家屋伝承

我が子たちに伝えておきたい、伝統構法の我が家のこと。

繊維仕上壁の品位

 いざ施工。漆喰で培った施工法にて仕上げていく。まずは元奥の間の小壁狭小部への再施工。

 

 部分部分塗り法では、奥の間小壁の狭小部一面にコネコネコネっと凡そ30分。今回の通常法では、シャッシャッシャーと10分~15分。但し、泥の古色への固着を恐れて一面毎清掃並行施工。これを足すとやはり30分ぐらいになった。塗った傍から綺麗になるんだから、総施工時間を考えるとやはり早くなったのだけど。

 これを唯々粛々と続けていく。この間、先を見ない様に、何も考えない様に、ただ目の前の施工だけに勤しむ。

 

 次、繊維壁仕上げだった南側縁側への施工。今回の施工法と配合の変更動機区域に挑む。当域人工数は2人工弱。先の元奥の間と総じて5人工程だったか。

 あまり写真撮影をしないお父さんだけに、湿式施工中となれば尚更。何なら完成写真さえも縁側は撮り忘れ。毎度ながらそれは実物を見て頂戴。

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 ただ、一ヶ所の撮影はしている。元書院廻りの西側半間壁だ。

 ここの仕上がりは特にイマイチ。原因は水引き差と考える。当壁の大斑直しは部分施工。この大斑直し部での水引きは特段問題無かったが、削っただけの既存下地部の水引きがかなり強かった。水打ちにて対処をするも抗らえず。結果、仕上げ押さえ工程では差異が顕著。それは写真でさえ分かる程。もう見ない。動線から外れた奥の地、きっと竣工後も見る事無いさ。きっと無いさ。無い無い。多分、無い。

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 気にしていたヒビについては、追加珪砂か変更施工法か均一化になった下地か、何が功を奏したのか不明ながらほぼ皆無。一ヶ所だけ発生したものの、回避しようが無い弱い下地部の問題であり、補修でヒビ埋めしておいた。

 

 ネタについて惜しむらくは、篩いがけを省略した事。前回の同施工では行ったものの、大いに水仕事となる。気温低下中な事もあって、支障ある小石等は施工しながら除去すればいいか、と。確かに施工面では異物の事は許容範囲だった。だが、施工品質面ではちょっとアウト。前回と比べると繊細さが無くなって粗さがあるんだなぁ。別室小壁である既存との差がより著しくなった。

 

 施工代としては勿論、素人施工前提でやってあげたとしての施主からの謝礼を、当然かつ気持ちよく貰えるか、とは思い難いレベル。当施工では仕上鏝を落下破損。手間暇も考えると謝礼を辞退したら大赤字だわ。

 重要だが施工意欲だけでは駄目。全ての事柄に対してちゃんと整えて施工に挑まんと、左官施工は必ず粗が出る事をまた学ぶ。これを教訓として、と言うべき所。だが、クーラーや電設配管による欠損部という一部を残すも、土下地中塗仕上げはこれにて終了。残すは新建材下地での施工。多分これは難易度が下がるはず。中塗り仕上げは山場を越してしまったと思う。

 

 ところで、施工品質面と違って思った事もある。完成状態を見て、意匠的な素朴感が高まった気がする。

 お父さんが思うに、繊維壁は現代では不人気仕上げ。在来工法家屋でビニール壁紙にて漆喰や土壁風や、土壁家屋にてやはり漆喰や中塗にて本物土壁仕上を所望する施主は結構おられるように思う。が、新築だろうが改修だろうが好んで繊維壁にされる方は希少ではないかと。お父さんも例外ではなく、繊維壁は「そぐわない、好みでは無い」と当初から除去する計画。

 

 だが、繊維壁仕上げから中塗仕上げに変わった事を目の当たりにすると、前述通り素朴的になった。強く違った言い方をすると、格が下がった感だ。本職に繊維壁仕上げを発注すると当然施工費は上がるだろう。やはり上位仕上げなのだ、と対比による視覚で何故か初めて実感した。

 家屋の既存状態が伝統的な上位と言って差し支えないだろう完成形。これにわざわざ手を掛けるのなら下手な事はせずに全く変えないと、低位化、陳腐化しただけになる。家屋取得や設計時にそういう考えがおぼろげ以上にはあったが、当施工は意匠面でどうだったかを考えさせられるものでもあった。