家屋伝承

我が子たちに伝えておきたい、伝統構法の我が家のこと。

妥協との折り合い

 硬化と作業を分ける妙案が思いつかないまま、三回目捨て塗りを実施。所要時間は3時間弱。漆使用量は110g。

 時間も漆量も減った。それほどに木地が順調に漆を吸っている、又はお父さんの技術が向上しているのか。そういう訳では無いと思う。と言うのも、漆に純テレ65gを混ぜたからだ。これにより漆の粘性低下となり、塗りが楽になったのではないか。それと、前回よりも薄塗りが可能となり、結果漆の量を減らせられたのではないか。

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 無垢材によるキッチン造作、尚且つ摩訶不思議で難易度が高そうな漆仕上げの計画。この段階では自信が必要。自信が無ければ絶対やっていない。しかし、いざ実施段階になると過信は不要。所詮、難易度が高い事を未経験で無知者がやっている事だ。過信どころか慎重と不安で一杯。それらに対して疲労と工期との葛藤の日々。

 妙案が無く、自信も無い。そんな中で師匠の教えを守る事を断念、挫折、妥協。無念の溶剤混ぜをする事にしたのだ。

 

 これによってなのか、三回目砥ぎは思いの外に早く終わる。三回目のヤスリ番手は400番。前回の360番とあまり変わらなさそうなものの、又、下地仕上げに近づきガッツリ削る段階ではないものの、前回並みに掛かるかと思っていた。しかし、結果は10時間程だった。

 それでもこの砥ぎ地獄の所為で、この前段階となる塗り作業をする気にはなかなかなれない。しかし、次の四回目で木地固めである下地塗りは基本的には終了だ。もう終わるのだ。後一回、後一回だけ。それで解放だ。やれ、俺。行け、俺。

 

 自分を奮い立たせて四回目捨て塗り実施。引き続きの支那産生漆50g、純テレ10g使用。時間は2時間強。

 この段階では裏表全面塗りは辞めておいた。裏面で見えない箇所、シンクや引き出し等が設置される所。ここらには塗布せず。木地固めとしてはもう十分ではないか、見えない箇所なのでもう良いだろう。そう、妥協した。四回目の実施を進める為、今まで敵対不寛容だった妥協心と折り合いを付けたのだ。

 

 師曰く、「最後の砥ぎでは漆を薄残りにすべし」。

 四回目砥ぎは本塗りの漆が載る。その為に今まで塗った漆を削り落とすように平らに砥いできた。ここまで来ると、前段階でも天板が木とは思えない鏡面さ。これをさらに砥ぐ。ヤスリは600番。片手で具合を見ながら利き手で砥いでいく。撫でるようにサァーっと。

 と言うのが理想だったが、そうは問屋が卸さない。三回目段階の砥ぎ粗を発見したり、四回目捨て塗りで厚い所があったり刷毛跡を付けてしまったり。鏡面な所はそもそもサァーっとは行かない。足し水が少ないと鏡面だけにヤスリがすぐに吸い付いてしまう。

 結局、悪戦苦闘はあまり変わらず。しかし、作業時間は8時間程で落ち着いた。砥ぎ地獄からの解放。何故かこの時の写真が無い。そういう発想にならなかったのだろう。何だか綺麗な起承転結とはならずに捨て塗り終了。

 

 師曰く、「エアサンダーにて砥ぎ作業が楽になるべし」。

 この作業の間、オービタルサンダーという工具も購入している。師匠の影響。しかし、師匠は空気圧で動く物。空気圧で動かす為には業務用レベルのコンプレッサーが必要。無理。そこでお父さんは電動品を購入したのだ。水作業に電動具。この禁忌な選択をする程に砥ぎ作業は辛かった。

 ちなみに、その機械は水養生をした上で使用。でも、思ったよりも砥げず。やり直しの二度手間を要す。