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家屋伝承

我が子たちに伝えておきたい、伝統構法の我が家のこと。

北風には気を付けろっ!

 この家に越して来てから幾年。意外に風が馬鹿に出来ないと思う事が度々。この地は大都会平野の終わり、山地の裾野になるかと思う。そしてたまたま山間となる。この山間に上手く入って来たのだろうか、時に風はちょっと恐怖心を感じる程に強い。二人にも分かるだろう。

 

 もしかして以前に触れた事があるかもしれないが、一番驚いたのが冬の北風。

 お父さんの幼き、また青年で平野内の町中に住んでいた頃、雪が降るのは数年に一回。そんな珍しい雪には大喜び。幼き時は少ない雪をかき集めたり、恋する青年期にはクリスマスイブに降ってくれないかと思ったもんだ。大人達は違って迷惑そう。お父さんには不思議で仕方が無かった。この地に越して来て、今の所は毎年一回かそれ以上かは雪が降っているかと思う。坂道途中のこの家にオッサンになって住んでみると、まぁ、迷惑。

 

 その中でもある日の降雪、と言うか吹雪にはたじろいた。北方に広がる田畑をたまたま見下ろしていた時、降雪と言えば良いのか分からないが、兎に角雪が横移動してこちらに迫って来ていた。雪の有無はハッキリと境があり、まるで白いイナゴの大群が襲来してきたかの様。初めて見る光景に驚いた十数秒後、その白いイナゴの大群が北側傾斜地を吹き上がって来た。下から昇って来た雪は、母屋の壁上部の梁どころか軒天にもぶつかる。立ち竦むお父さんの鼻の中にも直接入って来た。雪を喜ばない大人の気持ちだけでなく、吹雪ある豪雪地の人の気持ちもほんの少しだけ感じた気になる。

 

 この驚き具合に匹敵する事が平成28年の台風にて起こった。

 それまでも幾つかこの地で警報が出る台風を経験している。しかし、大都会平野の住人が凄かったという台風であっても大した事が無かった。山間だけに、山と山との上方を通っていただけ、山が風除けになっていたのかもしれない。ビル風のように角度に依るのだろうかなと思っている。今年の台風の一つにこの角度の塩梅が良かったのか、あの雪の日のように山間を駆け抜ける風がやって来た。

 流石に雪と違って雨粒が下から昇るような事は無かった。だが、軒先と雨跡位置から推測するに水平角度が20度、もしや10度台かと思う。正に横なぶりの雨風が殴りつけられる。体重有るお父さんも風で少しふらつき、後日に知るがナラ枯れ被害が出てとは言え近隣のナラが倒されたらしい。北側傾斜地の竹は皆伐済、ドングリ植えによるカシはまだ最樹高でも2mに届かない。防風林が無い状態での直撃。

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 こうなると、水平寸法1mを超える庇は功を成さない。雪のように下から巻き上がる事は無かったが、一時の雪はたかだか知れている。雨は土壁も木部も大いに濡らす。しかし、これにしたってたかだか知れている。

 これはこの台風に限った事ではない。土も壁もその後に乾燥すれば特段問題無いのは、この家自体が証明している。将来の懸念があるとすれば土蔵だ。漆喰ががっつり剥落した、風により。剥がれて来ていた箇所だけにだとは思うが。既存状態の土蔵北側は、元々かなり漆喰が剥落。下地の土はある程度流れてしまっている。傾きを直して継続使用するという事は、壁も全て直し、このぐらいの風にも耐えないといけない。荷が重い。

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 それよりも、目下の被害は屋内水浸し。キッチン壁にはまだ建具が入っていない。薄い解体化粧ベニヤとビニールシートで覆っていただけ。今までこれらで耐えて来られた。この台風ではこれら部分破壊。キッチン天板と仮設床は水浸し、木の葉やその他も堆積。

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 これはまだ分かる。そりゃそうだろう。しかし、家屋の中央部に近く直接外気が入って来ない薪ストーブ周辺も濡れている。そこで初めて思い出す。母屋二階の北側窓を開放していたのだ。慌てて二階に脚立で上がったお父さんは、風が止んでいたのにふらついた。二階、見事にびしょ濡れ。

 二階の庇も1mを越え、さらに角度についても窓鴨居と庇の高さはほぼ同じ。だけども雨が吹き込んでおり、ほぼ水平に入って来たのではなかろうか。この窓近くにあった加工済フローリング材は当然水が掛かる。二階床は一階天井と兼ねている状態でただの板一枚。この直下の炉台とキッチン天板に、あぁそうさ、ポチャンポチャンとお水が流れて行ったさ。

 平野部居住の二人のおばあちゃんに聞くと、こんな台風だったのに大した事が無かったとの事。平野部と悉く逆の現象が起きるこの地には、昔風に言うと神仏かもののけ、未来風に言うと時空の捻じれ、これらの何かがあるのだろうか。

 

 建具のサッシ化、北側掃き出し窓外部に新規屋根設置を計画している。そして、本命は主にシラカシからなる北側雑木林化。しかし、これら全てが相成っても北風が本気を出せば抗し難いと考えている。一方で追加案はまだ考えていない。ただ、二人に言っておくが、どうにしろ何にせよ北風には気を付けろっ。