家屋伝承

我が子たちに伝えておきたい、伝統構法の我が家のこと。

急遽の選択

 何だか変な感じで理想的とは言えない経緯や動機にて、床板漆施工の急遽の決定。この「急遽」というのがこれからじんわりと、モノによっては激しく問題を発生させたり影響を及ぼしてくる。お父さんの今までの人生で、急遽にした選択や決定で良かった事はあまり無い。現在のお父さんは判断能力が低いとは自身で思っていないが、それに速度が含まれるならば並み以下だと自信を持っている。

 

 避けたかった急遽の決定に伴って、急を要して行わないといけない事。前述通りの製材所に床材発注。

 製材所社長から、特一等材ながらも出来る限り良いものを取り置いておく、と言ってもらっていた。実際に、かれこれ何ヶ月経っているのだろうかという程に、加工前材の在庫をしてくれていた。ほぼ天然乾燥状態。但し、さすがに在庫期間が長かった事、それにそもそもお父さんはまだまだ先だと伝えていた事もあり、半分弱の在庫材を放出してしまっていた。

 よって、製材所には材の急遽確保をしてもらう事になった。この事により、人工乾燥材と、選りすぐりではない普通の特一等材の割合増加が発生。

 

 これ自体はもう仕方が無い。ただ、今だから思ったり分かったりする事がある。順を追わずに先に書いておこう。と言っても簡単な話で、漆施工の為の脳内が準備不足状態だったという事。最初から何となくの自覚はあったが、事態の進展に応じて痛い問題として気が付かされる。

 この時、三月上旬で左官施工真っ最中。例えばこの左官については、事前にああだこうだ調べたり考えたり検証したりとしていた。お父さんは探検さんのような方と違い、本職等にお金と時間を投じて学びに行くというような気がさらさら無い怠惰者でケチンボ。それだけに、時間を掛けて脳内準備やらイメージトレーニングをする事が唯一出来る事であり、それぐらいはしないといけないと思っている事。なのに、繰り返すようだが、漆についてはその程度さえもほぼ皆無。

 

 良材が減ったとしても梅雨期に塗らないといけない、という事で床板発注に向けて慌てていた。作業服が防寒仕様の頃に梅雨の事を考えるのは目まいがする。

 しかしこれ、じっくり漆の事を調べたり検証したりをし、またじっくり施工計画や工程等を検討すると慌てる必要も無かった。と言うのも、漆は前述数値程の中温多湿が厳密に必須というわけではなかったのだ。さらには、どう足掻いても漆風呂のような物を造る事になる。機能する漆風呂があれば、工程にぐっと余裕が生まれると思われる。そうすると、これからいくつも出てくる思慮不足や無駄がかなり減ったと思われるのだが、それはまた後述。

 

 左官をしながらも、キッチン設計でお母さんと揉めながらも、床板発注に向けて決めないといけない事があった。それは仕上げの仕様。モルダー仕上げと超カンナ仕上げのどちらにするのか、という製材所の問い合わせ。

 前者は荒材のザラザラを取って一応の加工材っぽくするもんで、後者は艶々で綺麗な化粧材にするそうで。製材所のお若い方の言だと、お父さんの鉋の腕前はこの二仕上げの間で超カンナ仕上げ寄りだとの事。超カンナ仕上げ寄り、というのは気を使ってくれた言かもしれず、何にしろ機械には負けているようだ。まぁ、お父さんからすると、自分の鉋仕上げよりも綺麗ならば満足出来る。

 

 この選択の課題の一つは加工賃。モルダー仕上げも請求されるが、超カンナ仕上げはこれと結構な差額となる。

 もう一つは、漆の乗り具合。モルダー仕上げとなると柱材の時のように、お父さんがベルトサンダーによるヤスリ掛けをする事になるかもしれず。二人にも分かると思うが、ヤスリ掛けは削る事であり、鉋は切っている事である。一見どちらも綺麗でも、木表面の具合が全く違う事になる。果たして漆を塗ったらどうなるのか。これがさっぱり分からない。