家屋伝承

我が子たちに伝えておきたい、伝統構法の我が家のこと。

単独施主施工へ邁進

 漆喰採用理由話は残念ながらまだもう一つある。施主施工向け建材と見たからであり、お父さんにとっては結構重要だ。

 「当社は施主施工を応援」とか謳って実の所、漆喰を施主に塗らせるだけの施工業者が複数ある事に触れた事がある。これは逆に言うと、ズブの素人でもそこそこ塗られるのが漆喰とも読める。実際は、素人なりに頑張って塗って付く荒を立派な模様だとしたりするようだが、それら含めて漆喰が人気っぽい理由の一つではなかろうか。それで良いならお父さんもそうしたい。だが、本来の法である薄塗り真っ平仕上げの難しそうな塗り方をしないとこの家にはそぐわない。それはまぁ良いとして。

 

 漆喰は素人でもそこそこ塗る事が出来そう。設計中にこう解釈した時、土壁中塗りを仕上げとする選択肢は消え失せる。遠因は施工予算問題だ。

 予算面から、素直だったお父さんはおじいちゃん建築士の助言により、新設壁の竹木舞と泥土による本式土壁施工を基本除外としていた。となると、土壁中塗り仕上げだと石膏ボードに泥土を塗る事になる。おいおい、引っ付くのかそれ。湿度があるこの家において梅雨期とかに剥落したりしないのか。未知なる事はそれだけではない。色だ。材調合は左官の三大肝の一つ。そう思う素人お父さんは、色の調合にも不安しか無い。果たして既存近似色を出せるのか。

 これらを解決するには土壁中塗りではなく漆喰にする。元々漆喰に唾吐く感情が微塵もない人間なので、その簡単そうな方に即座に流れる事にしたのだ。

 

 但しだ。どうしても土壁中塗り仕上げにしないといけない箇所が所々ある。元奥の間もそうだし、電線やエアコン配管の為に開けられていた既存穴の埋めもそうだし、大玄関の既存土壁埋め込みスイッチ撤去後の新規穴の埋めもそうだし。

 それらは全て下地は土壁。全くお手上げ感一杯なのが、奥玄関であり母屋一階トイレの新設壁だ。前述通りの石膏ボード壁。トイレ内壁は漆喰で逃げる。しかし、反対側は既存土壁中塗り仕上げに囲まれた奥玄関。如何ともし難い。

 という事で、この土壁中塗り仕上げに関しては左官職に依頼せざるを得ないとしていた。左官業界にお金を流すというのは二の次。いや、三四飛ばして、五の次ぐらいだ。

 

 それから月日が流れ、おじいちゃん建築士は相変わらず音沙汰無し。紹介左官職からも無し。お父さんも音沙汰せず。この間、徐々に左官職に来てもらう事が面倒になってくる。

 面倒な理由。それは工程管理。それは気を使う事と同義語。遠方の左官職に来てもらうとなると、一気に施工してもらう方が良い。その為の下準備施工を大いにしないといけない。それをすると、ほぼ母屋一階の第一工区である西半分が大体完成している状態。どうせやらないといけないのならやれば良い事。だが、無性に面倒臭い。

 この現場状況を左官職にぶつけるのも面倒。具体的な話が出来ていないで何年も空いている。これから山ほど詰める必要がある。その状態でこちらの都合を笑顔でお願いしてみるの一策だとしても、ダメで元々交渉は成否関わらずもう面倒過ぎるだ。

 

 そんな無茶な我儘はさすがに放出出来ないと内に抱え続けていたお父さん。その堰を切ったのは、石膏ボードに土壁施工をしている施主施工者複数名の方の事例を知った事。お父さんの知らない新建材を利用して施工されていた。

 となると残す問題は色調合。そこで実験。漆材として仕入れていた砥石を混ぜてみる。本施工の泥土は再利用している。下付でも仕上げでも既存の中塗土は同色に見える。なのに、再利用土と既存土は色が全く違う。追加の藁の灰汁が色を変えたのかと想像しているが、何にせよ実験。 

 この色実験は近似と思われる色になり成功。後日にお母さんがする事になった、繊維仕上げ下地である中塗土の剥離撤去による既存色材確保分もある。

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 自分では手に負えずに依頼すると、多分相手方は応じてくれそうに思う。しかし、これら施工可否と材調合と調達に目途が付いた事で、義務心を感じていた本職依頼方針が一気に失せていく。そうであっても、先方が気を使って音沙汰がある状態なら間違いなく依頼する。こちらも気を使って、礼には礼だ。それが無い今、依頼する面倒臭さよりも自分で施工する面倒臭さを採った。

 理性的大人理論だと、数十万円の代金にて施工材と施工品質と施工時間を本職から買えるだけでなく、それ以外にも何かを得られる可能性が考えられる。単なる商品購入ではなく、自分よりある事柄に長けた人との付き合いだから。なのに、なのに面倒臭さが先に立つ。素養はあったのでだろうが10代、20代の時には考えられない今の自分。あぁ、今以上に偏屈クソジジイになりそうな予感がする。