家屋伝承

我が子たちに伝えておきたい、伝統構法の我が家のこと。

謎の木紛

 改めて古色塗り直しをした数週間後。ある部位の孔から木粉が垂れ落ちている事を発見。場所は、リビングと薪ストーブスペースとの間、欄間垂れ壁上部にある曲り梁の中央上部付近。

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 この梁の樹種は、用途と形状からマツじゃないかと思っている。以前に書いた、工務店の逃亡社長が連れて来た棟梁が、二階床板が雇い実加工かを考慮せず剥がしてしまい部分破壊した話。この時に、奥の間の竿縁天井内に隠れていた当該梁を目視確認。複数の虫孔と、それに伴う零れ落ちていた木紛を見ている。

 

 他材でもキクイムシか何かの虫孔を確認している。刻苧で埋めたキッチンシンク前の柱然り、他の柱にも一ヶ所発見している。後述するが、南側縁側と居室間の差鴨居にも複数の孔がある。

 柱材に関しては、製材時点では出来ていなかった孔かと思われる。表面を薄く残して孔道が出来ているからだ。曲り梁や差鴨居については、何故視認出来る孔があるのか、お父さんには見当が付かない。共にマツと思われ、虫の種類や虫の喰い方が柱材のものとは違うかもしれない。竣工時には視認出来る孔が無かったかもしれない。

 

 ま、いずれにしても、大した問題にしていなかった。

 と言うのは、まずキクイムシ等がいた事は仕方が無いと思う。それに対処する一環でもある人工乾燥法が主になるのは後年の事で、戦後間もない建築当時は天然乾燥が主じゃないか、そうなると熱殺という方法自体が無い。伐倒時期等により虫を減らす等の方策はあるらしいが、それは減らすのであって皆無には出来ないかもしれない。ましてや戦後間もない木材枯渇期。伐倒時期の調整等は困難だっただろう。現代の細い柱の家屋にて虫孔があったら、人工乾燥費用を施主が負担しているという事も合わさってクレーム必至。

 そして、そもそも伐倒から何十年経っているんだ、という話。

 乾燥方法が何であろうが、材はとうに十分乾燥している。白蟻の場合、水を運ぶ能力がある種がいる。この種の白蟻は非常に厄介だそうだが、キクイムシでそのような事が出来る種はいないだろう。となると、子孫を残し続けて生存なんて出来ないだろう。とっくに絶えているはずだ。

 

 と思っていた。その考えが揺らいだのが、つい先日に拭きとった箇所にある木粉零れ跡の所為。間違いなく拭き取った、古色を塗るから。間違いなく新たな零れ跡、古色の上に乗っているから。

 

 これをどう捉えたらよいのか。

 孔に溜まっていた木紛が何かのキッカケで、自然に零れただけ。そうは見えなかった。人為的にも見えない。虫のような小動物が外部に出したような跡。じゃぁ、まさにキクイムシ等じゃないのか。だとすると、何故70年強掛かっても曲り梁を食い尽くせないのか。

 改めて調べてみると、家具等にも付いていたりするらしい。という事は、乾燥材等の水分云々は安心材料ではないかもしれない。周囲のその他の部材にもいて、当該曲り梁のような、つい最近まで天井裏という暗い空間にあり、製材等の加工がされていない無垢材だから、虫は気軽に外部から容易に見える孔を開けた。うむ、無理が無い推察のように思える。

 

 もしそうだとすると、完全治癒は材の取り換えか。それは手の付けようが無い。という事で対処療法で行く。まずは要観察。引き続き木紛が出て来ないか気にしておくのだ。もし粉が出ていたら、孔へ殺虫剤噴霧だ。今回、一応噴霧してみた。  

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 ただ、当該曲り梁は露出材かつ古色塗装にて、虫が居ても今後は表に出て来ないかもしれない。そして、知らない間に材の強度が落ちていく、という事態になるのかもしれない。

 という事で、特に二階の壁にも留意しておこう。心配すんな、当該梁や周囲の材が弱くなってもそんな簡単に倒壊等しない。その前に、二階の左官仕上壁に亀裂が入ったりサインがあるはずだ。変な亀裂が入るようになれば、水平垂直等を測ってみるとかしてはどうか。真っ当な大工職であれば、補強修繕は可能な施工内容だ。と、後世へ申し送りさせてもらう次第。