家屋伝承

我が子たちに伝えておきたい、伝統構法の我が家のこと。

多重人格

 施工者としては漆喰仕上は非常にやりたくなくなった。施主と設計者としては依然として漆喰仕上。お施主さんと設計の先生がそう言うんだから仕方が無い。お父さん、多重人格じゃなかろうか。

 そう言えば、個人の施主が諸々段取りと調査等をした上で、左官職に自宅土壁への漆喰仕上げを求めた記述があった。結果、要所要所にひび割れ発生したそうな。プロとして、出来ない事を引き受けた事への叱責は免れないという見方はあるかもしれない。しかし、何が何でも、大丈夫だから、等々にて説くお施主さんに抗する事は容易では無かったのかもしれない。その後、その左官職は塗り直しを自ら買って出たそう。お気の毒に。

 

 まずは、材料の事から。楽観時代のお父さんでさえ、流石にこれはお手上げと考えていた。その事もあり実質既配合品を購入。

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 練り済品という物が漆喰にはあるが総じてそちらが高そうで、自分で練る粉末品にした。その為、漆喰等向けのスサ材用攪拌機羽根をとうの昔に購入している。漆喰施工は既定路線。漆喰だけでも数百kg分を練るので買って正解。

 

 漆喰には、貝灰と石灰の種類があるそうな。貝灰の方が元祖との事で、太古の昔から利用されていた漆喰はこちらだとか。石灰は中世からだったかな。石灰の方が燃焼温度を要するそうなので、そこらの技術的な差が歴史の差なんだろうな。

 当施工においては石灰漆喰を用いた。サンプル品の貝灰漆喰は黒異物が入っていた事から、見た目により決定。石灰漆喰の方がちょっと割安だった事もある。

 

 だが、かなり後に見つけた記述によると、石灰の方は粒子が均一で貝灰はそうではないとの事。で、粒子が均一だとヒビ割れが起こりやすいとの事。

 あぁ、確かにそれはあるだろうな。って、もう納品されちゃってるし。ちなみに、高みにいそうな本職の方だと、貝灰と石灰を混ぜて作られるそうだ。あははは、やっぱり凄いわ、真の職人さんは。はぁ。

 

 そうは言ってもちゃんとヒビ割れ防止材がある。すっかりお馴染みになったスサだ。

 漆喰に使われるスサも複数種類があるそうで。土佐漆喰という種類は、お馴染みの藁スサが使用されるのだとか。よって、少し黄ばんだ色になるそうだが、時間と共にそれが消えて白くなるようだ。しかも、藁のリグニンによるのか、後述する糊を使わないとかかんとか。

 

 お父さん購入品は、一般的と思しき麻スサ。

 麻と書いても、昔ながらの真の麻では無いらしい。GHQにより禁止にされたような麻だけでなく、そこらややこしくない品種があるそうで。国内で栽培もされているそうだけど、生産量が少ないのかな。という事で、他の植物による代用繊維を漂白して売られていたりする。また、化学繊維もある。

 ちなみにこのスサを、漆喰の量の嵩増しをするだけの不要材だと論ずる販売業者氏がおられた。お父さんはこれに抗する知見を持ち合わせていないのでよく分からないが、現代の新建材壁相手とかだとあながち間違っていないのかな。ただ、昔ながらの土壁を相手にするお父さんとしては、そのような挑戦はとても出来ない。いつも通り先人に従う。