家屋伝承

我が子たちに伝えておきたい、伝統構法の我が家のこと。

漉す、そして泥水を煮る

 いざ実験。藁スサは勿論ながら、二回漉しなのに小石がかなり取れた。よしイケる、ときょうこに引き継ぐ。

 結果、極力藁スサを取り除いた小石量は、元の泥土の目測体積にして15%ぐらいになっただろうか。これらを鏝で取り除くとかゾッとするわ。小石問題は一先ず落着。

f:id:kaokudensyou:20180425185121j:plain f:id:kaokudensyou:20180425185205j:plain

 

 さて、次に抱く懸念。リグニン流出問題だ。

 藁から得たリグニンは、土壁の強度を上げる物と理解している。ただただ堅い物は割れやすいが、木質だけあって塩梅良い緩さの硬化剤ではなかろうか、とも想像している。また、リグニンは水溶性じゃないかな、とやはり想像している。インターネットで検索してみても確証は得られないが、今までの過程からきっとそうだと。

 

 中塗土を漉すには、その体積に匹敵する程の大量の水を要した。その後、上澄み水を捨てて来た。その結果、もしやリグニンまでも捨てているのではなかろうか。さらに、その泥土を再度漉した。一回目と同様に、また上澄みを捨てて良いのだろうか。

 二回目の上澄み水を見ていると、泥色が混じっている物もあれば、どうもその色ではなさそうな水もある。その色は、藁の灰汁抜きした時の水の色の系統っぽく見える。なので、藁からの色じゃなかろうか。藁から、と言えばリグニンかもしれない。

f:id:kaokudensyou:20180425185140j:plain←左:泥混入 右:泥ほぼ無し

 

 お父さんの頭でいくら考えても答えを出せそうにない化学の話。では、仮定の話で考えよう。もし流出させる事になるのならどうか。ただでさえ薄塗り。泥粒子と藁繊維と寒冷紗だけに頼っていいのかい。流出していないという確証がないのに、工期の問題だけで捨てても良いのかい。

 

 いんや、ダメだ。

 という事で、自然蒸発作戦を行う。外気接触面積を増やす為、バケツに小分け。それでも足りず、途中から衣装ケースも動員した上で、温室内に設置。だけども、二週間程しても大して減っていないように見える。時は肌寒さが残る初春。この間、当然左官はストップ。

 先が見えない、という事で強制蒸発に切り替え。鍋で加熱する事にした。

f:id:kaokudensyou:20180425185153j:plain

 

 リグニンは、60℃を超えると分解し始めるとの事。よって、指を入れても火傷しない程度の温度で行う。そうすると、これはこれで時間が掛かる。朝から晩まで加熱しても4リットルぐらいしか蒸発しない。こんな事を凡そ5日行った。この間、やはり左官はストップ。春の左官祭り、一体いつになったら開催出来るのだろうか。

 

 泥を漉すだけに留まらず、とうとう泥水を煮る事までする。どうだ、お父さんの拘りは凄いだろう。だなんて事を言いたいのでは決して無い。

 お父さん自身、無駄ではないかと常に疑いながらやっていた。一回目で流出させていれば、今回は残っていた僅かなリグニンを確保出来たかどうかであり、効果が如何ほどあったのか怪しい。一回目で流出させていないのであれば、この作業は全く意味を成さないし。

 将来、石膏ボード下地の土壁の補修等は十分考えられる事だと思う。もしその場合、最初から網目が細かい篩でちゃんと漉した方が良い。最もこれを言いたかったのだ。