家屋伝承

我が子たちに伝えておきたい、伝統構法の我が家のこと。

幻の職種、「多能工」

 ところで、「多能工」という特定の工種名が無い職方がいるらしい。探検さんご来訪時、多能工は使い勝手が良いだろうが器用貧乏という評になった。

 

 しかし、噂には聞いた事がある程度で実際にお見かけした事は無いと思う。大手ゼネコンJVの大きな現場にて、「常傭部隊」と呼ばれる二桁数名になる団体は見た事がある。似たような恰好の団体が、休憩場所内にその部隊用として確保された一帯にデーンと構えていた。その方達は現場の雑用係らしい。汎用資材の移動やら、安全器具設置やら、ちょっとした作業やら、小さい現場だと監督がしそうな事をするそうで。監督達の手足となる直轄部隊とでも言うのかな。作業服からして基本は鳶職かな。ま、彼らは多能工ではないだろうなぁ。

 

 多能工とは、多くの工種をこなす能力を有した職方、という事と理解している。

 木造現場の大工職は、棟梁文化の名残とも言えるかもしれないし、実際に一番現場を把握していそうな立場かと思うので、監督的になる事が間々あるようで。だけども、それは多能工ではないよな。お父さんの拙い経験上、乾式工種主流の現在では特に、大工職の方で二、三工種はこなされる方は珍しく無いと思う。ただ、湿式工種含めたそれ以上の複数工種をこなされる方は知らない。

 

 一流の多能工の方がおられたとしても、その技量は各工種においては良くて二流ではなかろうか。いくら器用であっても、一流の専門職方並みの技量を身に付ける事は時間的に不可能で中途半端にならないか、と。そうなると、二流以下でも十分にこなせられる予算と工期無き現場には呼ばれても、一流の技量が必要な現場には呼ばれない。

 それに、一流多能工だからと言って一流専門技量者並みの人工代は貰えないのではないか。だけども必要所有道具は多種多様。監督等には重宝されて仕事にはあぶれないが儲かるかは微妙、ではなかろうか。

 多能工の実際を知らないのであくまで想像。多能工は、高級官僚やテレビ局プロデューサーや何とかデザイナー等と同じく、有名で実在されていると見聞きするが本当の所は分からない、お父さんにとっては幻の職種の一種だ。

 

 多能工の各工種スキルが二流かもと言ったって、一流には到達しないという意味。今時在来工法住宅現場ぐらいだと十分なスーパーマンじゃないのかね。そして、お父さんのような施主施工者にとっては歩く施工要領書で崇め奉る対象。

 ただ、自分が多能工のようになりたいか、というと別の話。専業者、職人というものへの尊敬の念があり、器用という言葉が悪い意味もあるモノ作り日本の古い民、だからなのか。