家屋伝承

我が子たちに伝えておきたい、伝統構法の我が家のこと。

土壁下地漆喰仕上施工、再戦。

 平成29年の主たる大目標は薪ストーブ設置。長きに渡り鎮座しているコレが未設置の為、敷地内に溢れる薪や廃材も増えていくばかり。

 もういい加減に避けられない。時は秋真っ只中。気温湿度共に十分。後はお父さんの気持ち次第。もう意を決した。ああ、やりましょうとも、左官施工を。本施主施工にて変わらず最難関指定から外れない、土壁下地漆喰仕上施工を。

 

 指定から外れないと言っても、ただただ振り回されるつもりは無い。冷却期間は十分にあった。母屋一階一区工事で残す当施工は残り二面。これを有終の美で飾る事を目指す。その方策はチリ部の古色非接触、並びに下地再調整。

 前者は、前述した通りだ。マステ基準線と同等、若しくはそれ以上に漆喰仕上げ面を持ってくる事を目指す。その為には、砂漆喰時点で面出しと塗り厚により注意する。

 

 後者は、前述したようなしていないような。覚えていないので極力簡潔に書いてみる。

 特に薪ストーブ廻りの土壁は、炉壁が定規となってその歪面が露わになった。その為、中塗壁面に中塗りを上塗りして調整。さらに、仕上材の食い付きを良くする為にと引っ掛かりとなる孔を下地面に付けた。それらによる段差等が生じた事で、水引き緩和材でもある砂漆喰の厚みが部分的に大いに差を生み、漆喰の水引きや乾燥に差異も生んだ。結果、砂漆喰が厚い所は水を貯めるだけでなく、何故か周囲の水も吸い込んだようになる。周囲は綺麗に乾燥しても、長く水を持っていた当該部は時間差で乾燥した際に凹みやシワを生じる仕上がりとなった。

 全然簡潔じゃなかったが、こういう事から段差を減らす工程を付加する事とする。

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 再調整砂漆喰乾燥後、本施工。結果は見ての通り、って分からんかな。

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 まずは古色滲み対策。マシになったとは思う。が、完璧ではなかった。マステを目指すと薄くなる所は良いとして、砂漆喰等が厚くなり過ぎる箇所が所々有り施工中悶絶。砂漆喰施工後に気付いた所もあるが、やはり厚くなり過ぎる事を恐れ断念とかもある。それらを仕上塗段階で収めようとするも、全てを収め切れず。

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 そして、砂漆喰による下地再調整。これは効果覿面。だが、再々調整が必要な所があった。再調整時砂漆喰でも乾燥陥没があったが若干と判断し無視。しかし、しっかりそこが乾燥不良を起こしてしまっていた。

 

 同条件の施工箇所が母屋二階にある。有終の美とは行かなかったが、今回の不十分さの失敗を今後の糧にしてやる、こん畜生めっ。

 

目地施工のトラウマが襲来す

 さて、次は目地施工。本番はタイル貼り、目地なんて副次施工に過ぎない、と思っていたが大間違いだった。

 

 まず、材について。

 タイルを白、となれば目地は黒。この家のモノトーンさから必然、とはお父さん。前宅白目地と現キッチン黒目地経験から、汚れの目立ち難さから必然、とはお母さん。グレーも候補に一瞬上がったが黒にてほぼ即決。

 

 しかしながら、本施主施工をしてからというもの、黒色というのはどうも意外と難しい色のように思われる。それまでは、黒色の建材を目にする事は珍しい事ではなかったが、どうもそれは化学の力のようだ。 

 代表的かと思うのが黒漆喰。以前に述べた通り、本来白い物を黒にするのは困難。漆黒という言葉があるように漆は黒色が多いものの、あれも自然物でただ普通に何かしらの漆を塗れば黒になる、のでは無い。当然省略するが、とんでもない工程の上で漆黒となっている。亜麻仁油と黒顔料があるとそれなりに黒塗料が出来る、という事でも無いと思う。試していないので「思う」とするが、真っ黒にする為には相当の重塗りは必要かと思う。松煙墨も必須か。その墨も黒顔料も自然色だが、それを作るまでの手間暇を結構掛かっているっぽい。テレビCMでも、本当の黒を出すのは難しそうな事を言ってたな、ちなみに。

