家屋伝承

我が子たちに伝えておきたい、伝統構法の我が家のこと。

左官職排除の急先鋒

 お父さん自身、左官職の方と触れ合う機会はほぼ無かった。そもそも一般家屋現場は数が少なかった事もあり、そういう小規模現場では全く記憶が無い。主だったマンションや公共施設、ビルや工場など規模がある現場では拝見する事はあった。そういう現場の左官職の施工のほとんどは前述の通り、土間コン均し。それ以外は、躯体コンクリートに対して薄くモルタルを塗る「しごき」という施工ぐらいか。お父さんの工種や現場種類にも依るのだろうが、左官職の存在感を感じたことが無かった。

 

 以上、以前にも書いた事を改めて細かく書いてみた。「左官職の排除は建築業界の常識」なんだろうかと勘繰るお父さんは、これまた以前にも書いたが、本改修工事にて本職にお願いする段取りになっている。施工箇所は、石膏ボード下地に中塗土による仕上げ塗りを施す箇所だ。

 請負う左官職の方は、「今時土壁仕上げを求めている。そんな施主の想いに応えたい。」と遠方ながらも受けてくれた。お父さんの真意は、施主施工では難しそうだからという理由。ちょっとボタンの掛け違いがあるように思うが、そこは大して問題ではないだろう。

 

 それよりも気にしている事がある。お父さんは、気持ちだけはまるで左官職保護活動家のような書き方をした。全くそうではない。大半を施主施工をするという形で、左官工程は残すが、左官職自体の排除の急先鋒の一翼を担うような事をしているからだ。動機はカネの為。「自宅土壁を施主施工で造っています」という言葉で留めないと何とも下衆い事になってしまう。

 左官職が「家を造っている」という事を実感できるような工程が、本現場にはそれなりにあると思う。儲けを度外視してでも土壁施工をやりたい、という左官職がどうも存在されているよう。機会を差し上げたり共に頑張る為、そういう熱い方を何とか探し出して声を掛けて、という労力を惜しんだのだ。結果、将来を見据えて土壁を扱える左官職の種を植える、若しくは維持をするという事を怠った。そういう面でちょっとだけ「後ろめたさ」を感じている。

 

 そのちょっとだけの「後ろめたさ」。そして、多くの本職でさえ経験していない土壁施工を、左官のサの字も知らないようなお父さんが行う、という大きな不安。これらを抱えつつ、土壁中塗り施工に突入した。