家屋伝承

我が子たちに伝えておきたい、伝統構法の我が家のこと。

刃物道具

 久方ぶりの大工工程で、久方ぶりに刃物砥ぎを行った。ちょっと前までは鏝と格闘、次は鑿と鉋。

 左官職からは怒られるかもしれないが、鏝の手入れは特に無い。本当はあるらしいが、綺麗にさえしていれば特段早々に不都合が出無さそう。出ているのかもしれないが、お父さん如きでは分からない。

 片や大工道具に多い刃物系は違う。手鋸や丸鋸の刃でさえ素人にも鈍らになってきたかが分かるのだが、鑿や鉋なら尚更だ。よって研ぐわけだが、砥ぐと仕事が早くなるのは勿論、サクッと切れるとすこぶる気持ちが良い。この快感は一体何なのだろうか。

 

 木の繊維を割くのではなく切る場合、刃の状態がもろに影響する。割く場合は多少鈍ら状態であっても然程問題無い。しかし、切る場合、又は割くとしても綺麗さを求める場合は違う。作業効率が落ちる事は勿論、綺麗さを求めずとも精度が落ちる。思った所に刃が入って行かなかったりするからだ。

 これらは鑿に限らず、価格や鋼材の種類や品質に関わらない共通事項ではないか。高価な刃物とそうでない刃物の違いの一つは、その切れ味が落ちにくいかどうかではないかと思っている。腕はその次かとも。

 

 そんな知った風な事を書いているお父さんだが、施主施工が始まって暫くの間、刃物についての知識はほぼ皆無だった。

 設計期に思い至った狩猟。ならば、とふるさと納税の返礼品に選んだ「肥後守」というナイフ。狩猟用ナイフが当時は返礼品リストに無く、まずは取り敢えずででもナイフをと申し込んだのだ。

 「肥後守」というのは何となく聞いた事があった、という程度の認識。お父さんの小学生時代では、鉛筆削り用として宛がわれたのは全く違う形状のナイフだったが、お父さんより上の世代はナイフと言えば「肥後守」だったらしい。

 

 しかし、刃物は危ないとかアホで下らない事を言う母親でもいたのだろうか何なのか、今時は配給されないようで。そもそもお父さんの時代でも手に触れる事がなかったのだから、「肥後守」は相当廃れてしまっているようで、生産者も生産数も僅かになってしまっているらしい。

 だが、伝統的で上の世代の方にはとてもお馴染みで実績あるナイフっぽい「肥後守」。それはそれは優れた物かと期待していざ手に取り試し切りしてみると、全くの鈍ら。なんじゃこりゃという具合であり、オルファカッターの方が遥かに切れてしかも安い。そうか、子供が使ったりする刃物だから、この程度の切れ味にしているんだな、と落着。箱の中に収納。その箱を段ボール箱に押込み。

 

 鉋と鑿で迷走した上で使用を重ねたり、ベテラン猟師の動画で狩猟ナイフの勉強していた数年後、ふと思う。「あの『肥後守』って、『直ぐ使い』やったんかも。」と。そう、お父さんは「直ぐ使い」とかの言葉さえも知らなかった。

 どこかに押し込んだ「肥後守」を探し出し、刃先を見て愕然。明らかに「直ぐ使い」ではない。お父さんレベルが砥いだだけで、それはそれはスパスパ切れる。もうスススーでスッパンスッパンだ。

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