家屋伝承

我が子たちに伝えておきたい、伝統構法の我が家のこと。

メダカの前で漆喰材を見直す

 六回目に来て前進したような、はたまた停滞か、或いは後退したような。漆喰検索していると、施主施工者の方の事例に当たる事がある。チラッと拝見すると、やはり新建材壁にシーラーやらプライマーやらを用いたり、そもそも漆喰ではなく漆喰調の材を用いたり。そのお陰だろうか、左官施工が猛進してたりする。

 葛藤等により精神的に悪いので他施主施工者の記述は見ない様にしてきたが、やはり誘惑が多過ぎてイカン。漆喰やら伝統的工法やら長寿命やらを断念してからお世話になろう。

 

 工法が同じ志向、所謂、伝統構法家屋においての伝統的工法同志という人は、棕櫚刷毛を紹介されていた御仁お一人だけ。いや、同志と言うのは臆がましいか。お父さんは石膏ボードを使ったりするんだから。その御仁はお父さんより遥か上方。ではその方以外、たかがお父さん如きより施工法等に拘る人は如何程か、となるとついぞインターネット上では見付けられなかった。御仁のサイトも今や見付からず。当然ながら相談出来る人もいない。

 そういう事もあってか、一回目以降から既にメダカをボーっと眺める事が多くなった。家畜魚がお友達とは、お父さんも焼きが回る。

 

 時は五月。メダカが大いに活動するようになった。かなり増えたのに春先までに結構死んでしまった。しかし、回収死体の数からして減り方の数が合わん。ヤゴらしき水生昆虫のせいかもしれない。ボウフラ駆逐家畜としながらも活躍しているか甚だ疑問ながら、新たに二匹追加し合計四匹。エビも二匹追加。喧嘩をしないか、雌雄不明の為に産卵有無確認を、ヤゴ駆除を、と観察。

 

 漆喰の乾き具合を観察する為に施工時間が制約されている。りょうすけの幼稚園の送迎が絡む時間には施工せずに待っておく。観察中は集中を要するような他の施工が行えない。諸々時間を持て余す事が手伝ってメダカ観察が増加。

  もしかしてその逆、漆喰に悩む事から逃避する為に家畜魚を日に幾度も眺めているのかもしれない。そして六回目後に、メダカを眺めながらふと思った事がある。ヒビが出来る不具合など、初歩的段階にしか思えない。技量以前に材料が違うんじゃないかと。

 

 美しさや強度、それらを何十年も維持させる寿命。これらを実現させる事こそが左官職人の成せる業。度々書いた様に、そんな事は嫌と言う程承知。国内外で活躍する有名な方は、三年目で賞を貰うようなレベルだったらしい。そういう特異な方は別として、十年でようやく一人前という世界らしい。それをお父さんが昨日今日で出来るとは思っていない。

 しかし、施工直後のヒビは果たして素人が故なのだろうか。鏝技術で完全にどうこうする類の物でないような気がしていたのだ。

 

 塗りが速くて綺麗で正確な事は、水引きに対して有効だろう。工期にもだな。お父さんの場合、鏝に一時間も要していても水引きには追いついた。工期は勿論無い。諸々妥協してみると、後は「押さえ」に関する事に概ね集約するのではないか。そして、三回目のヒビ数の激減は、塗り方を変えた事による鏝速さよりも、材調合を大きく変えた事が要因ではないのだろうか。

 そんな事を沸々と思っていた事を踏まえ、メダカを眺めながらふと思ったのは購入漆喰材の事。これも漆喰に違いないものの、素人向け新建材壁用に調合された品ではないのか、と。販売業者サイトでは「土下地へは使用困難」等の注意書きは無いが、現代常識からしてそもそもそのような事は想定していなくとも無理はない。

 

 具体的に大きな疑問として残っていたのが、糊スサの配合量の差。

 購入品は空練り済ではなく、糊スサはそれぞれ別梱包をされている。お蔭でその分量がハッキリしている。その上で、以前から参考にしていた前出の建築事務所サイトでの本式漆喰の配合と比べ、糊スサがかなり少ない。糊は重量比半分以下。スサに至っては、同数十分の一といった具合。

 ただ、これら数字だけで単純比較がお父さんには出来ない。糊に関しては、本式のそれは煮出し物の為、重量は恐らく乾燥加工した海藻のままの物と推測。という事で煮出された糊の重量は不明だし、自然物だけに粘度の違いもありそうだし。板ふのり、となるとさっぱり分からない。スサにも種類や長さの違いがあるし。

 

 いっその事、同量近くしてみれば良いとはならなかった。糊やスサが多過ぎると不具合を起こす、という記述が足枷になっていた。購入品は実質調合完成品として売られている。そこに数倍、数十倍ともなるそれらを入れる事に躊躇いもあった。よって、施工練習をしながら並行して調合実験をしてきた。

 比較的重量差が大きく無かった糊は追加投入。三回目以降は多いかもしれないと思うぐらいになったが、それも正解は分からない。一方、スサは倍増しても、元が少ないだけに増加重量は二桁グラムに過ぎない。参考記述では数百グラム台。おっかなびっくりの増加では依然大差。

 

 しかし、購入品がシーラー等前提の新建材下地壁品とするならば、おっかなびっくりしていてはゴールになかなか到達しないのではないか。と思うに至ったが、過剰投入による不具合懸念以外の問題もある。

 それは、糊もスサも値が張る事。違う角度で言うと、購入品が既に高額だっただけに、そこに新たに大量の糊なりスサなりを要すると、それはそれはもう。

 メダカで脳が休まった事でもしかしたら解に近づいたのかもしれない。しかし、今度はお金が足に絡みついて進めない感じ。くぅぅぅぅぅ、新たなストレス。