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家屋伝承

我が子たちに伝えておきたい、伝統構法の我が家のこと。

たかが糊、されど海藻糊

 そして最後に、糊の事。これは今までの土壁に無かったな。 いや、正確に言うと、藁からのリグニンがこれを担っていたのか。土佐漆喰と同じくで。スサを麻と称した物や紙の繊維をスサ材として使う場合、別途で糊成分を要するようだ。

 この目的は、消石灰の細かい粒子を纏める事で塗り易さを得る事。そして水引き抑制、糊が水を留めるとの事。

 

 糊となると化学技術のお得意分野。そんなわけで、漆喰用の糊としてよくありそうなのは、メチルセルロースというものらしい。

 セルロースというのは、地球上のそこらかしこにある炭水化物らしい。確かに聞いた事がある。さらに、メチルセルロースは保水や増粘等の目的としての食品添加物。漆喰の水引き抑制に打ってつけ、かつ安心っぽい素材だな。

 

 だがしかし、これが非自然素材だとやり玉に挙げられる対象となる。まぁ、そう目くじらを立てなくても良いと思うのさ。外食は当然として、そこら辺の普通のスーパーでしか買い物出来ない所得世帯だと、既にどうせ山ほど口にしていると思うのさ。米や野菜を自然農法で完全自家栽培、ヤギの乳等からチーズを作ったりして自家加工、酒税法をかいくぐったどぶろく造酒、とかでもしない限り避けられんよ。

 

 余談だけども、そのような自然農法等も現代では限りなく困難だ、という事を聞いた事がある。昔の人はやっていたんだから人力労働さえ厭わなければ、と思っていたお父さんは認識不足だったようだ。と言うのも、昔と今の土は違うからと。

 山には広葉落葉樹等があり、その栄養分が川に流れて農地に引水、時には川が氾濫して供給される。結果、農地の土は肥料や農薬が特段不要な状態に自然に維持されていた。要は、災害も自然の営みであり全体的にバランスが取れていたと。だけども現代はそうでないとな。

 という事もあって、一部の事象だけを見て現代社会を批判する事に対し、批判的かつ懐疑的、また視野狭窄ではないかと訝しさを抱くようになった現代人のお父さん。自然素材ばかりのこの家屋の本施主施工を通して、却ってより一層そう思うようになった。なので、メチルセルロースで現代漆喰事情を凌ぐ事にも寛容。

 

 ただ、供給面や価格面、性能面でこれに頼らずに済むなら話は別。それが海藻糊。

 海藻糊にも種類があるらしく、お父さんの分かった限りでは布海苔とか角又とか銀杏草とか。昔は普通、現代は職人や条件次第で、現場で海藻から糊成分を煮だして作るそうで。この海藻にしても、何も生のままで現場に持ち込むとかではないらしいぞ。ちゃんと加工者がいて諸々の手間暇をかけて製品化して、それを職人が仕入れてと。いやはや、糊一つで物凄い工程。

 

 でも、素人向けに、はたまた現代の工期に縛られる玄人向けにも、煮だしてどうこうではなく粉末化されて水に混ぜれば使えるという優れものがある。煮だした物と水混ぜ粉末物との違いは知らん。だが、販売業者氏は、海藻産地の供給問題から新潟県産から北海道産に切り替えた旨を書かれていた。あくまで海藻糊に拘る姿勢。

 

 国内自給が出来る資源の為か消石灰自体は、ビックリするような価格では無い。麻スサも種類に拘らないと割高感は然程無い。しかし、海藻100%の糊の市販価格はそこそこする感じ。それら総じた事からか、購入した漆喰は少々高め。だけども当時、その購入先の拘りと熱意具合等々はよく伝わり、言うならば顔が見えるような安心感を覚え、また応援の意味も含めて購入した次第。