みるが皆無。撃沈。

 

 さて、ここまでで得た物。

 一つは使用量。竿縁天井解体により現れた二階床荒板の、一階新天井板化に伴う古色塗装。他、柱や梁等への一部塗装。大雑把な感覚で5~7ℓ。ここから考えるに今後の使用見込みは、10~12ℓぐらいかな。おぉ、18ℓで丁度良かったかもしれない。くぅ。

 

 と言って、送料をケチって必要見込量を一気に買うか。否だ、否。いくら知識や助言があっても、お父さんは出来る子じゃないと判明したのも得た物の一つ。保管が面倒臭いのだ。柿渋が塗料として廃れたのはこの為じゃないのか、と自分を慰めて小口購入。

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 後一つ、保管場所を変えるという発想。母屋は実質屋外、いや、陽が入らない分か屋外より寒い。寒さで固まる、という事は一度凍結した事により水分が抜けた状態になり凝固した、という事だろうか。ならば、氷点下が分かれ道か。

 真冬のこの時期の母屋の早朝、温度計観察最低記録は2℃。時間帯によっては氷点下になっている事だろう。これを回避する場所となると、仮住まい中の門屋だ。氷点下にはなった事が無い。日中は庇が短い為に陽が入る上、りょうすけが居るので暖房がつけたまま。そして、人の眼がある。観察容易だ。

 

 こう書いてみても、一万円程を捨てる事になった割に得た物は大した事が無いなぁ。