家屋伝承

我が子たちに伝えておきたい、伝統構法の我が家のこと。

ある種の仕事で仕込みは時間が掛かる事を理解出来るのはその同種の本職ぐらいで他種の本職は忘れがち

 さぁ、キッチン天板を本設置するぞ。とはまだ行かない準備準備の日々。

 

 同天板は壁と取り合う。壁は真壁。柱面よりも壁面が凹んでいるわけだ。この取り合いをどうするか二通り考えた。一つは柱面基準法。これだと壁と天板の間は木で細工して埋める。もう一つは、壁面基準法。こちらだと柱が天板に当たってしまうので天板の切り欠きが必要になる。

 施工が簡単なのは断然に柱面基準法だ。天板を切り欠く必要はなく柱にコツンと当てた状態で固定すれば良い。隙間箇所は雑巾摺みたいな納まりで十分。しかし、お父さんが選択したのは難易度がぐっと上がる壁面基準法だ。柱と天板それぞれが相対する箇所の切り欠きを下手こくと、一気に見た目が悪くなる。見た目だけじゃない。取付自体が出来ない。一部が合っても他部で合わないと、お父さん並み重量で長尺の板を操って手直しを要す。

 まぁ、考えただけで恐ろしい施工法。なのにやる。理由は後述。

 

 天板本設置に向けてシュミレーション、確認、調整を何時間か掛けて実施。これが本当に大変。板がデカいし部屋が矩形じゃないしその他諸々にて。

 キッチン東側にある既存柱との取り合い。これは設計段階から想定していた。基本的に本施工では、将来の想定出来ない改修を踏まえて既存構造材に手を付けず極力温存しているつもり。しかし、ここはどうしても切り欠かないといけない。思いっきり見える化粧部だけに、隠し細工として板を張って隙間を隠す等は見た目がうるさくなるからだ。よって、天板側は既に切り欠いた上で漆を施している。

 柱側はこの天板設置検証を経てからと数年前の設計段階にて決定していた。ようやくここに至る。満を持してなので天板縁の面取りに合わせて切り欠いてみた。

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 ただ、他の箇所は設計通りに行かず。この東側既存柱に天板を差し込むと、他の箇所で同様に差込設置は難しくなる施工法を行っている。説明が難しいので省略するが。そこで対応方法としていたのが、北側取り合い部となるキッチン新設壁部と既存壁部は柱面基準法としていた。キッチン新設壁もそのように設計施工をしていた。お膳立ては出来うる限りやっている、と思っていた。はい、残念。天板を切り欠く必要性が発生。これにより、二辺にてはめ込み設置をする事が確定。もうガッカリ。原因なんて悲しくなるから追及しないでおこう。

 天板を段ボール等で型を取り、それにて本設置位置を割り出せば良かったのか。しかし、お膳立てをしたという想いからそんな事まで事前には考えられないし、思い浮かんでも省いていただろう。こういう事って間々無いだろうか。お父さんぐらいか。

 急遽の天板切り欠きだけで約1時間。天板の切断面には漆を施さず。

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 これらに先立って行ったのは、北側既存壁部でありシンク前の取り合い部廻り。壁に見切り材を入れる。取付は釘打ちイモ留め。壁のチリなのでホゾはしんどい。見付け面は見えなくなる。将来改修により見える事になるとすれば、キッチン解体となっている事だろう。となるとこの見切り材は不要になるはず。ホゾは却ってよろしくない。

 という事で釘打ち。この他の箇所全て、釘でもビスでも壁チリに打つ際は斜めにして壁と柱の際を狙っている。壁チリで無い所も打つ前に極力目立たない所を探してみる。将来それを外す際、穴があまり目立たない方が良いだろうという考え。それでも穴が出る場合、楊枝でも差し詰め込んで古色を塗って頂戴。

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 この見切り材施工中、既存柱の角に何かを当ててしまった。普通ならちょっと凹むぐらいだがそうではなかった。おかしいなとイジっていたら原因判明。虫食い穴が通っていたのだ。この穴、今まで結構見てきた。表面部を際際に残しているキクイムシには感心する。高精度な際狙い、お父さんは足下に及ばない。

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 補修領域を探って削っていったが結構な長さ。穴も深い。ここはカランの真後ろ辺りで水掛かり懸念がある。という事で、刻苧と錆で補修する事にした。陶器の補修で使われるのだから柱にも良いだろうと。その上で古色塗布。

 さて、この先上手く納まったままかどうなのか。きょうこだけには説明しておいたがきっと忘れているだろう。アクビをしていたし。改めて書いておいた。

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 そんなこんなで、天板壁取り合いの段取り作業は終了。とはまだ行かない。東側と北側だけでなく、西側も残っている。西側は、元は納戸であり食品庫と食洗器棚設置予定地であり、当時は現場事務所兼お父さんの仕事部屋。省略するがここらにも手を加える。これら地味作業だけで計1.5人工程か。大工職なら解雇だろうか。なかなか天板設置にも、そして竣工にも辿り着きそうにない。