家屋伝承

我が子たちに伝えておきたい、伝統構法の我が家のこと。

材配合と耐力壁、と建基法

■「材」

<材配合と耐力壁>

 材の作り方。何をどれだけ入れて、どうかき混ぜ、どう据え置いて、そしてどう使うか。そんな事は分からん。セメントのような工業規格品で製造者が明示してくれている物はよいとして、自然素材物だと想像もつかない。

 本物の土塗り壁の材は、泥、砂、藁。田園地域に行けば風景としてある物ばかり。そんな自然物を建材にするだなんて、本職の親方や師匠から受け継がれるようなお話。プールでの荒土発酵がうまく起こらない事に、気温が関係する事が分かるまでに時間を要した。材作りには太陽も必要だなんて記述は見た事が無く、右往左往するような無知な素人お父さんにはお手上げなお話。

 

 しかし、やらんといかん。で見積作成時期に配合情報を探しまくったわけだ。それらは以前にも記載したが、実際の施工では少し変わった事もあり、大斑直しも含め改めて記載。

 

・大斑直し=荒土1.7ℓ:砂1.0ℓ:灰汁抜きスサ藁10.2g

・中塗下付=荒土1.25ℓ:砂1.0ℓ:同上藁7.5g

           +解体大斑直し&中塗り土混合材の一部添加

・中塗上付=荒土0.8ℓ:砂1.0ℓ:同上藁6.0g

 

 ところでいきなり建築基準法に触れる。

 お父さんのイメージだとこの法律は、血と涙と利害が絡まったどろどろの法律。この法律は制定以来、幾度も改正されてきた。現在は、震度7クラス一回だけなら倒壊に耐えられる家を建たせるようになった。これは、志ある議員や官僚や学者や設計施工者がおられただけでは無理だったのではないか。ここに至る迄に、莫大な経済損失や無数の負傷者、そして尋常じゃない数の死亡者の犠牲があっての事かと思っている。でないと、日本の大産業である建築土木業界の圧力に抗せないだろう、と。

 こうお父さんは思っている建基法は最低限を定めた法律。24時間換気設備設置義務付けというお節介で「臭い物に換気する」愚改正があったりもするが。

 基本的に法律なんてものは最低限で良いと思う。お節介な法律というのは大概よろしくない。馬鹿な国民の増産目的じゃないかと勘繰る。そういう意味で、業界の圧力だとしても最低限で良い。馬鹿じゃない設計者や施工者、そして施主は、これより厳しい基準を用いているしな。

 

 さて、この建基法は、伝統構法と在来工法の区分けに一役買った面があるかと思う。

 同じ木軸組工法でも、法制定前の昔からあった正に在来の工法が「伝統構法」。制定後に法で位置づけられた簡略版木軸組工法が何故か「在来工法」。伝統構法が捨て置かれた理由は知らないが、「わざわざ法で制定しなくても実績あるちゃんとした工法だからいいでしょ。在来工法は、法で位置づけて守らないと倒壊する工法なんだよ。」かもしれない。

 

 そんな建基法において、2003年に伝統構法の土壁の規定が変わった。それまでは耐力壁として壁倍率0.5という評価だったのが最高で1.5倍となった。この数値は、例えば筋交いを用いて得られるもの。この規定前だと、伝統構法土壁に筋交いを入れるという構造的にヘンテコな事をしないといけなかったのだ。それが真っ当な施工で実現出来るようになった。

 

 この規定改正に漕ぎつけた方々の尽力には敬意を表する。ただ、伝統構法家屋の新築促進力を目的とした改正ならば、意味は全くと言っていい程に無いと思う。法的位置付けを得ていてもなぁ。住宅ローン活用前提の建築確認が得られやすくなっても、坪単価が平気で百万円を超えるのだからどっちみち、なぁ。お金持ちに税制、特に相続税優遇等をすべきだってばよ。そうでもしないと、文化財に将来なるような家屋建築は日本に供給されんぞ。二人が財務省、せめて国交省の高級官僚にもしなったら思い出して頂戴。文科省文化庁では無理だと思うぞ。

 

 話を戻して、この1.5倍を得る為の条件の一つの材配合。

・荒壁=砂質粘土(荒土等)100ℓ+藁スサ0.4kg~0.6kg

・中塗=砂質粘土100ℓ+砂60~150ℓ+揉みスサ0.4kg~0.8kg

 

 はい、どんぴしゃ~ぁ。と言っても、お父さん配合が規定内になるのは当たり前だろう。この配合割合はお父さんと同じ経緯で出てきたものだと思うからだ。要は、昔から、そして現在の左官職の方々が行う配合のそれを、お父さんも建基法も別経路で後追いした、と。業界圧力は存在しないだろうし。建基法の場合は、確か学者さん等が技術的検証をしたと思うのでそこらは大違いだけど。

 既存土壁の確認は出来ないが、恐らくその他の全条件も1.5倍をクリアしていると思われる。大手住宅メーカー神話信奉者で完全建築素人のお父さんの友人が、この家を見た際に耐震的にどうなのかとぬかし奉った事がある。その時は他の面で説明はしたが腑に落ちていないようだった。当時に知っていればこの事もぶつけてやったのに。