家屋伝承

我が子たちに伝えておきたい、伝統構法の我が家のこと。

立ち塞がる日本建築様式材

 梁束梁貫仕様に決定したとしても、全体的には間違いなく伝統的日本建築様式の破壊中な事には変わらない。破壊話の流れでもう一つしておこう。それは「長押」について。「ながおし」と書いて「なげし」と読む。木地のままで鴨居の上に付いている板材を指す。

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 これは一体何なんだ、と検索した事がある。元々は構造材だが後年は意匠材との事。鴨居上部位置に取り付ける事で鴨居材の見付高の低さを補う材。まぁ、平たく言うと、座って見た時に鴨居辺りが立派な材に見えてゴージャスな印象を与える。お父さんはそう解釈した。

 ここで疑問。そうかなぁ。

 材を太く見せたい、と言うならば何故本当に太い材を入れないのか。特にこの家に関しては、本職含めた詳しそうな方複数人から、そこらの文化財家屋よりも立派な材がふんだんに使われている、と言われている。長押を上回るゴージャス材を使用するのは、この家の初代当主からすると間違いなく容易い事。それに、太く見せるのなら何故に古色塗装の鴨居と同色にしないのか。明らかに長押は後付材としか見えず、鴨居が立派とは特に見えん。

 

 そういう太ければ同色であれば、という単純な観点では無いのだろう。問答無用の様式というだけでも無いとも思う。大工職の仕事がそれだけされている事が重要じゃなかろうか。きっとそうだ、多分そうだ。実際、現代の大工職曰く、長押は大工職の仕事ぶりを表す一つの指標らしい。まじまじ拝見しても無駄な部位とは思わない。

 単に家主としてはそれで充分だが、本施工の施工者としては不足。特に必要な内容は、どうやって取り付けられているか。これがイマイチ分からない。隠し釘なんて無粋な物は勿論無い。実物を見回っても、インターネットで検索してみても。長押の裏側は傾斜が有り、固定にはこの裏側に何かしら手が入っているっぽいが、詳細がやはり分からない。

 

 さて、この扱いをどうするか。山ほどある懸案事項の一つだった。取り外す事は可能だろう、鋸刃を入れれば。問題は柱や梁等にどこまで切り欠きが入れられているか。取り外すとこれらを綺麗に埋め木しないといけない。見た感じからどのように取り付けられているか分からないという事は、相当の切り欠きが入っている可能性が高い。今までのパターンからするとそうだ。

 さらに面倒そうなのは、欄間が入っている元奥の間南北小壁の長押に隠れた部分が空洞なのだ。その空洞には長い鉄ボルトが横渡っているのが見えた。柱間を固定すると言う差鴨居の一役割を担う為の材なのだろうか。何にせよ、そのデカイ空洞を埋める必要がある。どちらが良いかではなく、どちらが面倒さが少ないかという後ろ向き検討が続く。