家屋伝承

我が子たちに伝えておきたい、伝統構法の我が家のこと。

頭上の事

 百年後にあるか分からない設備云々を言うならば、キッチン天板も床漆も薪ストーブも同じだな。二人の時代でも使っているかもしれないから書くか。孫世代以降はそういう設備があったのかと思って読んで頂戴。

 

 現代のキッチン換気扇はコンロ上方に設置される仕様が多い。排気ダクトは壁開口によるのだが、吸気口は大体が人の身長を超える高さに位置している。翻ってこの家は、吸気口が大人の身長よりも低い位置にある壁付け仕様。これは珍しい方だ。

 

 理由は二つ。一つ目は設計面。間取り変更案の決定後で、設計作業の本格化の初期から躓いたのはこの換気扇問題。

 まず、極力既存土壁に穴を開けたくは無かった。どのようなキッチンになるとしても、北側鴨居上の小壁にそれなりの開口を設ける事になる。もし貫が入っていれば確実にそれを欠損させて、確実に強度低下が免れない。

 納まりも良くない。北側小壁上部には丸太梁が入っている。換気フードを北側小壁に設置するとこれに当たってしまう。当たらない様にすると換気フード高はお父さんの身長並みになる。東側小壁にフードを設置する事も検討したが、ダクトを北側小壁に引っ張る必要は同じく。さらに、丸見えにならないような細工が新たに必要。

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 これらの解がなかなか得られない中、お母さんのガスコンロ付けっぱなし事件が多発する。一回でもあると良くない事が現在でもたまにあるが、当時は多発のレベル。若年性認知症を疑う。

 これによりIHコンロ採用となって行くが、ガスコンロであっても現代のそれはコンピューター制御がされているので大きく心配をしていたわけでは無い。何が何でも直火器具だとするなら実現は出来た。しかし、IHの採用理由はお母さんだけでは無く複数の事柄が絡み合う。その一つがこの換気扇設置位置問題であり、壁付換気扇に至った理由の二つ目がこのIHコンロ採用である。

 

 換気扇をコンロ上方に設置する理由は、煙や水蒸気が上方に昇るから。お父さんはそれらが軽いから上昇すると漠然と思っていた。湯気も焚き木の煙も上がっていくし、雲は天空に浮いているし。しかし、水素やヘリウム等の空気よりも軽い気体と違って、水粒子や煙粒子は自律的に上がっていくわけでは無いらしい。コンロの火が上昇気流を生み、それに乗って煙等が勢いよく上がっているだけなんだって。

 

 そう言われてみれば雲が生まれるのは、低「気圧」というその本質が分かり難い名称の現象によるもんじゃないの。「低い」と「圧」という言葉のせいで、お父さんは地表面が押されているイメージをしてしまうので、脳内でいっつも変換を要している。低気圧は「上昇『気流』」とかで表現してくれればいいのに、この理解は間違っているのか。ん、お父さんだけか、こんな事考えているのは。ま、これは置いておいて。

 

 IHコンロによる湯気等は加熱物によりある程度は上昇。しかし、直火による強烈な上昇気流があるガスコンロ程では無い。直火だと放っておいても向こうからやってくるが、IHの場合は上方に設置された換気扇が湯気や煙等を引っ張り上げないといけない。吸気というのは排気よりも大変だそうで、家庭用のファンでは十分な能力は無いという記述もあった。

 IHにする事で壁付の換気扇が使える、とも言うし、湯気等の発生源近くとなるのでこれを使うべきとも言う。こうなると、上方設置による設計上の問題が払拭されるぞ。そんなわけで壁付換気扇を採用する事に決定した。