家屋伝承

我が子たちに伝えておきたい、伝統構法の我が家のこと。

雑さは門戸を広げるか

 国防の前に、我が家のキッチン天板木地を漆により守らなければいけない。漆の塗り方は色々あるようだ。お父さんの採った方法は「摺漆」とも「拭漆」とも言われるもの。

 

 身近に漆が無い一般的な人だと、漆塗りと言えば黒や赤の木地が見えない艶々なものを想像すると思う。前に触れたかもしれないが、この塗り方だとキッチン天板はシナ合板でも十分かもしれない。塗り工程はかなり多いし相当大変そうだが、木地の素材そのものと漆により反りの心配は少なく、木地作りは簡単そう。漆有りきの施工だな。

 

 度々書いた通り、お父さんの場合は木地有りき。キッチン天板が真っ黒や真っ赤という事が想像出来なかった事と、木地が見えるぐらいの仕上がりを良しとした。その結果としてタモを選び、それが故の今までの道筋。必然的に木地が見える塗り方となり、尚且つ初心者向けともなるのが摺漆という方法なのだ。

 

 先に書いておくのだが、購入した漆塗り方参考書籍について。

 写真が多い上に、内容も簡潔的且つ親切的で初心者向けには良書かも。ただ、掲載されている写真の漆器等の出来がどうもイマイチのような気がするのだ。埃か何かの屑が付いているものもあるが、完全に糸くずが入った漆器が完成品として掲載。その他、下地の出来の悪さが仕上がりにバッチリ出てしまっている物もある。

 いずれも本職の方によるもの。まさか、この書籍の為にひいては将来の漆芸の為に、とか何とか言われて無報酬を半ば強要された結果、嫌々作った物なのだろうか。もしそうだとして、氏名と顔写真が出る本職だからなぁ。お父さんなら出版社に写真変更を懇願する。そもそも、編集側が掲載写真を選ぶ際に配慮すればいいのに。あ、もしかして、この程度でも良いのだとハードルを下げる事で初心者を増やそうという魂胆か。そういう意味だとやはり良書なのかも。

 

 しかし、お父さんの場合は、まずは本職の凄みを見せて欲しいタイプ。目指すべき頂上を麓で確認したいんだなぁ。そういう事だけではないんだけど、この書籍はあくまで参考。今の所、お父さんはそのまま実施した内容は多くない。左官とかとも同じく、絶対にこれだという確定方法があるわけでなさそうで、塗り手によって違う所が色々あるようだ。それでも、この手記と一緒に置いておくようにしたいと思う。

 

 それを踏まえて至って簡単に書くと、摺漆とは木地に漆を摺り摺りし、塗った漆を拭き拭きし、これを気が済むまで繰り返す方法。

 流石、初心者向けとされている塗り方、簡単そうに思わないかい。左官とかでもそうだ。平面出しは難しいけども下地が合板等だけなら簡単そうだ。と、中塗り下地左官施工までしたお父さんはそう思っている。でも、きっとそうではない。使っている道具がシンプルで数も少なく、手等の感覚やらで施す様は、傍から見ていて簡単そうだが実はそうではない。それが常だろう。

 

 この逆ギャップの代表格はユニットバス等の住宅設備類の施工だろうな。重たいからデカイから時間や人手等が掛かるだけで、やってる事はプラモデル作り。特別な工具等も不要、多人数も不要。でも、知らない人間はこっちの方が難しそうに見えるっぽい。

 ユニットバスに限らず、沢山の大人の知恵の集積により簡単施工目的により創られて、生き残っている建材や設備は大体が目的通り簡単。中には素人でも簡単な物は一つ二つではない。左官はこの逆だな。多分こっち方面から考えても、初心者向けの塗り方と言えども甘くはないだろう、と見据えていたお父さんは正解。