家屋伝承

我が子たちに伝えておきたい、伝統構法の我が家のこと。

湖畔の住居

 すると、対象物件数は増え、その中で目についたものがあった。最寄が奈良駅ながら少々距離はあるものの、土地面積、建物面積も、そして予算もクリアする物件。

 お父さんは、ネット掲載資料から掲載不動産屋に尋ねなくとも、所在地を90%ぐらいの確率で特定できる。しかし、この物件は確証が持てない上、当時の住居からは遠い奈良市内北部である為、掲載不動産屋に問合せを行った。


 他の奈良県内の不動産屋は、その掲載不動産屋の事を競売やら任売(任意売却)を扱っていたりして怪しさを印象付ようとされたが、バカにしちゃぁいけない。一般の方になら功を奏すかもしれないが、お父さん自身が競売をしていたので何ら怪しくない。昔は非合法団体が絡むような競売も、今ではかなり開けている。むしろ、そのような不動産屋には期待を持っていた。

 実際、お会いしてお話を伺うと、信頼はせずとも信用はして良い不動産屋に合致する条件ばかり。知古の業者氏は大阪府内だったので、今後奈良県内物件はこの不動産屋氏に任せる事にした。


 そして、検討物件に案内してもらった。地域の小さな公園が隣接していて、実際よりも敷地が広く感じられた。しかし、難点もいくつかあったりした。それ以上に、珍しくお母さんが強く反対した。雰囲気があまりよろしくないと。


 という事で、奈良の不動産屋氏は別候補物件を紹介してくれたのだが、これが良かった。

 車で10数分程度で奈良都心に出られる位置ながら、湖畔にある中古家屋である。周りは風光明媚、喧騒はなく自然に溢れている。ジョギングやサイクリングコースもすぐそばだったりする。

 敷地面積も良い具合、建物も同様。平屋建で改修もやりやすそう。お母さんが唯一と言っていい希望条件の「玄関が広い」という点も楽々クリアをしていた。

水場が近い為に建物への影響が心配だが、基礎がかなり高く造られているせいか特段の傷み具合は見られない。

 問題は、予算と売出価額の開き具合。
2,000万円を超えるのである。施工予算を減らしたとして、出せるのは2,000万円+取得諸費用。

権利関係を調べた。施工プランを立てた。業者見積をとった。施主施工も見積った。事前ローン審査も通った。そして買付申込を行った。が、却下だった。

 売りに出されて間が無い事、りょうすけがそろそろこの世に出てくる、という事で出産まで時間を置いて、それまでに売れていなかったら売主も値段交渉に応じてくるかもしれない、という希望的観測を持って家さがしは一時中断する事になった。
 

一時中断中も、奈良の不動産屋氏とは連絡を取っていたが、同氏曰く、失態を犯してしまう。それは、りょうすけが生まれてしばらくして家さがし再開し、さぁ、値段交渉をしようという段になって分かった。
 湖畔の住居が売れてしまっていたのである。