家屋伝承

我が子たちに伝えておきたい、伝統構法の我が家のこと。

目地施工のトラウマが襲来す

 さて、次は目地施工。本番はタイル貼り、目地なんて副次施工に過ぎない、と思っていたが大間違いだった。

 

 まず、材について。

 タイルを白、となれば目地は黒。この家のモノトーンさから必然、とはお父さん。前宅白目地と現キッチン黒目地経験から、汚れの目立ち難さから必然、とはお母さん。グレーも候補に一瞬上がったが黒にてほぼ即決。

 

 しかしながら、本施主施工をしてからというもの、黒色というのはどうも意外と難しい色のように思われる。それまでは、黒色の建材を目にする事は珍しい事ではなかったが、どうもそれは化学の力のようだ。 

 代表的かと思うのが黒漆喰。以前に述べた通り、本来白い物を黒にするのは困難。漆黒という言葉があるように漆は黒色が多いものの、あれも自然物でただ普通に何かしらの漆を塗れば黒になる、のでは無い。当然省略するが、とんでもない工程の上で漆黒となっている。亜麻仁油と黒顔料があるとそれなりに黒塗料が出来る、という事でも無いと思う。試していないので「思う」とするが、真っ黒にする為には相当の重塗りは必要かと思う。松煙墨も必須か。その墨も黒顔料も自然色だが、それを作るまでの手間暇を結構掛かっているっぽい。テレビCMでも、本当の黒を出すのは難しそうな事を言ってたな、ちなみに。

 

 目地材も同様らしく、黒と謳っていても実際は暗いグレー色っぽい。これは薪ストーブ炉床敷瓦施工で確認済。案の定、当タイル目地施工でもグレー。どう見てもグレー。改めて施工要領文を読んでみる。しつこいぐらいに書いてあるのは「水」の事だ。やはり左官系の仕事は水だな、水。

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 この説明通りの配合で材を練るとかなり固い。素手で揉みながらでないと練られない。それも息が切れる程度の力技で、ちょっと水を追加したり。それでも大変。これを目地に充填していくのは結構手間であり、やっぱり力仕事。だけども、様子見がてらとした一面目の西側足元面終了時点にて、狭小部であるにも関わらず残材の硬化が進んでいる事が分かる。

 さらに水をちょいと追加して再練りという禁じ手。予想外の悪戦苦闘で、推奨施工時間を遥かに超える。この防汚機能黒色目地材、左官材のくせに結構な高額品である上、巷のそこら辺では売っていない。不足なんかした日にゃぁ余って上等、送料上等、の覚悟で再購入を迫られるのだ。

 

 ふうふう言いながらシンク前である二面目終了。流石に無理だと、三面目は粉を追加して再度練るつもりが断念、中途半端に余った材を破棄する事に決定。すぐさま目地材のはみ出し分を拭き取る工程に移る。

 しかし、これも上手く行かない。もう結構固まっている。水に濡らしたスポンジで拭くも、濡れ雑巾に切り替えて拭くも、なかなか取れない。やればやるほど目地充填部が汚くなる。水を増やすと色ムラになると要領文からの脅迫も相まって、水を用いて拭くと言うより、雑巾等で力任せで削っていく感じ。残業したものの施工時間終了。目地材に力尽きる。

 

 翌日、三面目、コンロ前を施工。その前に、シンク前の取り切れなかった目地材を金属も用いて削る。硬い物で削らないと取れなかったりする。本職はこんな事をしていないはず。こんな本職見た事無い。お父さんの遣り方が悪いはず。

 水に気を付けながら一面分だけの目地材を素手で練った上、素手にてとにかく充填。終わり次第、固めに絞った雑巾で拭き取る。もう目地材を残したくない、取るのが非常にしんどいから。しかし、白いタイルに黒い色の目地残りはよく分かる。取ったと思ったら充填した目地材がビヨーンと塗り拡がったりして元の木阿弥。いや、目地が削られるのでもっと酷い。ある程度にして拭き取り終了。急いで目地を目地鏝で均す。締まって来た、というより固まって来た時点での均しだった事もあり、二面目よりはマシになったがちょいと粗くなる。

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 次、最後の四面目、東側を施工。今度は、もう拭き取る事を放棄。後で頑張る。それよりも施工品質向上を目指し、水量厳密と鏝均しのみに集中。結果、一面目、二面目よりかは明らかに四面目が綺麗。色も黒い。だが、目地材の除去は苦行。固まったセメントを雑巾で削っていくような暴挙行為。

f:id:kaokudensyou:20180105165946j:plain←二面目:シンク前

f:id:kaokudensyou:20180105165933j:plain←四面目:東側

 

 タイルの加工と貼付には1人工未満。だがしかし、目地材関連では1人工強。6、7時間程ガリガリすると精神が薄弱してくるぞ。副次的作業だなんてとんでもなかった。

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 ちなみに、目地材除去は「酸洗い」と言って薬品を使うらしい。詳細は不明ながらこの言葉だけは何十年も前から知っている。本職はこの術を持っているからこんな大変では無いのかもしれない。

 しかし、施工面積が少ない一素人が、目地材をシュワシュワさせるようなその薬品を何とか入手して、色ムラを起こさず不要目地材除去をする、という事にハードルを感じて検討しなかった。代わりに、敷瓦にも当タイルにも雑穀酢を使用してみた。使用感は、水よりほんの少し取れやすいような気がせんでもない、だ。恐らく気持ちの問題だけだったんだろうな。