 

 目地材も同様らしく、黒と謳っていても実際は暗いグレー色っぽい。これは薪ストーブ炉床敷瓦施工で確認済。案の定、当タイル目地施工でもグレー。どう見てもグレー。改めて施工要領文を読んでみる。しつこいぐらいに書いてあるのは「水」の事だ。やはり左官系の仕事は水だな、水。

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 この説明通りの配合で材を練るとかなり固い。素手で揉みながらでないと練られない。それも息が切れる程度の力技で、ちょっと水を追加したり。それでも大変。これを目地に充填していくのは結構手間であり、やっぱり力仕事。だけども、様子見がてらとした一面目の西側足元面終了時点にて、狭小部であるにも関わらず残材の硬化が進んでいる事が分かる。

 さらに水をちょいと追加して再練りという禁じ手。予想外の悪戦苦闘で、推奨施工時間を遥かに超える。この防汚機能黒色目地材、左官材のくせに結構な高額品である上、巷のそこら辺では売っていない。不足なんかした日にゃぁ余って上等、送料上等、の覚悟で再購入を迫られるのだ。

 

 ふうふう言いながらシンク前である二面目終了。流石に無理だと、三面目は粉を追加して再度練るつもりが断念、中途半端に余った材を破棄する事に決定。すぐさま目地材のはみ出し分を拭き取る工程に移る。

 しかし、これも上手く行かない。もう結構固まっている。水に濡らしたスポンジで拭くも、濡れ雑巾に切り替えて拭くも、なかなか取れない。やればやるほど目地充填部が汚くなる。水を増やすと色ムラになると要領文からの脅迫も相まって、水を用いて拭くと言うより、雑巾等で力任せで削っていく感じ。残業したものの施工時間終了。目地材に力尽きる。

 

 翌日、三面目、コンロ前を施工。その前に、シンク前の取り切れなかった目地材を金属も用いて削る。硬い物で削らないと取れなかったりする。本職はこんな事をしていないはず。こんな本職見た事無い。お父さんの遣り方が悪いはず。

 水に気を付けながら一面分だけの目地材を素手で練った上、素手にてとにかく充填。終わり次第、固めに絞った雑巾で拭き取る。もう目地材を残したくない、取るのが非常にしんどいから。しかし、白いタイルに黒い色の目地残りはよく分かる。取ったと思ったら充填した目地材がビヨーンと塗り拡がったりして元の木阿弥。いや、目地が削られるのでもっと酷い。ある程度にして拭き取り終了。急いで目地を目地鏝で均す。締まって来た、というより固まって来た時点での均しだった事もあり、二面目よりはマシになったがちょいと粗くなる。

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 次、最後の四面目、東側を施工。今度は、もう拭き取る事を放棄。後で頑張る。それよりも施工品質向上を目指し、水量厳密と鏝均しのみに集中。結果、一面目、二面目よりかは明らかに四面目が綺麗。色も黒い。だが、目地材の除去は苦行。固まったセメントを雑巾で削っていくような暴挙行為。

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 タイルの加工と貼付には1人工未満。だがしかし、目地材関連では1人工強。6、7時間程ガリガリすると精神が薄弱してくるぞ。副次的作業だなんてとんでもなかった。

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 ちなみに、目地材除去は「酸洗い」と言って薬品を使うらしい。詳細は不明ながらこの言葉だけは何十年も前から知っている。本職はこの術を持っているからこんな大変では無いのかもしれない。

 しかし、施工面積が少ない一素人が、目地材をシュワシュワさせるようなその薬品を何とか入手して、色ムラを起こさず不要目地材除去をする、という事にハードルを感じて検討しなかった。代わりに、敷瓦にも当タイルにも雑穀酢を使用してみた。使用感は、水よりほんの少し取れやすいような気がせんでもない、だ。恐らく気持ちの問題だけだったんだろうな。

 

タイル施工のトラウマを乗り越え

 それらが数ヶ月前。材は納品及び検品済。砂漆喰は硬化済。そして、施工する決意も硬化。やるっきゃない。

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 接着物は気が急いてしまう。施工箇所へ割付墨を打った上、切断等の加工を予め行っておく。材の余裕が少ない状態での予め加工は後戻りが出来ないから怖いものの、当施工箇所自体は単純な矩形がほとんど。なので実行。計算必要数に応じた間配り等、準備万端。

