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家屋伝承

我が子たちに伝えておきたい、伝統構法の我が家のこと。

ディティールに神が宿る、らしい

 さて、何故、漆塗りが終わっていないのに天板本設置を急いだのか。何故、天板と壁との取り合いを壁面基準にしたのか。それは「天板巾木」を取り付ける為。

 

 天板巾木。普通に言うなら天板奥側の立ち上がり材か。天板上の水が壁に回らないように立ち上がっている、かと思っている。製品の天板ならば、ステンレスでも人工大理石という名のプラスチックでも、この細工は成されている。モルタル造作でも当然可能だな。天板と一体。しかし、壁との取り合いの隙間を埋める別材。寸法的にも巾木っぽい。という事で巾木。

 しかし、漆仕上げの木製となるとどうしたもんかと悩んでいた。巾木材と天板材の隙間は必ず発生する。焦点はこの埋め材を何にするか。

 

 普通に考えるならコーキング材だ。施工は簡単だし、防水性はあるし、隙間を埋めての形状は自在だし、メンテナンスも容易。天板と巾木材への漆塗りを完成させてコーキングを施す。工程管理まで楽ちんだ。だがしかし、なのだ。木と木の隙間を埋める材がコーキング。漆仕上げにコーキング。伝統構法家屋にコーキング。他にこれ以上の適材が思い浮かばないので構わない。かまわない、かあない、ああなん、ああかん、アカン。アカンのや!

 

 そこで目に留まったのが錆漆。

 巾木材の固定を壁側と天板側、どちらにしようが隙間は生まれる。そして、壁と天板は違う動きをするはず。それぞれが違う動きをしても、追随性や伸縮性のあるコーキングが切れる程に動く事は地震以外には考えられない。しかし、柔軟性が高くなさそうな錆漆だと恐らく切れやすい。どうしたもんかと暫く悩んでいたが、結局はこれで行く事にした。やはり駄目ならその時は黒コーキングを上塗りしよう、と開き直っての決断。本施工では唯一じゃないかと思う趣味嗜好の域による建材選定。

 これにより、巾木と天板の一体的な仕上げ塗りをした方が良いんじゃないか、と考えた。錆漆を固着させる為に上から漆を塗る。どうせ塗るなら、一体塗りの方が見た目も当該箇所の防水にも良いだろうと。

 

 設置を壁面基準にしたのは、まずは意匠面からによる。

 施工の簡易性を優先して柱面基準にすると、真壁だけに柱のチリの分だけ天板と壁が開く。最大だとそれは20㎜を超える。この空間を埋める部材となる巾木はそれ以上の厚みとなる。不細工だ。

 

 次に、キッチンの使用勝手についても考えてみた。

 天板奥行寸法は既存規格品システムキッチンより数cm程大きい。この数cmが侮れない。もうちょっと奥行があれば、と思う場面はそこそこある。ならばいっその事どぉんと奥行を取ってもいいんじゃないか、とはいかない。致命的なのは窓に手が届かなくなる。それに大抵の場合、兎にも角にも広げれば良しでは無いと思う。使い勝手が却って落ちると。それを踏まえてお父さんとお母さんなりに決定している。

 この設計通りに確保しようと思うと不細工的厚み分をどうするかだ。天板奥行を短くするか、手が届きにくくなる窓となっても辞さないか。両方無いな。

 

 そういう事で、施工者視点ではなく施主と設計者視点による工程でこうなった。施工者視点のみなら、柱面基準にて天板と巾木をそれぞれ完成させてから隙間はコーキング、この一点だ。