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家屋伝承

我が子たちに伝えておきたい、伝統構法の我が家のこと。

馬鹿塗り砥ぎ漆

 ここからようやくキッチン天板漆の本塗り工程の内容。と言ってもただただ苦労話。

 

 まずは初回塗り。各所に施した刻苧と錆漆を固める為の塗りでもある。

 時は仲秋。この季語、もういい加減に実態と合せる気は当局には無いものかね。季語ってのは日本の四季文化を表すものかと思う。なのに、四季を表現出来ないような言葉は消えてしまうんじゃないか。そう危惧をする程、暑い。残暑と言うか悩む程で、勿論初秋でもない。涼しい母屋一階の午前9時頃であっても25℃、湿度は70%以上。

 

 硬化好環境下は、塗布作業には悪環境。そうは言っても後が支えている。よって強行。

 案の定、刷毛が進まない。生漆の粘度はお父さんの感覚だとハチミツっぽい。これを刷毛で伸ばす。しかし、刷毛目がくっきり付く程伸びない。これまたハチミツのように粘着している。塗り斑が無いように塗ろうとしてもかなり困難で時間を要する。これは下地工程にて予想は出来ていたので、すぐに中断。純テレで希釈し直す。ただ、それでも上手く行かない。拭き材の不織布が引っ付いてしまう。拭き跡も残る。すぐに固まった漆は黒くなる。

 刻苧や錆漆を固める目的だけは果たせただろう、と無理矢理良しとする。その後、終わったと思っていた水砥ぎ作業を復活。

 

 二回目。気温湿度共に若干低下。純テレによる希釈を重量比1:1にて行う。漆を薄めると不具合があるか、塗膜として無意味になるかと、これ以上の希釈はしない。

 しかし、初回とあまり変わらない。10分前かに塗った箇所でさえ、とても拭けるような状態ではない。またしても水砥ぎ。汚くなってしまった漆とお父さんの精神を削っていく一方で、生漆と純テレと拭き材と時間の浪費が続く。

 

 三回目。気温21℃、湿度60%台。台風や秋雨前線により湿度の高い日が嫌と言う程続いている。

 しかし、お父さんは止まられない。後が支えているからだけではない。もう何ヶ月もこの工程を行う事を目指して費やしてきた。作業の時間だけでなく、思考や精神もだ。やりたくてやりたくて仕方が無かった、では全く無く勢いを付けてやってきた。錆び付いてハンドルレバーをONにしていたようなもので、OFFに再度切り替えるのは容易では無い。下手に力づくで動かそうものならそのレバーが壊れ取れるのではないか。そんな心理状態。

 

 そして、またまたやり直し状態。

 これでは「摺漆、拭漆」ではなく「砥ぎ漆」だ。三度目の正直、さすがにここで断念。もういい。もうやらない。もう馬鹿らしい。いや、もう馬鹿だ。馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿、俺の馬鹿。摺漆は馬鹿塗りと称されたりもするらしい。馬鹿の一つ覚えみたいに同じ工程を繰り返すかららしい。お父さんの場合は、その言葉通りにただただ馬鹿塗り。自分を罵倒する事でようやく吹っ切って中断に至る。

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