家屋伝承

我が子たちに伝えておきたい、伝統構法の我が家のこと。

そして休業

 漉し土を作った事で仕上塗りは進んでいく。もう実験はしない。これを本番として実験面は削り落としてやり直し。その他全面そのまま乾燥を待たずに猛進。

 と言いたい所だが、この工程は非常に疲れる。仕上塗りという事だからだろうか。広くもない一面に対して要する時間は凡そ30分。塗りながら時々息を止めていたりする。一面終わる毎にため息と深呼吸と一服休憩。振り返ると何十面とあるので極力振り返らず。

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 そこまでしても、決して本職既存壁仕上げ並みとはとても言えない。実物を見てもらったら分かるが、一応写真を付けておく。フラッシュを焚いた写真だと綺麗なんだが、そうでないと粗がよく分かる。

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  ついでにこの写真から触れておく。寒冷紗が伏せ込まれているのが分かるだろ。例の長押裏埋めにより出来る入隅部のヒビや剥離防止の為だ。

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 ちなみに、この欄間下方の塗りにはやってみたいと言ったきょうこも参加。自他共に不器用と認めるお母さんは一度も参加せず。

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 で、寒冷紗は仕上材が明らかに厚くなってしまう所にも部分的に伏せている。そう、仕上材の厚さが違う所があるんだな。特に欄間上方の壁は。寒冷紗によりヒビが起こらないと信じていた時、下地をちゃんと平面に仕上げていなくとも大丈夫だろう、と材の節約と横着に走ったんだな。

 

 これまたついでに、その欄間上方壁の写真も載せておこう。下地違いによる水引き具合の違いが顕著な写真。

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 仕上塗りをした翌々日かの状態で、壁上方は乾いていて下方はまだ濡れている。上方の下地は、元々天井懐に当たる所で新規塗り。下方は既存下地。新規に塗って乾燥した下地の水引きは強い。水の通り道が出来ている感じじゃなかろうか。下方の既存下地は表面が削られたりして通り道が埋まっていたりするんだろう、水引きが弱い。よって、何が何でも土壁に吸湿性を求めるのなら新設した方が良い、という証拠写真

 

 そう、度々書くが、素人は左官職の鏝捌きに玄人さを感じると思うがそれは一部分。それは勿論ながら、下地を見たり材を作る術、雰囲気付けて表現するなら、材との対話が出来る事も玄人が由縁だと思うんだな、お父さんは。

 漉し土により仕上塗り自体は劇的改善。しかし、問題のヒビは発生。ネタの配合や水加減、下地の状態等々に対応出来なかった。水量加減や厚さ、乾燥差異は材の動きの差異を生んだのだろう、大小のヒビが多数発生。

 

 ここで毎度ならばお父さんは意気消沈するわけだが、今回は何故かちょっと違う。やる気貯金があったせいだろうか。若しくは、奥の手を用意していたからだろうか。ヒビが起これば埋めればいい。という事で、中塗土を漉した際に分離した泥を確保して置いた。左官職が言う所の「ノロ」というやつかな。

f:id:kaokudensyou:20170507162646j:plain←馬糞とかじゃないよ

 

 ヒビ等の不具合がある面を噴霧した上で、指でノロを埋めていく。余分なノロは棕櫚刷毛で払い落としつつ、再噴霧と棕櫚束子等で面に馴染ませる。この作業が全く分からない面もあれば、ヒビが大きく薄っすら跡が見える箇所、束子で擦り過ぎて粗さが出てしまった面もあったりする。

 

 以上、悪戦苦闘した中塗仕上は、目標の本職既存レベルには到達しなかったが、許容は出来る具合にはなり終了。実験塗り開始からノロ補修までで恐らく15人工強は掛かった難関施工。

 悲しい事にこれで終わりとならない。元奥の間と元仏間の小壁が終わっただけ。繊維壁の南側縁側の同工程、本職既存中塗仕上壁の不具合部等やスイッチ撤去欠落部等々が待っている。今度は砂や藁スサを増やしてみようかな。ま、何にせよ当分おさらばだ。