 一つ気掛かりなのは接着剤。使用品は、薪ストーブ炉壁上部見切り材である棒瓦を固定する為に使った物。「恐らくタイル工事をしそう」と見越した、タイルに使える物を選定していた。珍しくそういう判断が功を奏したものの、使いさしのそれ一つで追加購入はせず。結構値がするんだから。使用量参考目安上は可能なものの、それをアテにして失敗なんてのはあるある話なのでちと不安。ケチって使用する事とする。

 

 いざ実践。前述してきた事情により、一シート分づつ接着剤を塗ってはタイルを貼る、という堅実施工。何の事は無い、問題無く貼れたではないか。トラウマ施工の一つだったが、シート物は簡単だな。以前と違って、面出しされた壁という条件もあるのかもしれないが。

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 と、こんな事を書きながら、ちょいと失敗した箇所もある。キッチン東側壁のコンセント横の3粒のタイル、これがズレてしまっていた。

 材に余裕無し、という事もあって一シート24粒から3粒だけとか、ある程度バラバラになった状態で貼る箇所がそこそこ生じてしまった。まさにここはそれ。さらに、シート物だと、その紙を剥がした後にズレていた事が分かったりする、と施主施工の方の体験談を事前に読んでいたが、まさにここはそれ。気が付いた時は既に接着硬化後。

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 オーブンか何か置く事を検討している部屋の角の為、目を瞑ってこのままにしておいた。もしここが、シンクやコンロ前のよく目に触れる事が明らかな箇所だったら、タイルを割ってでも剥がして再施工だったな。

 

女性自身だからって信じない

 その頃は左官等で時を過ごしたが、ついでにその時に片付けておいた。それは、シンク前面の土壁のタイル下地施工。

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 タイル採用とした事で出る問題は、土壁にどうやってタイルを施工するのか。

 シンク前以外は石膏ボードであり何ら問題無い。モルタル壁じゃなくとも施工事例は数多ある。接着剤でペタ、だ。だが、あの土壁表面に、浸透性が無さそうなタイル用接着剤が乗ってくれそうにはとても思えない。何とか乗ったとしても、ある日、接着剤ごとタイルが浮きそう。タイルを躊躇していた要因の一つでもある。

 

 そうなると、モルタル接着しか方法が無いのではないか。接着剤よりもモルタルの方が土壁と絡まり易そうだし、タイルの保持程度ならモルタル自体の強度にも期待出来るんじゃないか。いや、待てよ。強度があり過ぎて、家がちょっと動いたら割れ易かったりしないのか。いや、でも、接着剤と目地材もあるから。いっその事、下地板を貼る方がいいだろうか。

 等々思いあぐねていた際、ふと思い出す。砂漆喰実験をした際の硬化後のモルタル感だ。あの感じ、接着剤とタイルを受け止めるには十分ではないか。土壁との絡み接着具合は折り紙付き。強度面もモルタルより塩梅がいいかもしれない。これならタイルはより現実案だ。そんなこんなで、面出しに気を付けながら施工していた。

 

 次に母材であるタイル選定。タイル案の前提であるシート材、という事で100㎜角は除外。逆に、シート材ではなく300㎜角等の大きなタイル、何なら石材も考えてみた。このような大きな材は大体にして厚め。これらを前提としていなかった設計の為、施工面と柱等とのチリ寸が確保されていなかった為、却下。

 

 そうなると必然、モザイクタイル等の小さなタイルに絞られる。モザイクタイルも複数種あるが、パッと思いつくのは10㎜~30㎜角程度の粒タイル。モザイクタイルの代名詞、と思える程に採用事例が数多。その中でもよく目にするのは、女性ウケしそうな可愛らしい感じのもの。何なら、女性自身で施工したという内容も幾らでも検索出来る。それ程に簡単、とお父さんはもう騙されんぞ。

 

