家屋伝承

我が子たちに伝えておきたい、伝統構法の我が家のこと。

気象庁には勝つ

 ある意味漆塗りの「転」となる、硬化と作業での求める条件違いの気付き。と言っても分けられない。さて、どうしたもんか。

 

 温度について。

 土壁を断熱材とする一部本職等の間違った認識。土壁は蓄熱材だ。これは以前に述べた事がある。その後、ある方が書かれていた記述に括目した。土壁は蓄熱材が故、外気温と内気温に時間差が出るという旨の話。そうだ、改めてそう言われてみれば確かにそういう事だ。

 

 この頃は真夏。昨年のこの頃、母屋二階にて作業をしていたが大変。暑さに音を上げてクーラーボックスを持ち込み、扇風機を購入。これに懲り、来年の夏は二階作業はしないようにしよう。そう思った。米国の航空宇宙局が平成28年となる今年の夏は異常に暑くなる、という旨を早々に発表していた。ならば尚更だ。

 実際は、床漆の為に二階に上がらないといけない。丁度夏場に。思い通りには行かないもんだ。そこで、二階作業は午前中にして午後からは一階作業と振り分けた。午前中であれば外気はぶっ倒れるぐらいの温度になっていても、屋内はマシ。直射日光が無いだけでは説明が付かないぐらいに。お蔭で昨年よりも却って暑さに苦しめられなかった。

 

 漆塗布作業時は温度が低く、それ以降に温度が上がる。この条件に合いそうなのは午前だ。そう考えたが上手く行かず。

 母屋一階は午後になっても室温はそこそこ保っている。上がっても30℃前後。しかし、日が落ちて外気温は下がっても室温はすぐには下がらない。やはり保っている。

 キッチンすぐ横の当時現場事務所にしていた北西角のスペース。隣地との関係からだろう、庇は短め。よって、西側土壁は直射日光を受けていると思われる。この壁の内側を計測すると、40℃ちょっとまで可能な計測器が計測不能になる。触ってみてもそんな感じ。北側は伝熱したのか36℃程だったりする。この数値は真夜中であり、現場が故に実質開放状態でのものだ。現場仕事後も暑さにやられながら机仕事の日々。

 こういう状態であり、丑三つ時近くでさえキッチン温度は30℃近くだったりする。お天道様が上がっている午前中の方がむしろ低いじゃないの。

 

 湿度について。

 漆実験でもあり漆色見本を作った際の話。時は作業の際にも防寒着を要していた一桁台の気温の頃。

 漆の硬化の為、湿度80%以上を目指そうと目論む。硬化場所は、お母さんの書斎兼家事室予定室であり、現在はお父さんの仕事部屋兼きょうこの勉強部屋であり、当時は衣裳部屋。ここは、建築現場化している母屋内で数少ない密閉可能空間。そして、凡そ三畳ぽっち。これなら高湿度に出来ると考えた。

 

 でやってみると、まぁ、上がらない。濡らしたトレーナーを干してみるが湿度計の針は微動だにせず。いや、加温後は寧ろ湿度低下。仕方が無い、と電気湯沸かし器を置いて強制加湿。さすがに見る間に湿度が上がるが「60%程」で頭打ち。電気湯沸かし器は沸騰すれば自動停止。見る間に湿度が下がる。再び湯沸かしモードにする。この繰り返し。この当時、母屋二階で左官真っ最中。20~30分すると一階に降りてスイッチを入れてまた左官に戻る、という何とも面倒臭い時間を過ごす。

 もうやってられない。考えてみる。衣裳部屋は石膏ボードとビニールクロスに覆われている。これが湿気を吸っているのか。と本気で考えた。いやいや、よく見ろよ。スーツやコートが裸状態で山ほど架けられているじゃないか。その後はプラ製衣裳ケース内にて行うも、意外や意外で高湿度は維持出来ず。最終は浴室。浴槽湯温を自動制御するマシーンだったので、放置していても湿度が長時間維持出来た。

 

 これが特別な事態とは違うっぽい。土壁に囲まれたキッチン空間やその他においても60%前後で頭打ちするのだ。土壁には60%のまさに「壁」がある。降雨前後だとこの壁を裕に超えるものの、それ以外の天候では気にして見ているがなかなか超えない。裕に越えているなぁ、と思っていた後には結構な割合で雨が降る。

 土壁木造家屋環境下が関係するのか否かは判然しないが、湿度60%という数字は飽和水蒸気量と思いっきり関係していそう。もう忘れちゃったなぁ。物理科目の中でもここらは苦手だったような記憶があるなぁ。何にせよ、数時間後のこの地域だけなら気象庁予報よりもお父さんの方が的中率は高い。

 

 何が言いたいか。扇風機と団扇以外に空調機器が使えない中、密閉では無い上に土壁である塗布作業場の温度を下げる事は不可能。さらには、湿度を上げる事も同じく。土壁空間において湿度80%にする事なんて雨を降らせる事が出来るレベル。

 知識も無ければマシーンも無い。そんなお父さんは限定予報なら気象庁には勝てても、お天道様には敵わない。