家屋伝承

我が子たちに伝えておきたい、伝統構法の我が家のこと。

お母さんも小便を立ってすればどうか

 さぁ、トイレ小窓をどうやるかに戻る。

 この施工の何が一番嫌かと言うと土埃とかではなく、外部仕上げが黒漆喰だからなのだ。黒漆喰と書いたが、明らかに塗装膜があり、と言って他部の黒漆喰の断面を見たら白漆喰と黒塗装膜の境が明確ではなく、正直な所よく分からん。だが、いずれにしても黒系仕上色の土壁を再施工するのはとんでもなく億劫で面倒で困難で。

 

 そういう心配が生じている理由は、以前に書いた土壁一部解体での事の所為。場所は薪ストーブスペース。元々仏間と収納があり、これを分ける土壁の下部のみの撤去を試みた。だが、期待していた横材である貫が無く、或いは貫はあったが重力に対して効いていなかったかのかどうか忘れたが、新たな横材を入れる前に残存したかった上部土壁が自重でずり落ちて来た。これの再現の可能性だ。

 

 当該壁のタッパからして、どう考えても貫は入っているはずだ。問題は、その貫とホゾ穴との隙間具合。本来、その隙間は楔を打ち込まれガチガチになっているはず。しかし、施工者の手抜きなのか時の経過なのか、緩くなっている箇所は複数見て来た。そうは言っても、楔が打ち込まれるのは貫の上部。貫自体はホゾ穴に載っている状態だ。普通に考えると、ズレ落ちる事は無いはず。だけども、その貫が痩せてしまった、または土壁の乾燥と共に貫との隙間が生じているはず。そうは言っても、竹木舞等で絡み合った土壁のみがズレ落ちるとは考えにくく、等々不確定と不安要素で素人お父さんは頭が一杯。ああああ。

 

 そこで、名付けて「仮設支持施工法」を考えてみた上で施工開始。まず、開口部をケガく。そして、毎度ながら再利用の為に塗層毎に剥離撤去。

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 ちなみに、部位名があったはずだが失念して久しい外壁板の上部見切り材、これの設置方法が全く分からない。納屋に引き続き、窓位置に係る為に当該材撤去を伴い切断。どう見てもただ差し嵌め込んでいるだけ。こんな部材を曲げて嵌め込む事など不可能。となると、やはり柱の建て方時かじゃないと取り付けられないと思うんだがどうだろう。

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 そんな謎を横目に縦板だけ残して土壁と、土壁断面から10㎜程出る様に竹木舞を撤去。窓上枠材取付用のホゾ穴を掘っておく。

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 さて、ここからが試練。上部土壁に孔を掘り壁内縦板にアクセス。そして、当部と露見部の縦板に、事前に作った支持材をビス固定。そして、縦板をやはり土壁断面から10㎜程出る様にして一部切断。

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 その上で、縦板と竹木舞が嵌るように溝を掘っておいた窓上枠材を右側はホゾ、左側は角栓で固定。そして、支持材撤去。計測の結果、確か2㎜程下がったかと思うがこの程度なら支障ない。ちなみに、目測で上部土壁重量は50~60kg。この程度ならホゾ等で十分支持され問題ない。在来工法なら地震が来ればアウトとだろうが、伝統構法なので抜けないと思う、多分。

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 視界に入る度に溜息が出るぐらいの、長らく懸案だった土壁開口作業を無事に終えられた。後は残す作業を粛々とするだけ。

 窓上枠と外壁との収まりは、外壁の一部撤去に伴う汚さは予見出来ていた。しかし、予め何から何まで、というのも難しいので土壁落下を回避出来てから現場合わせでする方針とし、枠と壁をほぼ面一にするようにしておいた。幅広い材が無かった、解体材を使いたかった、という事もあるけど。というわけで、別材を真鍮釘で取付。

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 窓下枠も壁内縦板と竹木舞、さらに外壁板材が嵌る様に溝を掘った上、木製サッシに備えた加工を施した上、上枠と同法にて取付。今まで外壁板材があった所の孔溝は埋め木。以上にて、古色塗装を残し完成。

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 仮設支持材作り等含め、施工時間は2人工~3人工程だったか。その前の悶々構想時間だけで1人工は要したんじゃなかろうか。溜息期間なら1年以上か。あぁ、ほんと、やっと終わった。流石に感慨深さを味わったわ。小便する度に思い出しそうな程だけど、言い出しっぺのお母さんには共感してもらえんだろうなぁ。