家屋伝承

我が子たちに伝えておきたい、伝統構法の我が家のこと。

改修工事ならでは問題

 さて、お母さんが砂埃まみれになって行っている作業は何かと言うと、土壁剥がし。土壁解体ではなく剥がし。中塗土だけを取り除いているのだ。お父さんも同様の作業経験がある事を踏まえて頼んだ。いつもの如く、単純だが時間を要する作業だからだ。しかし、想定を遥かに上回る施工期間を要した。人工数にすると恐らく6人工弱程だろうか。

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 単純数字で書いてもそこそこあるが、お母さんの施工時間は前述通り一日1人工では無いのでトンデモナイ数字である。また、休日出勤等もあったりするので確実に施工出来るわけでもない。結果、作業開始から凡そ3か月も要したのだ。施工時間確保だけが要因では無い。お父さんが行った箇所よりも剥がし難かったのだ。別の言い方をすると重塗り土の密着度が高かった。

 

 作業箇所は元奥の間と仏間であり、改修によりリビングと薪ストーブスペースになる所。元々の仕上げは繊維壁であり、竿縁天井撤去によりそれと天井懐部の荒壁との段差と見た目の差異が出る事になった。この段差も見た目差異も当然ながら無くす必要がある。

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 その為、まずは仕上げの繊維剥がし。これがまた簡単には行かない。恐らく当時の繊維壁は膠にて固められ、下地壁への接着もそれによるのではなかろうか。という事からお父さん実験を実施。水を掛けてみるとほんの少し剝がれやすくなったが、膠であるならお湯だろうとして改めると即効性があった。ただ、残念ながらお母さんはこの結果を失念して翌週に作業を行い、この作業だけでやたら時間を要した。流石はお母さん、お父さんの嘆きは現場に響き渡る。

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 さて、ここからは仕上材を何にするかによって変わる。この家屋の既存仕上げは、繊維以外だと漆喰と土壁中塗り。

 その中で、繊維壁への再施工は選択肢に無かった。また新たな建材との格闘を抱え込みたくなかった為が主因。となると、どうせ他箇所で行う事が決定している漆喰が有力候補だ。繊維壁も同じくだが漆喰仕上となると、下地である中塗りは無い所へ足すだけで済む。逆に言うと、土壁仕上げとするならば残存土壁を取り除かないといけない。既存と新規が一つの面に併存すると、その境に段差は必須、色違いも甚だしく有り得ないからだ。しかし、上塗材仕上げとするなら、既存中塗りはそのままでもどうせ隠れるからその差異は分からんだろう、という算段。

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 で、実際には既存中塗り土を削り剥がしているわけだ。と言うのは、壁の一面だけ問題は良いとしても、全体空間からするとおかしくなるからだ。

 この家の梁上小壁の基本は、元奥の間や縁側を除いて土壁中塗り仕上げである。薪ストーブ背後壁は視覚的区別が付くだろうからそこはまぁ良い。しかし、元奥の間を含めた複数の居室はリビングダイニングとして一体空間に生まれ変わる。なのに、小壁を見上げてみれば仕上げが違う。それはおかしい。

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 本改修工事においての肝の一つは、伝統的日本家屋における区分された複数居室を現代住文化に合わせた一体居室にする事で、使用面での永続性を得る事だ。もうちょっと言い方を変えると、住まい手が良いと思える住空間がある家屋は、自然に家屋を長く保たせようと思う事への方策。そうではない家屋は寿命が来る前であろうが見放される事への対策、とも言う。お父さんのそのような目論見が功を奏するかはさて置き、壁仕上げの違いは一体空間化を阻害するので容認出来ん。

 

 そうなると漆喰統一か土壁中塗り統一かの二択。後者を選んだのは、既存土壁中塗り仕上げに漆喰を塗布する事への手間と材を惜しんだ為。土壁中塗り統一に比べて施工面積が遥かに大きいのだ。ならば、土壁中塗りの方がまだマシじゃないか、と設計開始から課題としていて行き着いたようやくの解。いざ着手となった現在、これはこれで手間がかなり要しそうな予感しかしない。

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