家屋伝承

我が子たちに伝えておきたい、伝統構法の我が家のこと。

特一等床材へのお父さんの思惑

 母屋一階にて苦行の漆作業をしている頃、母屋二階にてやはり苦行の漆関連作業を並行。床漆の木地であるフローリング材加工だ。その苦行の前、まずは手始めに苦悩がやって来た。

 

 注文材は特一等。無等級の一つ上か。平成の昨今、この節だらけの特一等材は需要があるっぽい。中には、その節だらけ感が好きだという方もおられるかもしれないが、大半は安い事が理由だと思う。ハウスメーカーによっては、モデルハウスで目に付きやすい柱にも低級材を使う所がある。突っ込まれたら「だから当社は安い」と筋違いなアピールをされるのではなかろうか。

 

 そう言えば、探検さんの奥さんに尋ねられた事がある。節が多い事は問題なのかと。お父さんの認識だと見た目ぐらいの事だ。

 節が少ない材は人の手が入っている物が大抵だと思う。人の手が入っているという事は、良い値が付きやすいと見なされていた材だと思う。森林を手入れするような所有者や林業者は、無計画に何にでも手入れをされているわけではないはず。手を掛けて報われやすい良材候補とそうでない材を分けて計画されてはないだろうか。よって、高級材は節が少ない等の見た目だけでなく、目が詰まり、真っすぐで狂い少なく、建材としても優良かもしれない。

 だが、一般的居宅ではその差は大きな問題ではない。そもそも所詮はお父さんの憶測。故にそのように答えたわけだが、その憶測が正解だとしてもやはり床板には大きな影響は無い。床貼による剛性力が建物強度に関係するとしてもだ。この家だと見た目だけの問題だ。

 

 そう、無節や上小節ばかりのこの家はログハウスでは無い。節多き材は違和感が恐らく出るはず。以前にも書いたと思う。なのに特一等材を選択した理由。勿の論、言わずと知れた価格が故。と言っても見た目を度外視したわけではなく、違和感を回避したいのは変わらない。

 その為、塗装色は濃い目。油であろうが漆であろうが、これはハナから目論んでいる。それにより、節が目立ちにくいのではないかと楽観したのだ。

 

 さらには、節埋め処理によりそもそも節が目立ちにくくなるのではないか、とも楽観した。 

 節には種類がある。生節、死節、抜節だ。節とは枝となる箇所の所。生節は、この成長過程だった所であり身が詰まっている。死節は、成長過程の枝ではなく、周囲のしていた木身とは成長差が生じたのか隙間が空いていたりする。節部自体も欠けやらがあったりする。抜節はそのまま、節の一部や全部が抜けた箇所。

 

 この節埋め処理がされていない特一等床材を使用すると、所々に凹みがある床となるだろ。ご飯粒が入ってしまったらどうよ。虫の死骸が入ったらどうよ。という事で、巷の特一等材床は節埋めは穴や割れ目無く真っ平で当然。生節だって割れ目が入っている物は普通にある。何ならそれも埋め木処理されているのではないか。

 この処理を現場の大工さんが一つ一つ行うわけが無い。実際、製材所取引先の加工所が行うと聞いている。専門の業者が機械設備を使って有料にて行うわけだな。ならばだ、それは綺麗に抜かりなく処理をし節が激減、埋め木により見た目は節が思いの外少ない材に出来上がるのではないか。

 

 フローリング材加工前、製材のみの状態で現物確認をしないかと製材所から提案。お母さんと共に訪れた。その際、節が多い「これぞ特一等」と思わせるような材を見た。これにはたじろいたが、製材所社長に改めて節処理精度の確認を行い、寧ろ節が目立たなくなるかもと戯言風にこちらの期待を吐露してみた。さすればそれを否定されず、ちゃんとやってくれるとの言。インターネットでの建材業者でも、そのような文言が謳われている所が多い。

 よって、特一等材でそのまま突き進んできた。が、蓋を開けると大いに期待外れだった。