家屋伝承

我が子たちに伝えておきたい、伝統構法の我が家のこと。

伝統構法長期自然材多用施主施工の特有スキル

 単なる家主と違って見れば見る程萎える長押。では残そう、と思うのは施主施工者として自然な心理だと思う。但し、どう残すかがまた検討課題となる。と言うのも長押裏が見える改修だからだ。

 それは階段の存在。今までの2m未満の生活視線なら気にならなかった箇所が、縦動線の出現でそうはいかなくなる。長押の裏は大きく隙間がある。そこには、それはそれは埃等々が溜まっている。もしかして、ゴキがコンニチハしてくる映像が目に入るかもしれない。入られると殺虫剤を居室高所でふりまくるしか手が無い。

 もう埋めるしかない。万が一、家屋の為にわざと開けられている空洞だとしても。

 

 さぁ、どうやって埋める。隙間の大小関わらず、まさかコーキング充填などは有り得ない。埋める事自体が愚行でも、こんな所にコーキングは最高位な愚の骨頂。埋める材代表格のコーキングを否定すると選択肢は土しか思い付かない。という事で、梁束梁貫仕様云々の遥か以前の平成28年真夏に荒土プールにて準備開始。

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 その後の中秋の頃、紙を詰め始める。その後の工程である繊維仕上げ剥がしと中塗土削りの際、それら壁から落とした物が長押裏に入っていくのを減らし、さらに取り易いようにする為だ。それに、充填土による重量増加を少しでも減らす為。特に欄間壁は、言っても厚みが大して無い鴨居材三本と吊束っぽい縦材一本による壁だから。同時に充填土の節約も。これらの為、何か月も前から梱包緩衝材として届く古新聞を蓄えておいた。隙間が狭い所はそのまま土を充填する。

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 長押対策はこのように何ヶ月も前からの計画なのだ。片や梁束梁貫仕様への変更は急遽だが、これだって以前から悶々していた事案。

 書面にする気が起きない程の許容を超える膨大な工程表内容が、書面にしていない所為か脳内で撒き散らかされている。その状況下で、懸案事項とされている設計や施工は山程あるので、時に脳内が混乱したり短絡して停止したりする。そんな中で先の工程を見付けて、それを見据えて段取りしていくように努める事を要される。急遽の変更等があっても、その殆どがそのような長らく懸案検討事項としてあったもの。本当に急な計画というのは数少ない。この長期施工生活下において、夏は海に冬は温泉にとか家族旅行を計画しようとは沸き立たない。んんん、言い訳かな。

 

 工程管理を業務とする現場監督のような本職は、経験を重ねる毎に脳内処理速度が鍛えられてお茶の子さいさいかもしれない。天候は基より、関係者の勝手な都合にも対応する能力が高い人は所謂、出来る監督だ。以前にも書いただろうか、素人施主施工者の多くはこの経験が無いか、お父さんのように極々僅か。規模が大きく工程工種が多い程、この工程管理等は結構な負担業務。本職依頼を嫌煙する一つの要因となっている。

 しかし、お父さんが知る限りインターネットで見る施主施工者の方々の多くは、施工のお披露目が殆ど。一部の方は設計について触れていても、工程管理についてはほぼ無く、記載があっても結果内容の完成形の類のみか。そのような素人も本職も施工のような書き応えある物と違い、工程管理等は書くに及ばずとの認識か。読み手にしても読み応えがないのかもしれない。

 

 昔と違い今のお父さんは違うわぁ。度々書いてしまっているが施工内容には興味の無い物が多い、特にプラモデルな在来工法については。そんな事よりも工程管理や資金や人工等の事の方が関心事で興味があるし学びを探す。自然材相手ばかりの伝統構法家屋の長期施工をしているとそれらが重要になるが、それらをしている人が絶対的に少ないから仕方ないわな。

 

 伝統構法を世界文化遺産にして盛り上げよう、という活動をされている学者や本職の方々がいる。その団体に暗に意見を述べた事がある。本気で伝統構法復活を考えるのなら、遺産とかよりも施主施工という選択肢を確立する事が必要だと。勿論完全無視されているのだが、もし採用されたのなら工程管理の雛形や費用目安表等が本職方によって作成されるかもしれない。そんな魂胆は実現しそうに無い。

 ブログアクセス数等を気にしないが、古民家先輩のブログ公開主旨に共感して公開だけはするお父さん。自分が興味あり伝統構法を残すには必須だと考えるので、素人による設計や施工法に付け加えて工程管理的な面で試行錯誤してきた事ばかり書く。一方で、読み手のウケが良さそうな施工についてはあまり書かないんだな。それはお父さんよりは読み手に優しい古民家先輩にお任せ。