家屋伝承

我が子たちに伝えておきたい、伝統構法の我が家のこと。

砥ぎ地獄

 師曰く、「木地に吸われた漆は固まる迄に時間を要す」。

 一回目捨て塗り終了から凡そ一週間。この間、気温と湿度と共に良好な状態。まず間違いなく木地内部に入っているはずの漆でも硬化している。

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 塗布表面についてはとっくに硬化。何なら翌日には完全指触硬化はしていた。

 それに色合いが薄くなって来た。漆は日光により色が薄くなるような事は以前に書いた通り。だが、たった数日でとは知らなんだ。結構な変化率なのだ。薄口生漆だからかとこの時は思っていた。

 それにしてもすこぶる良い感じ。これ、亜麻仁油古色塗料でもウレタン塗料でも出せる感じなのかもしれない。しかし、頭に「これは漆」という事もあれば、塗る前の状態も知っているし、自分で施工したという事もある。だからなのか惚れ惚れ。古民家先輩の気持ちが分かるような気がする。漆教に入信しようかなぁ。

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 さて、本作業においてお父さんは「捨て塗り」という言葉を使っている。一般的漆塗り作業においての木地固め塗りの事は「塗り」のみ。気が付いたかな。意識して使い分けるようにしている。

 後者の「塗り」は、次の木地固め前にヤスリ掛けをするもののしっかり残すようだ。前者であり師匠の教えによる「捨て塗り」は文字通り、捨ててしまう程にヤスリ掛けを思いっきりしてしまうのだ。本漆地塗りはとても贅沢。

 それにしても、あぁ、嫌だ。この良い感じな状態を自らの手で無くしてしまう。漆が勿体ないし、時間も勿体ないし。いやいや、「美への奉仕」「美への奉仕」「美への奉仕」。

 

 師曰く、「砥ぎ地獄の日々の始まりである」。

 一回目砥ぎ作業。これは水砥ぎ用ヤスリ紙240番を木片に付け、手でひたすら砥いでいく。木地が見える程に砥いでいく。

 覚悟はしていた。しかし、座学と実践では違った。師匠の「地獄」の意が分かった。本当に「筆舌に尽し難い」。「生き地獄」や「辛酸を舐める」では勿論無い。そのまま文字の通り、文章や口頭でいくら説明してもこのしんどさはやった人間にではないと伝わらないという意味。朝から始めた砥ぎ作業は夜中に終わる。純作業時間は10時間強、必要嗜好品コーヒー五杯以上と煙草二箱程、だったような気がする。単調作業かつ、力仕事かつ、綺麗になっていくのではない作業。意識朦朧でよく覚えていない。

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 きょうこはこの感じが良いと言っていた。カントリー調の家具のようなと。う~ん、分からないわけではないな。分からないわけではないし嫌いじゃないが、この家には合わんな。

 

 師曰く、「鉋刃の粗がよく分かる」。

 この砥ぎ作業が苦痛だったのは、精神的にもやられた為もある。師匠と同じく鉋掛けの粗が見えた事だ。

 師匠の場合は刃の段違いを指されていた。鉋の刃渡りを最大巾にして木は削られる、という事は分かるだろう。当たっている所は削られて、そうでない所は削られていない。至極当たり前であり、これにより段差が生じる。これを解消する為には、削られていない所も削るわけだ。これも至極当たり前、理屈ではな。

 お父さんも漆塗りに関係無く気を付けている。そして、そのような箇所は基本的に無い、目で見て分かる範囲ではな。これが、漆を塗ってそれを削ると視覚的によく分かるようになるとの事。目でも指触でも分からなかったような窪み、その箇所の漆だけが水砥ぎ平面化により残る事で視覚的に分かると。この記述の事もあり、キッチン天板鉋掛け時には薄削りを意識して行っていた。これが功を奏したのか、水砥ぎしても天板に刃の段違いは見当たらない。

 

 が、鉋刃の入り傷が無数に出た。全く持っての盲点。

 以前に書いた通り、天板鉋掛けでは綺麗に仕上げるだけでなく反り修正も目指した。刃が鈍りだした事に気付かずに削るだけではなく板を剥いでしまった。鉋刃段違いだけでなくこれらの事もあって、部分的極薄削りを乱舞の如く手数多く行った。勿論、最後は全体的に軽く掛けた。それが足りなかったのか。極薄削りにする前の普通薄削りも残ったのかもしれない。

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 鉋刃は鉋台の底から出ているわけだが、これは目に見えて分かる程ではない。見えて分かるのなら出過ぎ。よって、本職はどうか知らないがお父さんは試し削りを行って刃の出具合を見る。この際の削りカス厚が0.1㎜だとすると、刃の出代も同数値かと考えるのが真っ当かと思っていた。しかし、柱等の節を削っていて鉋が引っ掛かるとそこには刃傷が付く。その深さは、削りカス厚よりも深そうに見えて不思議だった。今回の天板を見る限り、やはり単純ではなさそうに思える。いやはや、まだまだ鉋は難しい。

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