家屋伝承

我が子たちに伝えておきたい、伝統構法の我が家のこと。

「鉋道」:家造りの道具の為の道具の為の道具

 新規の鑿は新品だからいいとして、問題は中古鉋。特に、元本職所有だった物とリサイクルショップ物。後者は実物を見て購入しているし、誰が使っていたかも分からないし、まぁこんなものだろうとも思えるし。

 

 しかし、前者は本当に元本職物なのかと訝りたくなる。使い込み具合は本当に元本職だろうと思う程減っている。だが、刃の砥ぎ方なり手入れ具合や補修具合はかなり酷い。当然の錆だらけは驚かない。でも、ペンキが結構掛かっていて固着しているのには少々驚いた。鉋台からは工業油臭が結構するし。こんなに道具をちゃんと使えていないのが本職ってか。

  どうせ仕事終わりか仕事前に道具の手入れもせず、居酒屋に直行か布団の中から出ない人間だったんだろう。そういう人間には、当然人工代の高い仕事が回って来るはずもなく、高級な鉋は買えないし、酒代確保が大事なので買わない。どうせ安物鉋、と捉えて騙し騙しの手入れで使う。そういう姿勢と仕事出来具合からやはり良い仕事が回って来ず、今日も道具の手入れをせずに居酒屋で政治や社長やらへの愚痴を巻く。と、そんな妄想をしてしまう程。

 この人の顔を知る由もないが、大した事が無い本職だったのは明白。お父さんの妄想は近からずとも遠からずだと思うのだけども。

 

 このペンキ剥がしは特殊としても、その他の鉋の手入れ工程と言われる物は一つを除き全て行った。鉋台寿命がもう厳しい、という物は新たに鉋台を購入。これにより台の仕込み工程もほとんど行った。

 これらについては割愛する。と言うのも、書いてしまうとその内容量はとんでもなく膨大になるのだ。しかも、まだまだ修行中の身のお父さん。簡潔文章を書くのが苦手なお父さん。そういう人間が書くと、文量だけは多いのに分かりづらいとなる事請け合い。この時点でも長くなってる。

 詳しい方による文献を見つけて自習する方がよほどマシだと思う。百年後や二百年後の子供達にとっては、その文献自体が見つけられなくなっているかもしれない。もしそうならば、鉋自体が無くなっているかもしれないので悪い意味で心配無用だろう。

 

 ただ、この労力の事だけは説明しておかないといけない。これに凡そ15人工を要し、この間はほぼ完全に工事中断。現時点でこれに匹敵する施工箇所は無い程の長期だからだ。

 再生や手入れが必要な鉋数は13挺。だが、朝から晩まで鉋刃を砥いでいる事も数日あった。先達の方によると、正味の仕込みをすると1挺一人工は要するとの事。お父さんの場合、これ以上に掛かったのにまだ七分か八分かの出来程度。使いながら、様子を見ながら仕上げていく次第。

 

 これ程掛かった主要因はお父さんの技量不足は前提として、鉋刃の修正を要した事。無茶苦茶な砥ぎ方がされていたので、これを真っ当な鉋として綺麗に平らに削れるようにしなければいけない。

 この事は同時に、砥石使用が多かった事を意味する。この砥石という物はそれ自体も修正を要する。刃物側だけでなく砥石自体も、砥いでいくとその箇所が凹んでくる。そうすると刃物を平面に砥げなくなってくるので、先端の鋭利さを確保出来なくなってくる。その為、「砥石」自体を「砥石を砥ぐ道具」で砥ぐ、というややこしくて地味だけど大事な工程が発生する。

 要は、木材を平面に削る為には適正状態の「砥石を砥ぐ道具」「砥石」「鉋刃」「鉋台」、そして最後に「使い手の技量」が揃って成される。これが主で、副も入れるとまだある。こんな事知らなんだ。

 

 刃物を研いでは砥石を砥ぐ。これを交互に行う。15人工の内、刃物砥ぎと砥石砥ぎに半分以上は費やしたのではなかろうか。この時間、「自動砥石砥ぎ器」とか「砥石砥ぎ治具」とか作れないものか、そもそも売っていないのか、と考えた。家造りの道具(鉋)の道具(砥石)の道具(砥石砥ぎ)まで良い物が欲しくなる。閃かなかったし売っていないんだけども。

 一度再生や仕込みが出来てしまえば、今後はここまで労力は必要無いと思われる。それに、ちょっとだけ砥ぎ腕が上がったように思うし。ほんとにちょっとだけ。刃や裏金というの小さな物の幾つかは、砥石の上で立つようになった。これは平面に砥がれている証明らしいぞ。

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