家屋伝承

我が子たちに伝えておきたい、伝統構法の我が家のこと。

綺麗な漆床で死にたい

 では、塗料としての「性能・性質」面はどうなのか。

 

 一番比較しやすいのはウレタンと思う。ウレタン仕上げの床板材は前住居で体験済だ。無垢材床板の保護を最大動機として、前住居での前施主施工時に採用した。

 この比較で問題になるのは、触感、肌触りかと思う。漆での肌触りは、古民家先輩という他人様のお宅故に素足になれずで検証出来ず。貰って来た端材では特に体感出来ず。さて、困った。

 

 この家の改修着工を遅らせた理由の一つは、四季を体験する事。その中でも特に意識したのは冬。夏を持って旨とすべしの家屋にて冬はどうなのかを問題視していた。で実際は、耐寒性が尋常じゃなく高かったお父さんでさえ寒かったわけで、畳部屋も厚手靴下を履いて過ごす。耐寒性が平凡になったお父さんと、一般女性並みと思われるお母さん、それにきょうことりょうすけ。薪ストーブを使おうが灯油ストーブも併用しようが靴下を履くだろうな。

 では、夏はどうか。耐暑性が尋常じゃなく低かったお父さんでさえ、前住居のウレタン床板に素足でも不快感や違和感を抱いていた記憶が無い。寝転ぶとよろしくなかった記憶はある。ただ、この家では床板に直接寝転ぶ生活はしない予定。

 と考えると、あまり肌触りは気にしなくても良いのかもしれない。あぁ、決まらない。

 

 漆の性質として特筆するのは紫外線に弱い事と言えるだろうか。他の種々の耐性があるだけにこれが目立つ。

 一代限り発想施工だと、紫外線に弱いと言えどもさほど支障はないかもしれない。お父さんもお母さんも後30年かすればどうせ死んでしまう。死に際にもしこの家に居られるとすれば、劣化した漆を見て懐かしみながら息を引き取るのだ。

 ん、懐かしめられるのだろうか。劣化具合が気になるが再塗布する体力も気力もなく。そんなお父さんを気遣って、きょうこやりょうすけがやってくれると言ってくれたとしても、その時の生活空間であろうリビングで漆塗り。高齢のお父さんは、今以上に何事にも億劫になっている自信がある。気になりながらも折角の申し出を断ってしまいそうだ。

 

 出来る事なら「漆はええわぁ」と思える状態のままで死にたい。これを検証してみよう。

 と言っても、屋内に直射日光が最も入って来る冬至は過ぎてしまっている。そこで思い出したのがSketchUPの影表示機能。月日だけでなく分単位設定で影表示が出来る。これが参考になるかをまず見てみる。時間をずらして写真を取り、それと影表示された3Dとを見比べてみるのだ。お父さんの見る限りは近似値。よし、いける。

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 で、冬至を中心に考えてみる。

 理論上では、午後3時過ぎに直射日光侵入到達距離が最大と見受けられる。家屋北側である奥玄関や勝手口近くまでにもなる。そこに至る迄に早朝からリビングを全体的に日光が舐め回す。こうなると床漆の寿命は、百年どころか三十年もあれば御の字じゃなかろうか。

f:id:kaokudensyou:20160731165330j:plain冬至午後3時過ぎ頃

 

 周囲環境上では、東西側と南側にはお隣さんやら板垣やら門屋やら鬱蒼としている植栽やら、と直射日光が入って来ない障害物がある。これらを鑑みると、午前9時過ぎ頃から正午過ぎ頃が投光面積は最大になるだろうか。それでもこの間、リビング中央辺りまで日光は到達している。むむむ。

f:id:kaokudensyou:20160731165338j:plain冬至正午頃

 

 もう一歩進めて考えてみる。冬至を含む寒い時期、建具は閉めっぱなしになるはず。南側の縁側外部建具である既存一枚ガラス戸も、縁側とリビング間の内部建具である障子戸も。この障子を閉める生活は、改修前の灯油ストーブ使用時にも行っていた。障子を開放して日光が入る状態だったのは、掃除中ぐらいだったような気がする。

 寒い時期以外ではほとんど開放していたが、その頃の日光と言えば縁側縁甲板を照らすぐらい。縁側縁甲板は既存継続使用予定であり、もし改修してしまうとしてもこれには漆を塗らなければいいしなぁ。

 

 うむぅ、反射光を無視するならば、死に際にも綺麗な状態の漆でいけるような気もする。