家屋伝承

我が子たちに伝えておきたい、伝統構法の我が家のこと。

施主設計、施主施工、施主調達

 お母さんは、会社では営業という最前線の部署にて働いている。現場に行って稼いでくる部門だな。軍隊でいう所、歩兵師団だな。機甲師団やら空挺部隊やらもあるが、歩兵だな。陸上自衛隊で言うなら普通科小銃小隊が相当するのかな。その隊員の方だとどうか分からないが、営業職で「稼いでやっている」という自負心が強い人は結構居そうに思う。勿論、自尊心溢れるあのお母さんはガッツリそう思っているフシがある。

 ただ、間違っているとは思わない。しかし、前線兵士だけで戦闘は出来ん。師団や部隊という大人数の組織で動くなら尚更、兵站はとても重要だ。これを疎かにした事で負けた事例は山ほどある。こんな事は大体の人が分かっている話なのに、それでも大昔から繰り返されてきた。

 

 施主施工においても先に書いた通り、資材調達には相応の労力を要する。

 ほとんどが現施工職では無いと思われる施主施工者。そのほとんどの方は施主施工が未経験ながら実行を決意されたはず。その前段階の検討過程では、予算と施工自体が可能か否かが最大の悩み所ではなかろうか。その後で、設計や計画のソフト面を考えるかもしれない。

 施工と設計。これは誰しもが考える所であり覚悟して行う所だと思うが、調達についてはどうなんだろう。作戦参謀も自分、指揮官も偵察も自分、そして前線兵士も自分。さらには兵站までも自分で行わないといけない。組織的な近代戦闘を行う事はとても困難。廻りの地面に落ちている石ころを拾って投げるような、原始的な闘い方をする施主施工者の方の気持ちは分からないでも無い。

 

 施主施工が二回目、というお父さんは稀な方かと思う。故に、この調達についても面倒で難儀だろうという事は承知。だが、経験者として活かせたのはそう思った事だけで、マンションと戸建ては諸々が違う。そもそも相手は、木と土で出来ている伝統構法家屋。なので、施工も調達も経験があまり活かせない。

 ただ、何回か書いたと思うが、一回目の頃よりもインターネットによる通信販売業者が数も種類も桁違いに増えた。それでも難しかったりお父さんには不可能な物があるが、平安時代並みの戦闘は出来るようになっているかもしれない。

 

 これらは購入調達に限っての事。自己調達、要は解体材を建材にするのはまた別の話。矢が無くなったらその場の竹から作って打ち込む、というような事だろうか。敵前でそんな事をやっていると死亡確定。もう、全く、憤懣遣る方無い。

 自分がそうするとした事で施工が進まないのに憤懣とはこれいかに。二人は当然そう思うだろうが、お父さん自身も我ながら訳が分からん。だが、時としてそうなるのだ。

 

 こんな感じで施主施工をしていると、板材というのは貴重品に思えてくる。

 角材についてはそれが特殊で無い寸法であるならば、手持ちの電動工具で作る事はさほど難しく無い。手間だけだ。しかし、板材はそうはいかない。板材が要る場合、その巾は丸鋸刃よりも大きいのが普通であり、そもそも素敵な治具が無いと精度が高い板は出来ない。ソーテーブルは板材を作るのに適した設備なのだが、刃寸が丸鋸よりも短い。

 

 この事もあっての自動カンナだが、これは無駄が多い。鋸代を無視した例えだが、10㎜厚の板から5㎜厚の板を二枚取る事は出来ない。5㎜分を木屑にしてようやく5㎜厚板が一枚出来るという機械だ。

 こういう事からも、床捨て板も立派な建材として見てしまうのだわ。