家屋伝承

我が子たちに伝えておきたい、伝統構法の我が家のこと。

だけど糊を侮ってしまう

 二日後、新たな疑問。張って置いた水はどうするのだろう。

 購入先サイトでは、余分な水は捨てろと書いてあった。しかし、この水は捨ててよいのか。糊が混ざっている水じゃないのか。それを捨てるという事は、糊の含量が減るという事ではないのか。よし、混ぜてしまえ。

  お父さんはそうして再び練った。すると、当然ながら漆喰粘度はユルユル。柔らかめのホイップクリームから、溶けたチーズに様変わり。鏝板に乗せると流れこぼれそう。鏝で取る事が出来ずにただ付着させる感じ。こりゃダメだ。

 

 何をとち狂ったかと思うだろう。しかし、湿式材をお父さんは知っている。後学の為にも一応やってみて、もしダメならまた水を取れば良い。そういう算段がちゃんとあったのだ。水を取る方法はお馴染みの沈殿法だ。暫く置いておけば水以外が沈んで、相対的に水が表面に浮いてくるのだ。その際は、糊が多少減るのは仕方が無いだろう。

 浮いて来た水が集まって溜まるように窪みを設けて置いた。が、いつまで経っても水が出て来ない。ただただ漆喰表面が乾き気味になっているだけ。

 

 やってしまった。よくよく考えると糊が入っている。水を材に留める糊が入っているのだ。沈殿して水が浮く、なんて土材のような事にならない。例えるなら、プレーンヨーグルトを保管していても、水とその他が沈殿分離しない感じ。やっと自分がとち狂った事をしたと確信。

 しかし、捨てる事なんて出来ない。王道対策としては消石灰を追加するのだろう。しかし、今回は実験。こんな自分に、高価な当材を実験用にまた使いたくない。そもそも、追加消石灰がダマになりそう。

 

 じゃぁ、強制乾燥だ。という事で、漆喰を屋外に持って行き日光と外気にあてる。

 不安なのが粘度の臨界問題。急に粘度が緩くなるなら、急に粘度が高くなるのではないか。まぁ、それは良い、また水を足せば。これ以上に不安なのが硬化開始問題。こうなるとどうしようもない。乾燥した消石灰は恐らく硬化反応が始まるはず。

 全作業停止。適時、漆喰を攪拌する事に。その日は快晴かつ過乾燥。水を蒸発させるには良いが行き過ぎそうで怖い。よって、付きっ切りで漆喰に張り付く事にしたのだ。

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 作業服ながらほぼ何もせず、天気が良い日に外でじっと座る。お父さんの人生の内、こんな日はあっただろうか。退屈が過ぎる。

 よしならば、と読みかけの書籍を手にする。ほぼ同郷で同じ学区育ちの直木賞作家、西加奈子著の小説。休日日向で小説に読みふけるお父さんを見て、お母さんは幸せを絵に描いたようだと表していた。まぁ、確かにそう映るだろうな。己の愚行によりひょんな事から穏やかっぽい読書日に。だけど心中は全く穏やかじゃない。

 

 粘度が上がり始めたがそれ以上は怖く、また全作業停止をしていられないので、後日暫く屋内にて適時攪拌を継続。結果、6日を要した。自業自得ながら前途多難。