家屋伝承

我が子たちに伝えておきたい、伝統構法の我が家のこと。

いつか来た茨の道

 ヒビが出ない、かもしれない方策をお父さんなりに考えてみた。

 

 一つは砂を追加する事。泥の粒子の割合を減らすとも言う。泥を減らせば含水量は減る。そうすれば乾燥収縮が減る。感覚的に分かるかと思う。荒壁から仕上げに近づくにつれこれを実行。実際にヒビは減って行った。

 そう思いついたものの不採用。既存解体材の配合が不明な為、砂を増やす事を不用意に行わない方が良いのでは、と考えた。また、脆くて砂がポロポロ落ちる壁にならないか。それに、他の既存小壁と表情が変わるのじゃないか、とも。

 

 既存解体材の配合をあまり変えない、となると残す案は既存材を漉す事。小石を可能な限り除去する事で、薄塗りを可能にさせる。薄くなれば含水量も必然的に減る。塗った材の乾燥過程での可動域も減る。塗り易くなる事で水引きに追いつけるかもしれない。

 

  ただ、漉す事は最後まで躊躇った。母屋二階中塗用で経験済の大変な作業だからだ。ここで大いなる寄り道。あぁ、ゾッとする。あぁ、面倒臭い。

 しかし、砂追加案を行うとしても小石等入ったまま。5㎜厚以上になる事は変わらずだが、塗り代をそこまで取られていない。実験施工中にも躊躇い迷う事一週間。もうやる事にする。

 

 やった事は母屋二階用と大体同じ。その際は荒土プール内で行ったが、そこまでの量ではない上、まだ寒さを感じる日がある時だったので屋内にてトロ舟内で実施。お父さんは勿論、お母さんもきょうこも総動員。りょうすけはいつも通り「手伝っている」風。

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 当作業にて、砂、泥、藁スサ、そして小石等不要物を全て分離。全部が面倒だがその中で最たるものが、藁スサに絡む小石等の除去。母屋二階用は所詮は下地材、余程の物だけの除去で済ませた。当材は仕上材。ヒビにも過敏状態。よって、兎にも角にも全部除去を目指す。

 これがすこぶるしんどい。乾燥させた藁スサを細かくバラシながら、その中にある異物を取り除いていく。当作業は三回実施で凡そ6人工だが、その中でこの藁スサ内異物除去だけで4人工弱は掛かったかと思う。本当にしんどかった、腰と精神が。

 

 また、過剰な水の除去も要する。こればっかりは時間任せ、天候任せ。水を流せば泥まで流れるので、沈殿具合を見ながら世話をする。一回の材が出来上がるまでに凡そ一週間。一つしかないトロ舟を用いて主にお父さん一人で行っているので、左官作業との並行を完全には出来ずタイムラグが発生、その間は施工ストップ。

 

 疲弊はするわ、工程は大いに狂うわ。そういった事を予感したので避けたかった方策。本職はどうしているのだろう。由良川砂の精度からして、購入材でも漉す必要があるんじゃなかろうか。それらを踏まえた塗り代を設けているのか。はたまた、塗り厚やヒビに振り回されない華麗な材配合や鏝技術により不要な工程なんだろうか。謎のまま施主施工が終わりそうな予感。お父さんの嫌な予感はそこそこ当たる。