家屋伝承

我が子たちに伝えておきたい、伝統構法の我が家のこと。

薪は有るけどストーブ有らず。

 キッチン天板が中途半端な状態となり、精根尽きた事から今までの禁欲的施工生活にストレスを感じ出す。引っ越してから間もなく始めた家屋の既存状態の確認から始まり、ずっと頭には本施工の事がある。家族で出掛ける事も碌に無い。赤いスポーツカーは埃が被りバッテリーは上がりかけ度々で、専ら乗っているのは白い軽トラ。猟銃も狩猟も試験を通っているものの全く使わず、そろそろ期限切れや更新が見えてきた。頭爆発。

 

 そんな鬱蒼とした心境で過ごす折、一通のメールを頂く。里山保全の会員の方からで、様子伺いと倒木処理作業に参加しないかというお誘い。かなり久しぶり加減は一年超。主たる活動地が我が家の目と鼻の先ながらかなりのご無沙汰。定期不定期関わらず活動は不参加を続けていた。

 

 ご無沙汰理由は、薪が貰えないような感じになっていたからだ。純粋なボランティアでは、全国だろうが活動地だろうが森林保全等の継続性は保てない。そう考えるお父さん。さらに、自分の足元である自宅が覚束ない状態でボランティアをするのは本末転倒、とも考えるお父さん。そうは言っても、ご高齢者しかいないので、人手が足りない等の場合は駆けつけるとお伝えしていた。

 しかし、お父さんの状況等を汲んでくれていたようで、お声掛けが長らく無かった。また、処理作業従事者は持って帰って良い、という。ストレス発散に並ぶ確固たる口実が出来たので参加を即答。

 我が家の改修設計施工に大きな影響を及ぼす薪ストーブでもある。その一面である薪調達について、本手記では余談になるがちょっと触れてみておこう。

 

 本ミッションは、自然倒木したコナラの処理作業。全国的に「ナラ枯れ」というものが多発しているそうだ。直接的な原因は虫。利用されなくなったナラ等が大木に巣食うのだ。大木にまでならない内に薪材等で利用されていた頃は、こういう問題はあまり無かったそうだ。その虫は大木を好むようだ。また、小径木に巣食って倒木しても被害は大きく無い、という事もあるかもしれない。

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 本ミッションにおいても、樹高は20m超、幹径は70cm超の大木。これを小枝、太枝、幹をチェンソーで切り分けていく。太枝は幹を切った「玉切り」は薪材としてその後割る。

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 このような硬い樹木の自然倒木処理、これは初めて行ったが非常に難儀。人工倒木と違って、このコナラの幹には変なテンションが掛かってしまっていたのだ。よって、チェンソーの刃が予想外に挟まってしまう。さらに、倒木後に人手や時間不足で月日が経ったせいか、尋常じゃなく硬い。計画的に意図して倒木した方がマシだったと思うが、それもマンパワー不足で出来ないという会の状態。

 

 玉切りをしたとしてもまた大変。これの搬出だ。ぬかるんだ上に傾斜である山道を一輪車というただただ人力のみで搬出していく。大き過ぎる玉はそれも出来ないので、その場で斧にて割って小さくする。小さくと言っても20kgとかのレベル。薪割り機が会に導入されたので、その場所まで行けば後はただただ単調作業。割って軽トラに積んで、だ。

 

 これら作業をお父さんだけで4日程従事。それでもまだ割り待ち状態の玉が山積みされている。本ミッションでの収穫のほとんどはお父さんが頂ける事になっている。計算上だと、この大木でシーズンの半分程。これが毎年二本分要る。計算上では。

 これを書いている現在、未だ薪ストーブが稼働していない状態。よって、薪が全く消費されていないので新たに薪保管場所を作らないといけない。未稼働なのに薪への労力と費用は結構なものになっている。今後の課題は薪作業の効率化。

 

 余談ついでに、古民家先輩は時間が無いとして薪を購入される方針だと言う。それを聞いて驚嘆を声に出す。すぐに思ったのは端的に言うと「見損なった」だからだ。

 時間が無いので金で解決。これは悪い事では何ら無い。某市内で高級住宅街と言われる自宅にて薪ストーブを入れて、薪は買うという開業医の方がおられる。お金がある人により、山にお金が落ちる事も森林保全に繋がる。

 しかしだ。古民家先輩の今までの言動からして、時間が無いから金に頼るとかは矛盾している。断じて許さん。まぁ、そういう言動を他者に向かってされてきたような方、という事なのだ。

 会社勤めの方であっても、休日を費やして薪調達されている方は実際に複数名おられる。お父さんにしても、一から倒したり玉切りしたり運搬機械も無い中でやっている。なのにそれは無いだろ、口先野郎かよ、という意味合いでの「見損なった」だ。

 

 だが、調達先確保が難しそうとの旨も。意味が分からん。この大阪と違って、日本有数の森林地帯である長野で何を宣うか。

 と思いきやそれが理由になるとの事。薪争奪戦が激しいそうなのだ。長野という地域だけに薪ストーブ普及率が高く、無償で手に入れる機会が却って無いとの事。なるほど、合点がいった。

 お父さんがもう一つ思ったのは、人が少ない林業大国だけに長野は建材販売目的の針葉樹植林地の方が多くなった。昔から人口が多くて薪材需要が高かった大阪の方が、現在は放置されたコナラ等が多い。こういう事ももしやあるのかもしれない。何にせよ、森林が少ない大阪の薪材調達が長野よりし易いようだ、というのは盲点だったわ。危ない危ない。