 当該施工場所もこの手の物で違和感が無いと思う。可愛さよりもスタイリッシュな感じの物もあるから尚更問題無い。しかし、粒タイルは当然、施工面積に対する目地が多くなる。折角、防汚と掃除簡略を目指すのに、モルタル系の目地部が多くなると効果半減のように思う。100角タイルとまでは行かないが、粒タイルよりは広いタイルを目指したい。

 そこで思い付いたのが長方形。と言って、レンガのようだと洋風感が出そうなのでこれを避けての細長形のボーダータイルというタイプ。そして、それを縦貼りする。イメージは細格子。

 画像とは印象が違う事が大体通例、と言う事で複数のサンプルを複数回取り寄せ。ああでも無い、こうでも無いとお母さんと相談の上、一シートに24粒物を決定。取り敢えず漆喰でも塗るか、程度しか積算段階では考えていなかった為、予算立てはしていない。よって、比較的安価な物とし、さらに割付にも手間を惜しまず厳しい数量を発注した次第。

 

トラウマ施工

 まだだ、まだヤル気が高まらん。だけど、そろそろ片付けておきたいという気持ちを抱いていた箇所を思い出した。それは、キッチンタイル施工。

 

 キッチン内壁仕上げは今まで悪戦苦闘してきた通り、設計段階から基本は漆喰。但し、キッチンカウンター周囲は未定としてきた。理由は単純、汚れやすそうな箇所だから漆喰なんて如何なものかと。

 

 普通に考えれば、現代住宅でよく使われる化粧パネルという案が出てくるかと思う。合板か鉄板母材の表面にツルツル加工が施され汚れ難そうな上に、汚れても拭き取り易そうでキッチンに打ってつけ、かつ施工も容易な今時の新建材。

 だがしかし、この手のデザインに、この家のような日本家屋にそぐわない物ばかり。もし施工してしまうと、よくある「陳腐なリフォーム工事」代表箇所になる事請け合い。ゲンナリだ。ここでそんな妥協をするぐらいなら大規模単独施主施工をせず、本職に発注した予算内に収まるお手盛り「陳腐なリフォーム工事」にしていたわい。

 

 さらに、合板母材の物になると劣化が気になりそう。平成製は不明だが、昭和製のこの手の物は普通に劣化してたりする。風合いじゃない、劣化だ。無地白単色品、とかで十分なのだがそういう感じのものは見つけられず、あったとしてもこの寿命問題で躊躇する。鉄板母材のガラスコーティングされた、所謂ホーローだと寿命問題はかなり低減、又は払拭されると思われる。が、今度は個人で仕入れる術が見付からず。それをクリア出来ても現場加工が厳しいかもしれない。そもそもデザイン問題は解決するのか。

 

 という事で化粧パネルは断念。次に考えたのはガラス板。一番不安なのはシンク前壁への水撥ね。漆喰仕上げにした上で、その上にガラスを設置すればどうか。そんな事も考えてみたが収まりをどうするか、漆喰とガラスの間の空間は綺麗に保たれるのか、そもそも意匠的にどうなのか、等々名案とは思えず。

 その次、いっその事、油混入の漆喰仕上げはどうか。屋外の漆喰に油を入れる施工法がある。汚れを付きにくくし水浸透も抑えるらしい。この案は相当残っていたのだが、屋外と違った汚れが降りかかる当該壁でどこまで効果があるのか疑問。

 

 そんなこんなであれこれ悩んで行き着いたのが、何の事は無い、王道のタイル。

 王道なのに躊躇っていた理由は、綺麗な施工が出来なかった経験にある。以前行った施主施工にてやはりキッチン廻りの壁に採用したのだが、全く納得いかない出来栄えだった。墨を打ったり水糸を張ったり思い付いた事はやったので、写真程度だと分からない。しかし、実物は誰が見ても下手な代物。タイル角のラインが歪。さらには面も均一でなく。

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 以前の施工では、下手なモルタル左官で歪で面が出ていない下地壁。それを、下手なお父さんがタイル接着剤で面を出そうと足掻いた。そんな盛り過ぎたりした接着剤に浮くが如し、タイル貼り付け時にズレる事多し。そもそもタイルは100㎜角のバラ材。打って変わって本施工では面が出ている壁、タイルはバラ材ではなく300㎜角等に纏められたシート材を採用。ならば難易度は下がるんではないか。と考えて採用した次第。