家屋伝承

我が子たちに伝えておきたい、伝統構法の我が家のこと。

寒冷紗剥落実験

 さて、実験材は寒冷紗だ。

 お父さんは不思議だった。石膏ボードへの漆喰施工の下地材として、何故に寒冷紗が有用なのか。その名から何か特別な布なのか、と思いきや写真からも、そして実物を見てもガーゼのような華奢な網状の布。

 左官材の下地としての建材は、網目やら凸凹がしっかり。見るからに材が食い込んで剥落しなさそう。それに引き換え何とも頼んない。実際に、やり直しの為に塗って間もない漆喰を剥がした時、寒冷紗から綺麗に剥落させる事が出来た。

 

 だけども、1年は経ったであろう寒冷紗下地の漆喰は剥落して来ていない。塗材が硬化した事もあってか、ほんの少しの引っ掛かり、だけど無数にあるそれによる固着力は十分なのかもしれない。ならば、漆喰が特別とかではなく泥土も同様ではないか。

 そう考え、前年の春の左官祭り、元奥の間の小壁左官施工時に並行して行っていた。内容は、漆喰施工時同様にこんにゃく糊にて寒冷紗を板へ貼り付け乾燥、その上で中塗土を塗布。念の為、寒冷紗無しでの塗布もしておいた。それらが完全乾燥硬化してから落下衝撃を与えた。

 

 結果、寒冷紗無しの土は30cm程からの落下で剥落し出す。寒冷紗有りだとこれが1mでも剥落しなかった。

 1mもの落下でも剥落しないのにはちょっと驚いた。板の衝撃振りからして、アメフト選手が件の壁にタックルでもすれば別だが、そうでもなければ十分だろう。少なくとも自然剥落は無さそうだ。

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 それから凡そ1年、ようやく寒冷紗貼り実施。養生テープもOK。土漉しは、前年晩秋にお母さんときょうこにより終わっている。やっと全てが整った。試験施工箇所は、ダイニングとなる目立つ箇所ながら、施工面積が小さくやり直しがし易い所。

 

 そう、やり直す前提なのだ。だから、「試験」施工。と言うのも、所々にチリ寸が厳しい所がある。それと塗材の残量への不安だ。

 前者について、ある所に合わせると他のある所が寸足らず、というこの家での施工あるあるは致し方が無い。それ以外には、壁が無かった所に新設したり、設備や材の寸法との兼ね合いから、と設計上の自業自得から来る。

 

 後者については、設計変更を目論んでいる事による。具体的に書くと、設計上ではトイレ内壁は漆喰仕上げとしていた。度々書いて来た、土壁仕上げ施工へのハードルの高さからに依る。また、トイレ程の内空間では壁への接触が考えられる事からだ。しかし、設計者ではなく施工者視点が強くなっていた時期。トイレ内北壁と西壁には既存の土壁がある。これらも石膏ボード壁と同じく、わざわざ砂漆喰を施した上で漆喰仕上げにする必要がある。それがべらぼうに面倒で勿体無いと思い出して来ていた。

 

 トイレ外壁側である、ダイニング及び奥玄関廊下部は土仕上げ。そこは出来る前提で施工するのだから、トイレ内も出来るじゃないか。壁への接触も同条件じゃい。オマケに、漆喰だと必要な石膏ボードに施したビス孔埋めをせずに済みそうだし。

 そうなると、施工面積は倍近く増加。解体済の土を見る限り、足りるか微妙な量。そういった事から薄塗りを目論む。だが、これは元奥の間小壁施工でも障壁になった。