家屋伝承

我が子たちに伝えておきたい、伝統構法の我が家のこと。

伝統構法古民家の施工心意気基準

 この家の左官職の腕前を許容する甘いお父さんなのに、探検さんや古民家先輩は厳しそうと言う。心外だ。

 

 大工職探しをしている頃。大工職の一人親方のブログを見つける。

 元々は建売大工、お父さん流に言うと建売組立作業員であり、それなりの稼ぎがあったと言う。しかし、大工職の本分を求め建売組立作業員を辞めたとの事。そうなると、定期的かつ安定日当の仕事が無くなった事を意味し稼ぎが悪くなった。家族に苦労を掛けるが本当の大工として在りたい、と。

 

 来た、これ。施主と施工者に大事な事、共通の価値観。この考えが通じそうなこういう大工さんにこそ依頼したい。と思ったが、読み進めると躊躇させる内容が書かれていた。その方は自宅を工務店に依頼し、在来工法の普通の家を建ててもらっていた事だ。

 なんじゃい、なんじゃい。他人様の考えや価値観や家庭事情をとやかく言うのはお行儀が良くない。だけども、だけど。発注者となるのなら別。

 

 当時、既に古民家先輩の存在を知っていた。先輩は経歴上はお父さんよりも素人さん。ご本人は宮仕えであり、奥さんは身籠っている。購入された家屋は失礼ながら半廃屋の大規模伝統構法古民家。能力的にも時間的にも精神的にも家庭的にも技術的にも規模的にも、お父さんより遥かに厳しい。

 恐らくその大工さんとも総合的に比較しても相当に厳しいはずだ。素人が挑んでいる事を、高みを目指すと言う本職が避ける。以前にも書いた通り、素人が故の無謀さとも言えるのかもしれない。しかし、安定収入を投げ打って家族に負担を掛けるとまで言う本職なのに、やっている事が理解出来ない。求める現場が無いと嘆くのなら、理解ある家族と共に休みを投じて何年も掛けて伝統構法で建てればいいじゃない。

 

 おじいちゃん建築士は以前ブログをされていた。ブログではカッコつけた事ばかり書いてしまうと言う理由で止められたらしい。それと同じような事じゃないのか、とその大工さんに話を持って行くのを止めた。お父さんの本職心意気合格基準は、「古民家先輩と同等、若しくはそれ以上」。

 

 お父さんの施工水準に求めるのは、この心意気の事だと言って差し支えない。この家の改修工事をするという時点で、依頼する現代本職の技量不足問題にぶつかる事は想定をしていた。なので、ある程度にちゃんと収まれば許容しよう、と構えていたのだ。

 しかし、お金を貰う本職は勿論、素人だってハナから妥協するのは言語道断。それは、お父さん自身にも課しているつもり。素人の施主施工で妥協し出すとキリが無いので、ふんどしの緒を締めておきたい。

 

 さて、そんなお父さんの施工の実際の現状はどうなっているか。

 炉壁天端見切り材の施工。凹んでいる土壁対処法が決まらないので、後でどうとでもなるように凹みに多少合せるように見切り材側を加工。柱との取り合いは、将来を踏まえると柱側は温存した方が良い、との事でやはり見切り材側を加工。

 設計上の仕上がり寸法と現状寸法を照らし合わせながら、徐々に見切り材を加工。のつもりだったが、計算間違い発生。柱と見切り材に3㎜程の隙間が出来てしまった。材に余裕がない事でそのまま施工。隙間を埋める。さらに、材の長さも読み違えている。今後、端部の納まりでも手間を掛けて誤魔化し施工が必要だ。

 材自体にも結構な妥協をしている。傷が入っていても極力マシな物を探し、極力見えないようにして使っている。

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 やってもやっても、綺麗に出来なかったり納まりがイマイチになった事に対しては妥協している。何年、何十年も掛けて腕を磨いた真の本職と同じ事がすぐに出来る、とは思っていない。材についても、目立たないように気を使いつつも傷が入っている物を使っている。そんな具合だ。

 しかし、今回の失敗は計算間違いや計測間違い。これはさすがに許せん。自分に腹が立った。なのに、たまにこれが発生する。一体何なんだ。いくら緒を締めても、ふんどしのサイズがそもそも合っていないのか。我ながら分からん。