家屋伝承

我が子たちに伝えておきたい、伝統構法の我が家のこと。

家づくりは土壁を寝かす事から

 おっと、早期の理由を書いてなかった。以前にも書いた通り、壁土に混入する藁を発酵させる為に、事前に水に浸けておく為なのだ。

 壁土の接着力は、主材料である粘土のそれだけでなく、混入される藁が分解する事で出てくるリグニンという成分によるものらしい。このリグニン、分子構造は複雑らしくて未だによく分かっていないらしい。これを経験則で昔の左官屋さんは使っていたんだな。すごいなぁ。さらには、残った藁の繊維質がより結束をたかめるとの事。確かに、既存の荒壁はただの乾燥粘土よりも硬い。

 戦国時代のある武将は、土壁の在庫を常に持っていたと聞いた事がある。急遽、出城や陣を建築する際に即応できる為だそうだ。民家であっても、建てる際にまずは土壁の段取りからしていたとの事。この家の改修工事でも同様。この藁の発酵分解の時間が必要であり、新たに土を買わずにそこから出る荒壁土を確保し再利用を目論んだ為、早期解体を行ったのだ。


 平らに容易に削れるように、とグランドを整備する為のトンボのようなものに、壁を削る刃として鉄のアングルを先に付けた道具を作ってみた。しかし、あまり役に立たず。思っていた以上に荒壁は硬くまさに刃が立たず状態。仕方なくケレンを用いて地道にやる事に。



 砂埃がかなり舞う。丸一日やっても終わらない。冬を謳歌するような曲が流れるFMラジオを聴きながら。若さを謳歌していた時には想像だにしなかったまさかの土壁削り作業。
 お父さんはタオルを巻き、真っ白になる作業服で黙々と。しかし、防塵マスクを横着して付けなかった。天井解体などで連日埃まみれの上でのこの作業。真冬の上にこれで喉がやられてしまい、病気知らずのお父さんは高熱ダウン。土を寝かす前にお父さんが寝込んでしまった。