家屋伝承

我が子たちに伝えておきたい、伝統構法の我が家のこと。

遺産樹についての遺言

 ドングリから育てたこのシラカシ。もしかしたらアカカシかもしれないが、多分シラカシ。最樹高のものはとうとうお父さんの身長程になった。なので多分、この手記にてこのシラカシの事を書くのはこれが最後になるのではないか。という事でこの機会に遺言しておく。

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 スギやヒノキのように大体真っすぐ育って行かないと思われるカシ等の広葉樹。これを伐倒する際は保全活動団体においては「特殊伐倒」とされて、お父さんが呼ばれる事度々。針葉樹よりも難しいし処理手間も掛かるのだ。本職からすると特殊でも何でも無いと言われるかもしれない。しかし、家屋に隣接していたり電線が近かったりとなると、正真正銘の特殊伐倒となるはずである。単純に木元に刃を入れて倒せば良い、という事にならないかもしれないからだ。人が樹にある程度の高さまで昇った状態のままで一部を切り落としたり、クレーンで吊しながらの作業を要したり。

 

 このような事案は在る所には結構有る。薪材需要が無くなってそれ用に植えていた樹が、または単純に管理が行き届かない為等で大木になってしまったとか。問題化するのは自然倒木ではなかろうか。公有地でも起こっているが私有地なら尚更。実際にあわやもしやという話は身近にあった。

 また、保全活動団体活動地でもこれに対処する為、まだ倒木経験がチェンソー研修で針葉樹数本しかなかった未熟なお父さんに白羽の矢が立ち、崖の際に生えるヤマモモの大木を伐倒した事がある。自然倒木、というか根ごと抜け落ちるんじゃないか、そうなると死人が出かねないという事での実施だ。樹の重心バランスに反した目標伐倒方向。自身の立ち位置と逃避経路の確保が難しい中での結果、その10m程の直下にある小屋の軒瓦を数枚割ってしまった事がある。それで済んで御の字だとしてお父さんはちょっと英雄扱い。てへへ。それでもこの伐倒作業は、住居で無い小屋と私的通行止めが出来る農道の上方だったので、これでもまだ条件がマシな方だと思う。

 

 現在、北側傾斜地で気になっているのは20m弱と10m強と思われるスギ。さらに気になっているのはお隣さんの20m強のスギかヒノキ。だが、これは管轄外。せめて管轄内のそのスギ二本は、お父さんが動けるうちに対処しておくか検討中だが、家屋と電線をどう交わすかだ。薪棚を壊す前提なら容易。薪棚更新時に実行するかなぁ。

 

 そのスギ以上に気になるのはお父さんが死んだ後のシラカシだ。これを伝えておきたい。と言うのも、ナラ枯れによる被害は全国的なものだからだ。

 少し前に記載した処理作業も自然倒木でこのナラ枯れと思われるもの。すぐそこでナラ枯れは拡がっているのだ。ナラ、と言ってもナラ類だけでなくカシも被害にあうらしい。ナラ枯れとはキクイムシを媒介にした菌等により枯損する事。今まで問題にならなかったのは、キクイムシは大木を好む事によるらしい。人里にあるこれらの樹種は薪として使われていたので大木まで成長しにくく、ナラ枯れするのは山奥の大木。ナラ枯れにより山奥で大木が自然倒木しても被害が無いのだな。しかし、薪需要が無くなった生活圏でだと問題になる、と認識している。

 

 我が家においては、薪需要がある上にお父さんの目が黒い内は何ら問題無い。この両方が無くなった時は違う。現在は、ナラ枯れで薪の潜在的在庫が豊富で正直な所はウハウハ気分。だが、将来は他人事ではない問題になるかもしれない。

 もし、薪ストーブを引き続き使うのであればやはり問題は無いと思う。そのような生活をしているのであれば、きっとこのシラカシに気が行っていると思う。だが、薪ストーブを使わない事が確実であったり、お父さんが対処せずにあの世に行ってしまっていたら、早期に皆伐して欲しい。自己伐倒出来なければ本職に依頼してでもだ。それぐらいの遺産はあるだろう。あるはず。あるかな。いや、ないかな。カネは残さず処理を要する樹だけを残していたら済まんが自腹で。家屋に被害、ましてや人命に関わる事態になってからでは洒落にならないぞ。その後は、既にあるツバキ等の何か低木を植林するとかを行って欲しいと思う次第。