家屋伝承

我が子たちに伝えておきたい、伝統構法の我が家のこと。

「古民家」って何?

 一人称を「お父さん」に戻してそろそろ次の施工の事を書こう、と思っていた。

 

 しかし、寄り道をする。時間差があって現時点で行っている作業は、後述するがとても単調単純だったり流れ作業だったりする。こういう作業をしているとあれこれ考えてしまう事が生じたからだ。

 修行僧が掃除や読経とかの、言うならば日々忙しいが単調な時間を修行として過ごすのは、こうする事で雑念を振り払ってやがて悟りの道を開く為なのかも。お母さんの父の法事に来ていた坊主が生臭な感じなのは、カネと酒と女等の俗世の事を考えるのに日々ご多忙でいらっしゃるからだろうな。そんな事も考えてみたり。

 

  ずっと躊躇して避けていたものの、孫以後の世代に向けたお母さんの事を書かないといけない、と考えたのも悠久かと思うような時間を過ごしていたからだ。さぁ、次は、と思っていた所に思わぬ方向から思考の深みに嵌りそうな事柄が飛んできた。古民家先輩からだ。

 施工の一つの山場を越えられた古民家先輩は区切りとしてだろう、ご自身のブログにて自己の価値観や哲学的な自論を展開されている。以前からもそのような内容は書かれていたが、ある程度は読み手に徹するようにしていた。しかし、今回はタイミングが悪かった。単調作業という素地がある状態で読んでしまったものだから、そこに参戦してしまった。

  まぁ、それを子孫に向けたこの手記でどうこう詳しく説明はしないが、主に古民家と現代新築住宅、それに自然素材についての論。それに触発されてしまい、以前から抱いていた事や派生した事を書きたいと思う。これらの内容は、流し読みでもしてくれれば十分だ。

 

 

  さて、まず一つ、「古民家」とは何ぞや。文字からすると「古い民家」だわな。しかし、一方で世間には「中古住宅」と呼ばれるものが数多ある。この違いは何だろう。

 そもそもお父さんは、この家を「古民家」と呼ぶには凄く違和感がある。先にも書いたが、こう見えて世間や周囲に合わせる能力を持っているお父さんは、皆がそう呼ぶからそれに合せてこの家も「古民家」と称している。が、何故だか本音は違う。

 

 古民家先輩の古民家は、まさに「古民家」という家屋だ。写真等いらない。茅葺屋根の画像を検索でもしてみた上で、その屋根は板金で覆っている物と想像すれば外れない。平成の時点で築百年を超え、立派な柱や梁があったり、畳間がいくつもあってそれらを仕切るのはほぼ建具。これを現代生活に適応するレベルに改修されているが、それでもやっぱりどう見てもお父さんの抱く「古民家」だ。

 一方で、昭和30年代や何なら40年代に建てられた、在来工法で連棟の家屋も「古民家」と称されるようになってきた。現在、それらの家屋は築50年を超える事もあって、確かに「古民家」と称しても許されるような気がする。二人や孫が大人になった際、ますます「古民家」になるだろう。

 しかし、何だか納得いかない。

 

 古民家先輩のブログだけあって、読者の方は何かしら古民家の事を考えている方が多そう。その分なのか、お父さんは温度差を少々感じるのだ。

 お父さんもお母さんも「古民家」を探していたわけでもなく、この家が「古民家」だからとして買ったわけではない。お父さんは、他者に説明する時にこの家の事を「伝統構法家屋」と称している。荘厳さ等の見た目、広さ等の物理面、そして「伝統構法家屋」という構造だからこの家に決めた。

 

 「伝統構法」と、これに対峙するように使われているように思う「在来工法」。しかし、度々触れてきたが、在来だったのは「伝統構法」の方で、この木造軸組工法の簡略派生版として確立発展したのが「在来工法」。正確に称すなら伝統構法が「在来工法」であり、在来工法は「新在来」とか「新木造軸組」とかではないかな。

  と言いつつ、それら工法の定義ははっきりしていると論じる方がいる一方、そうではないとの方もおられるようで。お父さんは基本的に前者だけども、後者も素人なりに同感する所がある。百年前程の家屋にて、接合部に金物が無いけど在来工法の軸組的な施工をされている、所謂昔の安普請な家屋が普通に存在するからだ。金持ち工法と貧乏工法、と呼ぶ方が分かり良いと正直思っている。

 

 それであっても、「古民家」定義はこれに比べてさっぱり分からない。その上で、「古民家を大切に」等の論を拝読していてもどこかでピンと来ていない。論者によってだが、その定義やらはたまたその所有物件の具合が分からないからだ。もしかしたら、現代住宅事情への憂いから、懐古主義や原理主義的な面があるのかなと勘繰ってみたり。それはそれで気持ちは分かるけども。

 

 こう書いてきてまとまって来たお父さんの中での「古民家」は、現役なのが不思議と感じる程で、もう少しすると技術的に、そして現時点では社会的に事実上新築不可の家屋だな。

 築数百年であっても現代家屋に直結していて見渡せばそれなりにあり、新築しようと思えばまだ可能な家屋は同じ分類では無い、と思っていそうだ。よし、この家は「中古住宅」だ。明確になったぞ、良かった良かった。しかし、賃貸出しするのなら勿論「伝統構法の古民家」としてアピールだ!