家屋伝承

我が子たちに伝えておきたい、伝統構法の我が家のこと。

構造柱の部分撤去

 もう何が何だか分からないぐらい、色々と同時並行で作業や設計や思考や計画立案を行う。これらが能力的にと言うよりも時間的に出来ないから、と割り切って建売住宅を買った友人がいる。自分の状況を客観的に考察出来ていて賢明な奴だ。住宅という器の事を考えれば考える程、「死んでも建売住宅なんて買いたくない」と思っていたお父さん。そういう風に思う事が許される環境だったのかな、等と考えたり。そんな考えを抱く程の脳内混乱の中、それでも推し進めていく。

 

 薪ストーブ設置場所となる傾斜土壁を撤去した次、化粧柱の部分撤去に取り掛かる。構造には手を付けたくなかった。母屋二階の柱入れ替えは、構造上影響がなかったかと思われる。当初、薪ストーブ煙突を曲げたのも構造が関わるからだ。やはり曲げたままでいけば、とあまりの難問にちょっと後悔をする事になった今回の構造材撤去施工。この理由について、以前の設計時の内容で少し触れたが、今後も大事な関わりになるので改めて説明しておこう。

f:id:kaokudensyou:20160123171053j:plain←部分撤去化粧柱の在りし日

 

 当該柱があっても物理的に薪ストーブの設置はギリギリ可能。ただ、近接し過ぎる事になり、ストーブの扉開閉に邪魔気味だ。しかし、これ以上に問題なのが当該柱の「低温発火」が必至になる事だ。

f:id:kaokudensyou:20160123161315j:plain←薪ストーブと柱の位置関係

 

 低温発火とは。木材というのは断熱性が高い材だ。これは同時に蓄熱性があるという事。熱が逃げにくいのだ。薪ストーブからの放射熱により加熱量が大きく、木材からの放熱量がそれよりも少なければ蓄熱されていく。

 木の引火温度は220℃以上程らしい。この温度以下なら引火自体はしない。木は燃える、というイメージがあるが実際はなかなか燃えない。但し、諸条件次第ながら100℃程の加熱により木内部での蓄熱はされていく。その状態が続いて引火温度に達すると燃え出すらしい。これがざっくり説明の低温発火だ。

 発火に至らずとも、その手前の「炭化」が起これば柱としての強度を落とす。強度を落とすと上部の小壁等を落とす。その直撃を受けると命を落とす。という笑えない落ちになる。

 

 では、全撤去ではなく部分撤去にするのは何故か。これまたやはり、小壁の吸震構造体としての温存を目論んでの事だ。しかし、これがまた何とも難しく大いに悩む。本工事では、極力構造には手を付けたくなかった。木造平屋や二階建ての在来工法ならば、ちょっと勉強したかの人間なら難しくない。極端な話、ただただ堅めて置けば間違いは起きない。

 伝統構法はどうか。お父さんの認識は、ちょっと大袈裟に言うが五重塔や高層ビルと同じ類と捉えている。建物を堅めつつも揺らす前提。訳が分からん。ましてや高層ビルと違って伝統構法の構造学的な理論は、平成の世でもようやく確立しそうなしなさそうな、という段階らしい。なので、歴史と実績に裏付けされた先人の施工を出来る限り倣いたいのだよ。